11月の食卓 — 晩秋を楽しむ器

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当佐々木が、和・歴史・テーブルコーディネートにまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

真言宗開祖の弘法大師が入寂したのが3月21日。かつて、毎月21日に開催された大師をしのぶ法要に集った多くの人々を相手にして、境内でお茶をふるまう露店が登場したことが、「弘法さん」すなわち弘法市のはじまりのようです。

先月の21日は、とても長い歴史を誇る、京都・東寺の縁日でした。

いつも多くのひとで賑わっていて、とくに最近は外国の観光客の姿もよく目にするようになりました。庶民が何代にもわたってはぐくんできた弘法市は、いまや国際的な観光地としての魅力も発揮しています。

この市には、1200以上の露店が軒を連ね、ありとあらゆるものが売られています。反物や古裂、調度や照明や古本、いろいろな食べ物はもちろん、昭和のなつかしの玩具等々。ないものを探すのが難しいくらいの品ぞろえです。

そうしたなかでも、市の定番のひとつは、什器類ではないでしょうか。

時代物の味のある焼き物の数々は、普段使いにもふさわしいものも多く、ついつい足を止めて見入ってしまいます。ときには、かなりの掘り出しもあると聞きます。

五重塔の下で、世代を超え多くの人の手を渡ってきたであろう逸品を手に取るだけでも、歴史の重みを感じられます。購入して自宅に持ち帰えれば、過去から現在へとつながる確固とした文化をさらに深く味わうことができます。

いにしえの陶工の卓越した技術や感性を、臨場感をもって体感できることが、古都の骨董市の風情といえるかもしれません。

最近、個人的に焼き物の作り手たちの息吹を全身で感じることができるスポットにいきたい、という欲求が年とともに強くなっています。

骨董市はそうした場所のひとつですが、もちろん実際に焼き物をつくっている工房を見学し、そこで制作の様子を生でみて、作品を実際に手に取ってみることは、得難い経験です。

またいっぽうで、いまはもう使われていない、歴史的な窯を訪ねてみるのもいいものです。

たとえば、清水寺のほどちかく五条坂に、明治生まれの陶芸家で民芸運動においても活躍した河井寛次郎の旧居兼工房があります。

現在は、河井寛次郎記念館として、作品の展示とともに、本人が居住しながら作品を制作していた当時そのままの姿を保存しています。館内には、大きな登り窯もあり、さらには寛次郎の美意識がいかんなく発揮された、居宅の調度やしつらえを肌で感じることができます。

清水寺周辺は、伝統ある焼き物の地だけに、河井寛次郎記念会のほかにも、重要な窯跡などの歴史的な文化遺産やそれに関連したさまざまな施設があります。

普段はなかなかこれらに接する機会がないかもしれませんが、ちょうど本日11月1日(金)から11日(月)まで、「第8回京都やきものWeek わん 碗ONE」が開催されます。

この催しは、五条坂を中心に各所で京都の焼き物をひろくアピールするイベントです。河井寛次郎記念館のほか、京都最大の登り窯である旧藤平陶芸、京都国立博物館や清水寺、さらにはさまざまなギャラリーなどが会場となります。

さらに今回は、放映中のNHK連続テレビ小説「スカーレット」のモデルとなった陶芸家神山清子の作品も展示されるとのことです。

この機会に、秋の京都の風情のなかで焼き物の奥深き世界を堪能するのはいかがでしょうか。

※ ご覧の時期によって価格等ご案内の情報が異なる場合がございます。最新の情報は各店舗にてご確認ください。

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。