11/15 ティータイム通信

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のバイヤー李幸昂が、ラリック・ティータイム・歴史にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

私は芸術の秋を楽しんでおります。先日はとある博物館を訪れたのですが、紀元前からの陶磁器などが並ぶ中、数点ですがガラスでできたビーズやアクセサリーが所々で展示されており、それが逆に目を引きました。数千年前に作られたにも関わらずとても精緻な模様のビーズを見ると、遠い昔から現在まで続く工芸技術に驚きと感動を覚えます。

秋も深まり、日増しに寒さが身にしみるようになりました…

食欲の秋・芸術の秋・スポーツの秋、皆様はどのような“秋”をお過ごしでしょうか?

古くから続くガラスの工芸技法、中には一度途絶えた技術が復興・改良され現在に受け継がれたという数奇な技術もあります。 “パート・ド・ヴェール”と呼ばれるその技法はどの様な歴史をたどったのか…少し紐解いてみましょう。

“パート・ド・ヴェール”は、仏語”Pâte de verre”「ガラスの練り粉」という意味の言葉が由来で、その技法は紀元前16世紀にメソポタミアで発明されたと言われています。古代ローマ時代の紀元前1世紀に量産が可能な吹きガラスの技法が生み出されると、複雑な製作工程で大量生産には向かない“パート・ド・ヴェール”技法は断絶し、文献も残されていないために「幻の技法」と呼ばれていました。

19世紀末のアール・ヌーヴォー期にフランスの彫刻・陶芸家アンリ・クロが復興すると、ガレやドーム、ルネ・ラリックを始めとするアール・ヌーヴォー時代のガラス作家達がその技法を発展させます。しかし、作家達はそれぞれの技法を秘密にしたため、19世紀の技法の大半は再び失われるのです。1970年代に実験考古学のひとつとしてメソポタミア時代のパート・ド・ヴェール技法が復興され、現在はこれに改良が加えられた技法が伝えられています。

現在用いられている主な製造工程は、粘土やワックスを原型にして石膏型を作り、その中に砕いた色ガラスに糊を混ぜたものを詰めて焼成し、鋳型から取り出し、表面を磨いて仕上げる、というもの。多くの工程を経るため、とても手間がかかりますが、その分、細かな細工や多様な色付けも可能になるのです。

※ ご覧の時期によって価格等ご案内の情報が異なる場合がございます。最新の情報は各店舗にてご確認ください。

ABOUTこの記事をかいた人

「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。