この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のバイヤー・米山が、ロイヤルコペンハーゲン・歴史・梅雨にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
6月。曇りや雨の日が多く、気分が上らないことも多い季節です。湿度が高い日は、不快指数100%と言っても過言ではありませんが、しっとり濡れた地面、青々とした草花、目を凝らしてみると自然の中でたくさんの生き物や植物が静かにその命を育んでいることを知り、うれしくなります。
我が家の庭には柑橘系、と思われる木が2本あるのですが、毎年どちらにもアゲハチョウがどこからともなくやってきて、タマゴを産み付けていきます。幼虫の成長の過程を見届けることが、毎年この時期の日課になっているのですが大きな立派なアオムシになった途端に忽然と姿を消してしまいます。どこに行ってしまうのか・・・
話がそれてしまいました。本日のコラムの本題に戻ります。
テーブルウェアの世界では文様、人物、生物、植物など様々な題材が取り入れられます。今回は、この季節のモチーフについて少し触れてみたいと思います。
6月と聞いて連想する生き物や植物はなんでしょう。きっと大勢の方が連想されるのは、紫陽花やカタツムリでは?
紫陽花ももちろん、描かれています。実はこの紫陽花、日本を中心とするアジアにのみ生息していた植物でした。
紫陽花の原種は日本に自生するガクアジサイと呼ばれるもので、ヨーロッパには中国からシルクロードを経て伝わったとされています。
紫陽花の歴史は古く万葉集にも謳われていますが、陶磁器に登場しはじめるのは、意外に遅い17世紀末頃からでした。
1688年頃からは有田の高級磁器にも描かれるようになり、その一部がヨーロッパへと輸出されたことで、紫陽花がヨーロッパ陶磁器でも描かれるようになったのでは、とつながりゆく歴史のロマンに想いを馳せてしまったり・・・
もう一つ6月の代表的な植物といえば、菖蒲。花菖蒲・あやめ・杜若(かきつばた)はすべてアヤメ科の花でよく似ており、実は私も違いを理解していなかったのですが、先日植物園に行って、お恥ずかしながらいまさら初めて違いがわかりました。
菖蒲は、日本文化では着物や陶磁器などに文様としても取り入れられていますが、陶磁器に登場するようになったのは、江戸初期からと考えられており、そのほとんどが庭などに咲いていた花菖蒲であったと考えられています。
初夏にかけて花を咲かせることから、肥前磁器では1640年代ごろからその姿を見るようになり、17世紀後半には、好んで多く描かれるようになりました。
そして6月の生き物代表、カタツムリくん。近年都会ではめっきり姿を見ることが少なくなりましたが、陶磁器に登場します。たとえば、アールヌーヴォーの時代。当時ヨーロッパでブームだった日本美術の影響を受け、ヨーロッパの伝統様式とはまた異なった新しいデザインが誕生しました。その時期のモチーフには、日本の影響を大きく受けただろうと思われるものが作られています。
デンマークのロイヤルコペンハーゲンでは、1887年にカタツムリをモチーフにしたベースや杜若などが登場していますし、エミール・ガレのようなガラス工芸家も紫陽花などの植物を取り入れた作品を輩出していました。
モチーフを辿ることで、背景や歴史を知ることができる、と考えると、単なる食器としてだけではなく、また違った楽しみ方も見つかり、世界がぐんと広がる気がしませんか?
テーブルウェアは私たちの生活の一番身近にある芸術品の一つです。しかも、絵画のように飾っておくだけでなく実際に使うことができ、楽しむことができます。お時間があるときに、いま手元にお持ちの食器の柄を見てみてください。もしかすると、そこからまた違った世界に出会えるかもしれません。
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