この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当・松田が、イッタラ・テーブルコーディネート・立春にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
120分の作品を映画館で観ました。6回も泣きました。最初は涙がツーっと頬を伝わるように、次は肩を揺らし、最後は他にもお客さんがいるなかで咽び泣くように。
人生で1番泣いた映画があります。
その作品は、ジャズをテーマにした漫画『ブルージャイアント』のアニメ映画です。日本人の青年がひたすら“世界一のジャズプレイヤー”を目指す物語。心が震えるような何かの裏には、必ず作り手の孤独があるのだと脳裏に焼きつけられました。
そこから毎朝のように映画のサウンドトラックを流しています。その曲を聴くと、なんだか背筋がピシッと伸びる気分。2週間くらい前に、いつものように朝起きて、iphoneをスピーカーに接続して、好きな『N.E.W』という曲を流したときにふと思ったのです。
「自分で吹けるようになれば、もはや曲を長さなくとも、一生忘れないのではないか」。そう思い、最近サックス教室のレッスンに通い始めました。ジャンルはもちろんジャズ、サックスの種類は主人公が吹いているテナーサックス。
サックスは管楽器の中でも音が出やすいので、1回目から音が出て子どものように嬉しい気分になりました。リコーダーを吹く要領で、ドレミファソラシド。続いて、オクターブを変えて、ドシラソファミレド。2回目には練習曲であるハッピーバースデートゥーユーを吹けるようになりました。
どんどん音楽が日常に溶け込んでいく感覚が心地いい。幼少期からずっと食卓の時間はバラエティ番組を流していたのですが、最近はピアニストの和久井沙良さんのジャズミュージックを流すようになりました。
「え、僕ってこんなにオシャレな時間の過ごし方してましたっけ?」と心の中の関西人がツッコミを入れたくなりますが。それでも、音楽が、心の声が気にならないほど、そのオシャレな世界に私を馴染ませてくれるのです。
自分に酔っているというよりは、音楽が僕を酔わしてくれるから。脳と心がふわ〜っと柔らかく暖かくなるんです。31歳にして、ようやく食卓と音楽を考えるようになりました。音楽が食卓に奥行きを与えてくれる喜び。
例えば、時間別のラインナップを組んでみるなら。
忙しい朝、久しぶりにゆったり朝食をとれるなんて日は、ジョン・コルトレーンの『I’m Old Fashioned』を。BPMはゆったりで、ふくよかなサックスの音色と、シンプルで洗練されたピアノの音色が、包み込んでくれるよう。
朝のスタートダッシュのおかげか、午前中にやることをスッキリ終えたランチタイムにはJ-POP。食後の眠気を吹き飛ばしてくれるアップテンポでパワフルなaikoの『荒れた唇は恋を失くす』なんて良いですね。20年以上もずっと愛のことだけ言葉にしつづけている姿勢に畏怖を感じ、同じ書き手としてはこれまた背筋がしゃんとします。
ようやく仕事が終わり、家に帰り、ホッと一息。ひとまず頭を休めてリセットしたい気分なら、ディナーのおともにくるりの『琥珀色の街、上海蟹の朝』をどうぞ。ほんの少し肩でビートを刻みながら、感覚だけで音楽を楽しめる、そんな曲です。
せっかくなら、「この好きな音楽に、あの好きな器を合わせてみよう」と器と食卓と音楽のコラボレーションを妄想してみます。
青春の風景を鮮明に呼び起こしてくれる、チャットモンチーの『風吹けば恋』。爽やかで、軽やかに、制服を着た学生が走っている様子が思い浮かぶこの曲は、ビビッドでカラフルな印象。飾りなんていらない、あなたのそのままの色で良い。そんな思いを込めて、自分の大好きなイエローのアイテムから、イッタラ「ティーマ」のハニーの色味をセレクトしました。
マルミツポテリは、食事を楽しくすることを目的に、愛知県瀬戸市にある食器を企画・デザイン・販売をする会社。食事という時間を「食べる」だけではなく、もっと有意義なものにしたいと、かわいい器を提案しています。その中でも、多くの人に豊かな気持ちになってほしいと考え、立ち上げられたSTUDIO M’(スタジオ エム)ブランド。そんな想いとシンクロしたのが、スピッツが2021年にリリースした『大好物』。無理のない優しさで、温かい気持ちにしてくれるこの楽曲には、シンプルで自然を想起させるテクスチャーの器がいいなと思いセレクトしました。
「今日はこの曲を流してみようかな」、「それならあの器を合わせてみようかな」と、料理と器のほかに、器と音楽の組み合わせで食卓をコーディネートしてみるのも楽しいなと感じました。
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