この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のバイヤー・米山が、ウェッジウッド・エインズレイ・ベースにまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
今回のティータイムは、イギリスのウェッジウッドの工場訪問記をご紹介したいと思います。
1月。冬の寒い朝。日はまだ昇ることなく7時半でも暗さが残ります。通勤客で溢れるロンドン、ユーストン駅から約1時間半かけて陶磁器の街ストーク・オン・トレントへと向かいました。
ストーク・オン・トレントは言わずと知れた、陶磁器の街。17世紀頃にはたくさんの窯元が存在し、ウェッジウッド・エインズレイなど多くの優れたメーカーを生み出した街です。今でも街並みの中には、かつて盛んに煙を出していたであろう煙突や工場の名残が点在し、陶磁器の街として大きく繁栄していた片鱗をうかがわせます。時代の流れにより小さな窯元は閉鎖され、ずいぶんと寂しい風景となってしまいました。使われていない老朽化の進んだ建物や壊れかけの看板を見るとなんだか切ない思いがします。陶磁器の産業で生計を立てていた人たちは一体どこにいってしまったのでしょうか。
現在ではウェッジウッドやロイヤル・ドルトンなどの大きなメーカーが残るのみとなってしまいました。今でも、工場の周りには多くの労働者が暮らしており、土地に流れる時間や空気に陶磁器産業によって支えられてきた人々の暮らしを感じました。
駅から車で約10分。まるで時間が止まったような、穏やかな風景。英国独特の緑が広がります。丘陵地帯が広がり、そこを下るとぽっかりと出現するのがウェッジウッド・ロイヤルドルトンの工場です。
エントランス正面には、ジョサイア・ウェッジウッドの銅像が建ち訪問者を迎えてくれます。この銅像は二体目で、一体目の銅像はストーク・オン・トレント駅正面に立ち、この街を訪れる人々を見つめています。
ビジターセンターに入ると、右手に受付があり女性スタッフが笑顔で迎えてくれます。そして自動ドアをくぐると、ウェッジウッドの歴史を物語るミュージアムが広がります。そこには設立されてから作られてきた作品の数々が並び見るものを魅了します。
ミュージアムを抜けると、今度は製造場へ。
印象的だったのはジャスパーの作業工程。ジャスパーなどは今でも手作業で文様を施していきます。小さなピースに分かれたものを水にぬらしながら丁寧に1枚1枚貼り付ける作業は見ているだけで気が遠くなりそうです。ウェッジウッドの人気シリーズの多くはオートメーション化が進み、製造がずいぶんと楽になったといいます。しかし、ジャスパーは今も昔も変わることないやり方で作られています。他のシリーズと比べると、お値段は若干高く感じられるかもしれませんが、それにはやはり理由があり、それだけの価値があるシリーズなのです、とウェッジウッドで働くスタッフ。胸をはって、自分たちの作品への熱い想いを語ってくれたのが印象的でした。
製造場を抜けると、今度は体験スペースへ。ここでは数人の熟練した職人がそれぞれの得意分野のアイテムを製作しているところを目にすることができます。ベース製作のデモンストレーションをされていたマイケル氏。このビジターセンターの職人の中でも重鎮です。穏やかでチャーミング、そんな言葉がぴったりな氏が、笑顔で迎えてくださいました。静かに轆轤(ろくろ)をまわしながら、紡ぎだされるベースは滑らかでよどみがなく「心が研ぎ澄まされる」ような感覚を覚えました。
一通り回り終わり、ビジターセンターの横にあるBistroで休憩を取ることに。入ると、一面にジャスパーコンランシノワズリがディスプレイされており白とグリーンの美しさが、柔らかいウッドカラーを基調としたスペースにより華やかさを与えているようでした。食器もすべてナイト&デイで統一。ウェッジウッドの工場でウェッジウッドの食器を使ってコーヒーをいただくとなんだか食器が輝いて見え、違った楽しみでいただくことができました。
毎日使う器。器一つで私たちの感性は刺激され、生活を豊かにしてくれます。高級な器を使うことがいいわけではなく、いい器を使うことが大切です。いい器は、私たちの心を豊かにしてくれます。人の手から生まれた器はその手のぬくもりを、使う人にも伝えます。たかが器、されど器。いつも私たちのそばにあるからこそ、良いモノを使いたい、そんなことを思わされるウェッジウッドへの旅でした。
ところで余談になりますが、イギリスには残念ながらおいしい!と思えるお料理が少なく、食べるものにずいぶんと苦労しました。苦肉の策で頼るべきは、世界万国共通のマクドナルド!しかし、1月時点でのポンドは240円。マクドナルドのハンバーガーセットが5ポンドなので1000円以上するという驚くべき円安で、何も食べられませんでした。
今回発見したのが、売店で売られているホットパイというパイ生地の中にミートソースが入ったものが味もよく、お値段もリーズナブルでした。(スーパーマーケットに売られているお寿司は残念ながら、お寿司と呼ぶにはあまりにも悲惨なものでした・・・)皆さんはイギリスに行かれると何を食べられますか?ぜひ教えていただきたい・・・
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