引出物のお話

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時の法人営業担当山田が、リチャードジノリ・新春・ギフトにまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

大事な人への贈り物が「引出物」と呼ばれたのは、平安時代貴族がお招きした客人の為に庭に馬を「引き出して」お土産を贈る慣わしからきています。時代が変わっても、もらったお客様が心から喜んで受け取ってもらえるのが引出物です。お品選びは大変ですが贈り主のこころ配りが喜ばれることは間違いありません。

新年明けて2回目の今回のコラムは、めでたいにちなんで「引き出物」についてのお話をしたいと思います。

かつて一般的な引出物は餅でした。婚礼と出産に関しては、古くから各地に餅を送る習慣があります。(紅白の餅が慶事によく贈られるのもその名残です)古来より米粒にはイネの霊魂が宿っていると信じられ、米のもつ神聖な力がこもった食べ物とみなされてきたからです。そして厄除けの食べ物としても祭礼や行事にも欠かすことがありません。

現在では、引出物は多種多様ですが、白磁の器は引き出物を代表する贈り物の一つです。なぜ、白の器がこれほどまでに重宝されるのかというと、その美しさが鶴の優美な姿を連想させ、白という色そのものが清潔感にあふれており、人生の門出にふさわしいとされるからなのです。

たとえばイタリアのリチャードジノリの「ベッキオホワイト」シリーズは東洋を意識したアイテムを多く生産しています。エレガントな美しさを兼ね備えつつ日常に使える親しみやすさが人気を呼び、引き出物にも好んで使われています。茄子の形をしたピクルスディッシュというのがあります。「なぜ茄子?」と思われるかもしれませんが、ちゃんとした理由があるようなのです。茄子など無数の実が成るものは、「無から有を生じる」ということから吉祥のしるしとされ、茄子型の菓子器も広く好まれているのです。

また、シェル(貝)の形は、平安時代に貴族の姫君たちの間で流行った「貝あわせ」という絵合わせカルタやイタリア絵画ボッティチェリ作の「春」などにも描かれているように、どことなく雅な雰囲気があります。

贈り主の感謝の心をあらわす引出物。「結婚式=引出物」は当たり前のようになっている昨今ですがいま一度、古(いにしえ)の慣わしを見つめ、感謝の気持ちを忘れないようにしたいものです。

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。