この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のバイヤー・米山が、バカラ・新春・和にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
個人的なことになりますが、茶道のお稽古を始めてかれこれ3年になります。茶の湯の世界での3年は、子供にたとえると生まれたての赤ん坊のようで、50年以上されている先生でも「まだまだ勉強中」とおっしゃるほどです。
お茶菓子のお話
お稽古の中での楽しみが、お茶菓子。習い始めたころに、お茶菓子には季節や趣向を交えた要素が取り入れられていることがわかり、感動したのを覚えています。
というわけで、今回のティータイムコラムは、「お茶菓子」のお話をしたいと思います。
お茶事では、お茶菓子というのは、お客様においしい一服を味わってもらうために出される、重要な引き立て役です。砂糖などの甘味ではなく、素材そのものを甘さを生かした、ほんのりとした甘味のあるお菓子がよいそうです。
もちろん、気温の変化などもとても重要で、寒ければ温かいものを、暑ければ涼しいものをと、心を配らなくてはならないのです。また、食べにくいものや、音のするものなどはふさわしくなく、濃茶と薄茶によって、お菓子の種類や、器すら変えられます。
たとえば、新年が明けて一番最初の行事「初釜」では、梅・若松・桜など新春を祝う、めでたいモチーフのお菓子が出されることもあるようです。4月には桜餅、5月には柏餅、この季節になると暑い日が続くので、目でも涼んでもらおうと、水菓子が出されることも増えます。
お茶菓子を盛り付ける器も重要です。職業柄、ガラスの器などを夏の季節に使ってもよいものなのかとたずねると、その昔、バカラの器を家元が使われていたという話を聞きました。
現代では、和食にも洋食器がよく使われるようになりましたが、まだ洋食器が日本に浸透していなかった時代、バカラのようなものが、日本の伝統文化である茶道で使われていた、というのがなんとも心憎い粋な演出だと感じました。
さて余談にはなりますが、お稽古を続けていていろいろなことを学びました。
まず、自分の日常生活がいかに緊張感のないものかに気づくことになります。立ち居振る舞い。現代人の私たちはコンピューターに向かうことが多く、姿勢の悪い人が増えています。お稽古を始めると、いかに姿勢が悪いかということがよくわかります。歩き・座り・お手前をする、というなんでもないような動作が、たまらなくきつく感じるのです。最近になってやっと、痺れを切らして立てなくなる、という回数が減ってきました。
そして客人へのおもてなし・気配りの心。もちろん、他人への心遣いというのは日常の生活で心がけているつもりですが、茶席に入ると、忘れかけている大切な心を思い出させてくれます。
茶道の世界では、掛け軸・生け花・茶道具・そしてお茶菓子にいたるまで全てのものに意味があります。それはひとえに「お客様に楽しんでいただきたい」という亭主のもてなしの心が映される鏡のようなものです。
茶道というと堅苦しいイメージがありますが、まったくそんなことはありません。自宅で楽しむティータイムも、いわば一つのお茶席だと思うのです。お客様のために、ちょっと素敵なティーカップや美味しいお菓子を用意する、それも茶道に通じる立派な「おもてなしの心」の一つです。
形式にとらわれることなく、お茶の時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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