ワインを美味しく飲もう

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のル・ノーブル編集部が、グラス・ワイングラス・歴史にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

ブドウは実を潰すことで発酵を始める果実であることからワインは紀元前の頃から呑まれてきた最も古いアルコール飲料と言われています。

日本にやってきたワイン

中世ヨーロッパの時代、ブドウ栽培や醸造を主導したのは僧院で、ワインはキリスト教の聖餐式においても重要な道具でありました。ルネサンスを経てたヨーロッパでは、娯楽としての飲酒が広まり、醸造や瓶の製造技術が向上すると共に、流通が拡大していきます。ヨーロッパでは普及したワインが、どの様なルーツで日本に伝わったのでしょう。

ポルトガル人によって日本にワインが渡ったのは室町時代。宣教師達が初めて日本に持ち込んだのが、ワインとの出会いだったとされています。ポルトガルではチンタと呼ばれるワインは、やはり宣教師達の手によって国内に広がり、織田信長や豊臣秀吉など名立たる大名達もワインにまつわるエピソードを残しています。1597年に伊達正宗らを招いた茶会では、石田光成がワインを振る舞ったそうです。

日本国内で醸造される様になったのは、明治維新を迎えてからの事です。この頃西洋のワインは、日本の食生活にはなじむ事が出来ず、普及するには至りませんでした。

甘味料の加工配合を幾度となく重ね、日本人の味覚にあった葡萄酒が1907年に誕生します。これがあの赤玉ポートワインでした。赤玉ポートワインは1922年、髪を結った女性のポスターを起用する事で話題となりたちまち世の中に広まります。この影響もあってか、当時は甘味の強いワインが主流となりました。

東京オリンピックの頃には、テーブルワインの消費に火が付きはじめ、大阪万博に始まる高度成長期には消費量が増加、以降、数々のワインブームを起こして現在に至ります。

グラス次第で味も変る

現在では、日常からワインを愉しむ方が増えてきています。ワインがもつ独特の味わい、深みのある香りのバリエーションをあますことなく味わうには、グラス選びが重要です。

私たちの五感の一つに、言わずと知れた「味覚」があります。味覚といえば、現在では五つが基本味とされています。

「甘味」「塩味」「苦味」「酸味」・・・・そして「うま味」です。

知ったかぶりの私などがワインを飲むと、「ちょっと渋いね~!」といったようなコメントを発したりするものですが、この「渋味」については、意外な事にも五基本味に含まれないとするのが一般的なようです。

私たちは口に物を含み、口の中の味覚によってその味を認識します。「甘味」「塩味」「苦味」「酸味」「うま味」これらの多くは、舌の表面に入口がある「味蕾(みらい)」等の味覚器官によって感じとりますが、先程例に挙げた「渋味」については、味覚とは違い触覚で感じとるもので、味覚神経が刺激されている訳ではありません。「渋味」の多くは舌ではなく、口の中全体の細胞で感知しています。

「グラス次第で味も変る!」というのはしっかりと根拠があって、グラスの形状が、口の中に流れ込む飲料の勢いや太さに影響して、口の中での広がり方を大きく左右する事になるからです。

例えば、渋味を強く感じるワイン。口に注ぎこまれるワインの線が細くなれば、歯茎に沿って舌の周囲に広がったり、顎や頬の内側にあまり触れる事なく舌の上を綺麗に滑らせ、喉まで運ぶ事ができます。舌には渋味を感じる味覚神経が少ないため、強烈な渋味に襲われることなく美味しく味わえるのです。

この飲み方を実践できるワイングラスは、緩やかなふくらみから口にかけてすぼまる、グラスを傾けた時に水平にアプローチできるグラスが良いと思います。ガラスの厚みも重要。うすい方がよいです。

また、口の広いグラスと狭いグラスでは、広いグラスは頭が前に、狭いグラスでは流し込む為に後ろに傾きがちです。この違いでも、ワインが流れ込むゾーンが変り、味に大きな変化をもたらします。

酸っぱく感じる・・渋味が強い・・フレーバーが足りない・・ワインのテイストに疑問を感じたら、そのワインが持つ本来の姿をあますことなく堪能できるワイングラスを選択してみてはいかがでしょうか?

※ ご覧の時期によって価格等ご案内の情報が異なる場合がございます。最新の情報は各店舗にてご確認ください。

ABOUTこの記事をかいた人

「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。