早いもので、新しい元号になって2か月が過ぎました

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当佐々木が、カガミクリスタル・ランプ・歴史にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

早いもので、新しい元号になって2か月が過ぎました。この頃は「令和」と目にするのも、自分で書くのも慣れてきた感があります。

令和最初の国賓として米国のトランプ大統領を迎えて5月27日に開催され、大きな注目を集めた宮中晩餐会は、新天皇の御代が到来したことを国民に深く印象付けた出来事だったと思います。

天皇・皇后両陛下が主宰される宮中晩餐会では、フランス料理が振舞われることが慣例となってきました。皇族のほか、内閣総理大臣、衆参両議長、最高裁判所長官、国務大臣、さらにはノーベル賞受賞者などが出席し、栃木県の御料牧場で生産された羊肉などの食材を使ったフルコースが供されます。

17世紀後半から18世紀のヨーロッパでは、フランスの文化的地位が飛躍的に高まったことで、ルイ14世以降のブルボン王朝の宮廷文化が他国のお手本となります。国や地域の異なる貴族同士はフランス語を共通語にしてコミュニケーションをとり、国際条約もそれまでのラテン語からフランス語で書かれるようになりました。

明治期の日本は国家体制を急速に変革するなかで、あらゆる面で欧米と対等であろうとしてさまざまに西洋化を試みますが、宮中晩餐会にはそうした歴史が深く刻みつけられているといえます。明治6年にイタリア皇帝の甥が訪日した際に開催された晩餐会以来、宮中正餐にはフランス料理が振舞われることになったのです。

とはいえ、ただ単に西洋をそのまま移入するのではなく、「和魂洋才」の精神が当初から根付いていたことも見逃せません。たとえば、用いられる食器もそうです。かつて有田にあった磁器メーカー「精磁会社」がセーヴル焼きなどを研究し試行錯誤して、晩餐会用の洋食器を作り出したのでした。

精磁会社はその後ほどなくして解散しましたが、有田にある各磁器メーカーが生産を引き継ぎ、そのなかにはいまでも宮中に納品している「深川製磁」もあります。宮中晩餐会で使われている洋食器は基本的なデザインを明治以来の変えておらず、歴史的にも文化的にもとても価値あることだといえます。

西洋の貴族の憧れの的となり、ヨーロッパでも磁器を生み出そうとする原動力となった磁器の町・有田ですが、それが今度は逆輸入する形でヨーロッパから学び影響を受けて誕生したのが明治期の西洋式磁器でした。東西交流の面白さ、ここに極まれりといったところでしょうか。

このほか、日本初のクリスタルガラス専門工場として発足した「カガミガラス」のガラス食器、明治13年創業の「宮本商行」のカトラリー・銀食器。こうした日本の高い技術力と芸術性が、歴代の国賓をもてなしてきたのです。

日本で最も格式の高い晩餐会である宮中晩餐会は、国民のあこがれであるといえるでしょう。トランプ大統領夫妻を招いたこのたびの晩餐会もたくさんの注目を集めましたが、それも格別のイベントとして認識されているからだといえます。

ですが、当然ですが多くの人々にとって、このイベントはまさに「高嶺の花」です。招かれてみたいがなかなかそうはいかない。

私も今回の宮中晩餐会に招待されませんでしたので、我が家のテレビの前で弊社ル・ノーブルの誇る逸品「ル・ヴァン プロフェッショナル」のシャンパングラスで厳かに乾杯に参加させていただき、ほんの少しだけ華やかな雰囲気を味わってしまいました。

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。