世界遺産の概念の誕生

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のバックオフィス楠橋が、歴史・夏にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

最近、新聞のテレビ欄を見ていると、世界遺産を取り上げている番組が増えたなあと感じます。また、書店でも世界遺産を写真中心に解説したものや、世界遺産をコースに含む旅行ガイドをよく見かけます。

世界遺産ブームなのでしょうか。

そこで、今回は世界遺産を学び始めようと考えている私にお付き合い下さい。

1960年にエジプト政府は、ナイル川上流にアスワン・ハイ・ダムの建設を着工しました。このダムが完成すると、ヌビア遺跡がダム湖に水没することが懸念されます。これを受けて、ユネスコは、世界に向けてヌビア遺跡救済キャンペーンを開始し、世界60ヶ国の援助により、ヌビア遺跡内のアブ・シンベル神殿の移築が行われました。

これをきっかけとして、開発から歴史的価値のある遺跡、建築物、自然等を国際的な組織運営で守ろうという機運が生まれました。つまり、ヌビアの遺跡群が一国家の文化財という認識を超え、「人類共通の遺産(our common heritage)」という概念が生まれ、これが「世界遺産」という概念に発展したのです。

世界遺産条約は、1972年秋にユネスコの第17回総会で採択された国際条約で、正式には「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」といいます。

地球が創り出したかけがえのない自然や人類が創造した貴重な文化財などを、自然遺産、文化遺産として登録・保護し、次世代に伝えていくとともに、私達の身近にある自然や文化財を大切にしていくことを目的とする国際条約です。

この条約の締約国は185ヶ国(2009年1月末現在)であり、日本も1992年に125番目の締約国になっています。これは、先進国では最も遅い加盟です。

地球の品位

当時日本ユネスコ協会連盟副会長だった桑原武夫氏が、1980年のインドネシアのボロブドゥ-ル遺跡修復完成式典での印象を新聞に掲載していますが、そこで「世界遺産とは、地球の品位を守るもの」という名言を残されています。

「世界遺産」を国際協力で保護していくことが「地球の品位」を保つために必要不可欠であり、私達人類に課せられた課題でもあります。

世界遺産を学ぶ必要性

私達は世界遺産を通して、お互いの伝統や文化、価値観を理解し、認め合うことができます。祖先が遺してくれたこの財産を守り、未来の子供達に引き継いでいかなくてはなりません。

世界遺産ブームが高まってきた今こそ、私達は世界遺産について学ぶ必要があるでしょう。

昨今は検定ブームですが、世界遺産についても検定があります。テキストを読んでいると、建築物・自然・動物等の写真が多く、歴史的な背景や自然環境も記述されており、まさに自分がその場所を旅しているような錯覚さえ覚えます。

世界遺産878件(2009年1月末現在)の内、多くをテキストで取り上げており、1件づつ丹念に読んでいくと、1冊の本で世界旅行(紙上の旅)ができるのです。今後も世界遺産を学び続け、自分の軸となる知識・教養を身につけていき、実際に1件でも多くの国や地方を訪れ、私の「世界遺産至上の旅」にしたいと願っております。(2009年8月 久智庵にて)

(参考文献)NPO法人 世界遺産アカデミー 編著『世界遺産検定公式基礎ガイド2009年版』他

※ ご覧の時期によって価格等ご案内の情報が異なる場合がございます。最新の情報は各店舗にてご確認ください。

ABOUTこの記事をかいた人

「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。