8月誕生月の星座、 占星術では獅子座の守護星は太陽で、惑…

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のショップスタッフ南村が、歴史・夏にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

8月誕生月の星座、 占星術では獅子座の守護星は太陽で、惑星を束ねる王の星と言われています。 獅子座の性格は、「正義感が強く包容力のあるリーダー」 「生まれながらに多くの人を指導する力が備わっている」 と言われていますね。

まさに百獣の王、 ライオン=王者 のイメージですが、 なぜ「王」とまで呼ばれるのか。

ライオンが持つイメージの変遷をたどってみましょう。

古代バビロニアの時代、占星術で獅子座に太陽が入る8月は、ナイル川が増水する月。 ナイルの恵みが土地を肥やし豊かな実りをもたらす季節です。  ライオンは実りをもたらす生命力、 命に満ちた真夏の季節のシンボルとしての役割を担います。古代文明の時代から、 ライオンは命と力のシンボルでした。

ライオンは獰猛で恐ろしい存在として恐れられる中で、  国を治める者たち(王家・貴族)は そのライオンを仕留めることで強さと威厳を証明しました。  古代文明には「ライオン狩り」のレリーフが多く残されています。

また彼らはライオンの勇猛さや威厳に憧れを抱き、 そのライオンの力を自らに宿らせることで、 さらに強固な力を示そうとします。  王座にその姿を刻み、 王の権威を守るようにその像をそば侍らせました。  中世以降はその姿を紋章に刻むようになり、 現在でもヨーロッパの多くの王国が様々なライオンの姿を国旗・国章・紋章に用いています。

権威の象徴として用いられるようになるに従い、 次第に実際の動物というよりも強い霊力を持った聖獣、守護獣として認められるようになりました。

こうしてライオンは権力や王の象徴であると同時に、 王権を守る・国を守るという守護的なイメージを持つようになったのです。   そこから 敵や邪悪なものに対する 「正しいもの・正義」というイメージが生まれていきます。

そのイメージは現在の物語の中でも使われています。

まず思い浮かぶのが「ライオンキング」まさに 王としてのライオンの物語。

そしてこの夏人気のハリーポッターでも、主人公の住む寮「グリフィンドール」のシンボルはライオンです。  イギリス児童文学の古典「ナルニア国物語」でも 邪に対峙する「アスラン」はライオンの姿を借りて現れます。 ライオンを正義へ導く守護神としてとらえていることがわかります。

こうして古代文明の時代から特別な存在とされたライオンですが、 シルクロードをわたり東洋に渡ったライオンはどのような役割を担ったのでしょうか?

西洋で強さや勇敢さの象徴とされたライオンですが、 シルクロードを経て中国に入ってきたライオン像は、中国古来の思想と融合して獅子(唐獅子)に姿を変えます。

中国人は龍や麒麟などの想像上の生き物(霊獣)を生み出すことが得意で、 ライオンも 角や翼のついた派手な獅子像に変化していきました。

もともと中国では麒麟が獣の王としての地位を持っていたため、獅子が伝わった時点で獣の王としての存在ではなく、 皇帝の守護神の一つとしての役割を担うことになります。  青龍・白虎・朱雀・玄武などと同じ役割ですね。

その獅子が日本へ伝わったのは遣唐使の時代。  はじめは調度品として厄除けの意味を持ち宮中に置かれており、 かの清少納言もその姿を「怖い」と言ったとか。 やがて獅子狛犬という日本での姿に移り変わります。

中国の獅子像が相似形の一対であるのに対し、 日本のものは獅子と狛犬という異なるものが組み合わされています。 これは「左近の桜・右近の橘」のように、左右非対称を好む日本人の気質から、獅子と釣り合うものとして狛犬が誕生したと思われています。

日本に持ち込まれた獅子は、口を開け巻き毛の獅子と 口を閉じ直毛で角のある狛犬として、 1対の獅子となりました。 仁王の 阿吽像のように、 神社や寺院の守護としての役割を持ち今の姿に続いているのです。

今は見られることも少なくなりましたが、 獅子舞のお獅子はご存知でしょうか?仏教では獅子の頭には霊力があり、 悪を食べてくれると信仰されました。 獅子舞の口をパクパクとあける仕草は人を食べるのではなく、 人に巣くう悪を食べる演技なのですね。

古代文明の時代からその強さで人間の畏敬の対象となったライオン。 ヨーロッパではその力を自らの力のシンボルとし、力強く国を守る姿が今に受け継がれています。

一方 東洋では神仏を守る守護神としての姿に変化し、  獅子舞のように民衆の信仰を受ける姿へと発展してきました。

イメージとしてのライオンは東洋的・西洋的な考え方の違いでその姿を変えていきました。

ある時は自分を勇気づけ鼓舞してくれる力を宿す存在として、 またある時は力強く守り励ましてくれる守護神として。  私たちはライオンの姿とその力強い咆哮に、 自分の持つ力のありかを確認していきましょう、8月の太陽を浴びながら。

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。