ドラセナの花

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当西脇が、歴史・ひな祭りにまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

結婚の記念にと両親が贈ってくれたもので、世話をし始めてかれこれ4年が経ちます。世話をすると言っても大したことはしておらず、気が付いた時に水をやったり、余分な葉を落としたり、天気の良い週末には窓辺に移して日光浴をさせてあげたり、といった程度です。

自宅のドラセナの木が花をつけました。

ひとえにドラセナと言っても、背の高くなる品種から鉢植えに向く小さな品種まで様々なものが存在していますが、観葉植物として日本で主に親しまれているのは、ドラセナ フラグランス マッサンゲアナという品種のようです。この名称ではピンと来ないかもしれませんが、いわゆる「幸福の木」という名前で売られているもので、この名前なら多くの方がご存知なのではないでしょうか。

ではなぜこの植物が「幸福の木」と呼ばれるのでしょうか。

諸説あるようですが、ひとつは、ハワイのドラセナ「コルディリネ・テルミナリス・ティー」から由来してきていると言われています。このドラセナは別名ハワイアン・グッドラック・プラントと呼ばれており、ハワイでは古来から伝わる儀式の際やフラダンスの腰みのなどに利用されているものです。縁起のよい植物ということから、家の前にドラセナを置いておくと良いことがあると言い伝えられており、この「幸福の木」という名前がついたそうです。本来であればハワイのこの品種が日本に入ってきて、これを幸福の木と呼ぶのが正しいのでしょうが、日本では別の属で近い親戚に当たるドラセナ属のマッサンゲアナの事を幸福の木と呼んでいます。

ところでこのドラセナの花、鮮やかな色を付けるでもなく、決して優雅な形をしているわけでもありません。ただ不思議なことに、夜に花を開かせ、朝になると閉じるという性質があります。花が開いているときにはトロピカルな香水のような香りを放つので、朝起きてリビングに入ると何とも爽やかな気分になります。気持ちも豊かにしてくれるので、ああ、日本での幸福の木の名前の由来はこんなところにもあるのかな、などと思いを巡らせていたのですが、この花のことについて調べてみると少し驚いたことがありました。

何と、ドラセナが花を咲かせる理由の一つに、自らの生命に危機を感じた時、という事が挙げられていたのです。植えられている鉢の中で根詰まりしたり根腐れしたりすることで、このように花を咲かせてサインを出すのだとか。そのため、ドラセナは毎年花を付けるわけではなく、数年に一度や10年に一度と書かれてある記事も見ました。もちろん、調べている中でドラセナが花を咲かせるその他の理由も知ったのですが、そういえば最初にもらった時のまま鉢を植え替えてあげていなかったなという事に気が付き、これを期に鉢を買い換えることにしたのです。

今回、ドラセナの花を通して気付かされる事がありました。普通、自分に危機が及んでいるのであればもっと別の方法を取らないだろうかと思うのです。例えば、鮮やかな原色の花を咲かせ派手にアピールしたり、不快な匂いを放って訴えるのも一つだと思います。しかし、そのどちらでもない。自分が良くない状況、究極は、このまま最期を迎えるかもしれないという時にあってもなお、自暴自棄になるでもなく、むしろ周囲に幸せすら与えられるこの植物の振る舞いに感動を覚えました。そして同時に、この一連の出来事を人間に置き換えて考えてみたときに、人間の世界にも通じるものがあることに気付いたのです。日常の生活の中で起きた小さなニュースから、そんな事をふと考える時間を与えてくれたこのドラセナに感謝します。そして、たとえ日本の幸福の木が由来の種とは違う親戚の種であったとしても、いつも自分達を見守ってくれ、良い縁起をもたらしてくれているこの植物をこれからも大切にしていこうと思います。

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。