この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当・松田が、クリスマスにまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
秋の話になりますが、仕事の予定もあり2週間ほど香川に滞在していました。せっかくなら、芸術の秋を体感しようと足を運んだ『猪熊弦一郎現代美術館』で、アートの意義について考えさせられました。
当日開催していた展示会のテーマは“アートはバイタミン(vitamin:ビタミン)”。アートは心のビタミン剤のようなもので、人のヴァイタリティーを活性化させる効果があると考えた猪熊氏の主張を体現した展示会です。“美しいもの”には、人の心を癒したり活性化したりする力があるという信念のもと、生み出された「猪熊氏自身の暮らし」「プライベート空間への美の提供」「パブリックアート」という3 部構成で年代ごとの作品が展示されていました。
猪熊氏は、美を愛し、美を探究し、美をあらわそうとした画家です。その作風はひと言では表せず、強いていえば年代別に作風がまったく異なる点が唯一の特徴といえるでしょう。例えば、初期の作品は写実主義で、さまざまなモチーフをいかに忠実に描くかという点に注力していました。その後は抽象画を描く時期や、インテリア・商業用ポスターを手がけることも。ただ、通じているのは“美しさ”を追求していること。
私が好きな猪熊氏の言葉を引用すると分かりやすいかも知れません。「美はいずこに」『SPIRIT』No.31 1990.3 210-214pp から
「美しいということは、ただ花が咲いている、バラが咲いているというものではない美しいことがあるわけです。バラの花を見て美しいと思うことは誰にでもわかる美しさですが、それ以外の美しいということは何だろうということを考えますと、結局シンプリシティー、物を簡単にする、単純化する、色々なものを除けてしまうということと、それをどういう風にコンポーズするか、組み立てていくかということです。」
さまざまな美しさを持つ作品に触れるなかでも、今回の展示会において個人的に最も気になったのは「パブリックアート」です。パブリックアートとは、美術館やギャラリーではなく、公共空間に設置される芸術作品のこと。都市を彩るものとして今でも世界各地で取り入れられています。猪熊氏は日本におけるパブリックアートの先駆者でもあり、その発端となったのは戦後間もない1940 年代後半のことでした。
その背景には、政治戦略のなかでプロパガンダの一環として戦争を促す制作物を手がけていた自身への贖罪の意も隠されているとか。自らが手がけるアートで世の中を元気にしたいという想いのもとで、以下の代表的なパブリックアートは生まれました。
1949 年 慶應義塾大学内壁画《デモクラシー》1951 年 JR 上野駅壁画《自由》1958 年 香川県庁舎陶画《和敬清寂》
どれも改修が入ったりしているものの、現在も残っている作品です。当時の時代背景を考えると、政治的圧力や世間と芸術家からの評価の点において過酷な挑戦だったはず。それでも、アートの新たな可能性を見出した偉大さに感銘を受けました。
「歩く教室2 美術館見学 ?絵の見方かき方? 」『少年朝日』に記載のあった以下の言葉も、私の好きな一節たちです。
「何をかいてあるのかわからなくても、美しいというのがわかれば、それがいちばんいい絵のみかたです。」「絵をみてみんなが楽しく思えば、それだけでその絵は人々によろこびをあたえているわけです。」
アートに意義を求めながらも、作品に触れた人が美しさを感じ取り、少しでも元気になれば良い。
「家にひとついい絵があれば、それを毎日ほんの少し見るだけで大きな効果がある」という猪熊氏の考えに共感して、アートアイテムもご紹介します。
新型コロナウイルスによる、世の中に大きな変化が起きている今。新しいパブリックアートがこれから生まれる予感がしませんか?既存の作品や新たなアートの誕生が皆さんの心のバイタミンになることを祈っています。
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