インドカレー

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のEC運営スタッフ長田が、にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

子供に好きな料理は?と訪ねると、今も昔も変わらずに上位にランクインされる料理「カレー」。子供の頃から親しんできたあの味は、もちろん今も現役で、自分で料理をするようになってからは、色々な「隠し味」を入れてみては、反応を伺って楽しんでいます。

昨今の健康ブームで、色々な食材や料理が注目される中、あっさりしていてヘルシー、それでいて日本人の口に合うという事で、カレーの本場、南インドの「菜食カレー」という、豆をふんだん使ったカレー が注目されてきています。今回は、この「インドのカレー」にスポットを当て、少しご紹介して行きたいと思います。

[まず、そもそもカレーとは?]私たちが知っているカレーを大まかに分類すれば、2種類のカレーがあると考えられます。一つは、インドで味わったカレーを再現しようと、イギリス人が誕生させた「カレー粉」の世界。19世紀の始め、インドのスパイスに慣れていない彼らが、簡単にカレーを作れるようにと考案したもので、このスタイルは今日の日本のカレーにも大きな影響を与えています。

そしてもう一つは、カレーの元祖とも言える「スパイス」の世界。インドを中心に、様々なスパイスをブレンドして作られる煮込料理の事を、後に総称して「カレー」と呼んだと言われています。インドの地で、人類が稲作を始めた3~4000年前には、スパイスを使った「煮込み料理の原型」があったのではないか、と推測されます。昔よりスパイスは、人類の食文化に欠かせない存在だったのです。

[スパイスと漢方の深い関係]インドカレーを語る上で、欠かすことの出来ない「スパイス」。世界には何百種とも言われるスパイスが存在し、中でも特にインド産のスパイスは、古来宝石のように扱われ、奪い合いが繰り広げられた事もある程に重宝がられてきたものです。

よく、「カレーは身体に良い」と耳にします。カレーに使われるスパイスについて調べているうちに、シナモンは「桂皮」、ターメリックは「鬱金(ウコン)」、クミンは「馬芹」という具合に、スパイスにはそれぞれの「漢字名」があるという事に気が付きます。こうして漢字名に置き換えてみると、どこか見覚えのある名前ばかり。実際に、漢方胃腸薬のパッケージを眺めてみると、これらの名前が次々に飛び込んでくるはずです。「不味いカレーに胃薬を入れたら、なんとか食べられるようになった」という逸話、試してみる価値があるのかもしれませんね。

ちなみにインドでは、「アーユルヴェーダ」といって、自然からの伝統医学が発達してきました。家庭においても「スパイスは薬」と考えられる事も少なくなく、地方によっては体調や天候に合わせて、スパイスをブレンドしているそうです。

[ちょと休憩]インドでは「牛は聖なる動物」とされているのは御存知の方も多いと思います。そんな国ではまさか「ビーフカレー」なんてあるはずがない!と思いますが、立派に存在します。ヒンドゥー教徒は、牛を聖なる動物としていますが、インドにはキリスト教徒もいればイスラム教徒も居ますので、彼らはビーフカレーを口にするのです。

[一口にインドカレーと言っても??]博多ラーメン、味噌ラーメン、醤油ラーメン。日本のラーメンをとってもさまざまな種類があるように、インドも地方によって様々なご当地カレーが存在します。インドカレーは多種多様ですが、大まかに南北で特徴を分けることが出来ます。「主食の違い」「宗教」「ベジタリアン」など、様々な背景が絡んでいるようです。

[冬は寒いんです!北インド]インドとはいえ、北にヒマラヤ山脈をえるこの地方は、一年を通しての気温差が激しいのが特徴。この地域は主食が小麦で、日本でもお馴染みのチャパティやナンなどの小麦加工品が、三度の食卓に必ず登場します。なかでも「ニューデリー」などは、イスラム料理の影響が強く、チキンやマトンなどの肉類が目に付きます。カレーもこれらの肉類やタマネギなどをベースにして煮込み、ナッツやヨーグルトでとろみを出す。油を多めに使用し、水分の少ない「こってり」とした印象のカレーが多いのが特徴です。また、カレーではないですが、タンドリーチキンなどに代表される、俗に言うインド料理は、この北インドの料理だったりします。

