この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時の品質・配送管理・山本が、酒器・歴史・春にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
2013年12月、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されると、日本酒にも熱い視線が注がれはじめました。日本酒には専門用語がわかりにくく複雑でどこか取っ付きにくいイメージがあります。しかし最近では、街には日本酒専用バー、空港には試飲可能な特設コーナー付きのラウンジが登場し日本酒が身近な存在に感じるようになりました。
日本には縄文時代から酒があったとされますが現在のような米を原料とした酒がいつから造られ始めたのかは、はっきりとわかっていません。初めて確実な記録として歴史に登場するのは8世紀初頭のこと。口嚼ノ酒(くちかみのさけ)を造る村の話が大隅国風土記に、播磨国風土記にはカビの生えた干し飯から酒ができて飲んだ記述あります。また、9世紀に編まれた令集解には「8世紀の朝廷でも酒造りが行われていた。それは米と麹と水を甕に入れ、10日間ほど発酵させるものだった。」との記録も残っています。これらの書物は当時の酒造りを知る上で欠かすことのできない貴重な資料となっています。
そして「酒のあるところに酒器もあり」。時代とともに創意工夫を繰り返し多種多様な酒器が作られてきました。盃に升、猪口にかわらけ、ぐい呑み、高台杯。徳利にちろりなどなど。また実用的な物ばかりでなく珍しい酒器も作られました。底が尖っていたり穴が開いていたりして注がれた酒を飲み干すまで置けない杯「可杯(べくはい)」です。「可」は漢文で「可何々(何々すべし)」と書き、下にはつけない文字であることから、このような杯を「可杯」と呼ぶようになりました。杯とセットになっているコマを順番に回し、出た絵柄の杯に注いでもらい飲み干して遊ぶ物であり、今では高知を代表するお座敷遊びの一つとなっています。
貝殻や動物の骨から始まった酒器の素材も現在では数多く存在します。杉や竹など美しい木目と香りが癒しのひと時を作る植物素材。冷たい清涼感を感じるガラスや固有の模様や色合いが魅力の天然石といった鉱物素材。熱伝導性が高いステンレスや水を浄化し酒の雑味を取り除きまろやかな味になる錫といった金属素材。日本の器の象徴とも言える「六古窯」に代表される陶磁器と多岐に亘り、その形状も豊富で見る者の目を楽しませてくれます。
日本酒は注がれる酒器の容量や形状によって風味が変化する醸造酒です。香味成分が700種類以上とワインやウイスキーと比べて格段に多く酒に合った酒器を使うことで豊かな香りや深い旨みを味わうことができます。そして原材料や醸造方法、貯蔵方法の違いにより4万~5万種類はあると言われる日本酒。種類の多い分好みの酒や酒器を選ぶ選択肢も楽しさも広がります。
新緑が芽吹き始めたこの季節。寒仕込みで丁寧に作られた新酒が市場に出回る時期となりました。搾り立てや荒走り、生酒、無濾過と出来立ての美味しさを味わえる機会です。自分好みの酒を見つけ、お気に入りの酒器で味わってみてはいかがでしょうか?
※ ご覧の時期によって価格等ご案内の情報が異なる場合がございます。最新の情報は各店舗にてご確認ください。