[話題のヘルシーカレー!南インド]南インドでは北と変わり、小麦ではなく米が主食となります。海沿いの「チェンナイ」などでは、野菜と豆をたっぷり使った、素材を活かしたあっさり風味のカレーが味わえます。ベジタリアンの多い南インドでは、割と日本人の口に合う物が多く、北インドのカレーと違い油も控えめであるため、最近注目が注がれています。小麦が中心の北部では、まろやかさを出す為にヨーグルトを用いますが、米が主食のこの地帯では、ココナッツミルクを用います。総じてこの地域のカレーは、水分が多く、さらっとしているものが多いのが特徴です。

[他の地域は?]一方、同じ南インドでも、デカン高原にあるイスラム宮廷の流れを汲む古都「ハイデラバード」周辺では、「カレーはカレー」というダジャレの通りの激辛カレーに挑戦可能です!あっさりまとめられている南インドのカレーだけに、唐辛子のスパイスの辛さがストレートに効いてくるので、ダントツに辛いです。勇敢なチャレンジャーの方はトライしてみてはいかがでしょうか。

[隠し味!?ガラムマサラ]あまりカレーに興味の無い方も、「ガラムマサラ」をという言葉は耳にした事があるかと思います。ガラムマサラとは、ミックス・スパイス・パウダーの代表格で、特にインド料理には欠かすことのできないものです。

よく勘違いされるのが、「ガラムマサラ」=「辛くなる調味料」と思われがちである事。ガラムマサラの「garam」とは、ヒンドゥー語で「熱い」という意味であって、決して「辛い」という意味はありません。ガラムマサラは「辛味」を加えるものではなく、「風味」を持たせるものというのが、本来の役割なのです。このガラムマサラを上手く活用する事で、簡単にインドカレーに一歩近づくことができます。

[ガラムマサラをつくる]スパイスは沢山あってとっつきにくい・・と思わなくても大丈夫!たった三種類だけ抑えておけば、優秀な「ガラム・マサラ」を作る事ができます。最近の調味料では粉末状の物や、あらかじめ調合された物も多く見かけますが、ここは少しこだわって、素材から仕込みをしてみませんか?その方が香りも、香りの持続性も良い結果が得られるからです。

用意する素材は「クローブ」「カルダモン」「シナモンスティック」。「カルダモン」の替わりに「ナツメグ」や「メース」を組み合わせても良いでしょう。それぞれ同量をフライパンで5分程度、弱火で空煎りし、焦がさないように水分を飛ばします。軽く粗熱をとってから、ミキサー等で粉末状にすれば完成。たったこれだけです。

ガラムマサラは出来立てを使うのがベストですが、密閉容器で保存しておけば数ヶ月は保存が効きます。但し、次第に風味が損なわれるので、やはり早めに使い切ることがポイントでしょうか。ガラムマサラによく使われるスパイスには、上記の3種類以外にも「ナツメグ」や「ベイリーフ」など主に10数種類あり、これらを加えたり、配合を少し変えてみたり、自分好みのガラムマサラが完成します。インドでは、各家庭にオリジナルのガラムマサラがあり、その味が「家庭の味」となっています。

スパイスは基本を覚えると、カレーだけでは無く色々な料理に応用が利きます。献立に困ったら、是非スパイスの世界に足を踏み入れてみて下さい。きっと料理の幅も増えるはず!まずは今年の夏、カレーに挑戦してみませんか??

※ ご覧の時期によって価格等ご案内の情報が異なる場合がございます。最新の情報は各店舗にてご確認ください。

ABOUTこの記事をかいた人

「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。