この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当・佐々木が、テーブルコーディネート・重陽にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
毎日の食卓にのぼるさまざまな食材。そのなかでも多彩さの点からいって群を抜くのは、やはり野菜ではないでしょうか。
日頃からよく見かける馴染みの野菜でさえ数多くあります。さらに、まだ知られていない外国の野菜や、品種改良されて一般に紹介されたばかりの新野菜、といったものを含めると、世界には無数の野菜が存在しています。
野菜の種類の数だけ色合いや形のヴァリエーションがあり、それは料理そのものに無限の多様性を与える大きな要素となります。と同時に、それぞれの食器のもつ美しさを引き立たせ、日々のなかにもふたつとない食卓の風景を演出してくれます。
それほど親しみのある野菜たちですが、やはりこのところの消費者の志向としては、味や見た目の良さもさることながら、安心で安全なものを求める意識がかなり高まっているといえます。
農薬がその程度使われているのか、肥料はどんなものか、水は汚染されていないか。生産者の姿勢とその野菜作りの環境や過程に対する消費者の関心を満たさなければならなくなってきています。
ただ、安心安全な野菜が作れるとしても、それを安定的に消費者に供給できるかどうかが、生産者の悩みどころのようです。農薬を使わなければ、害虫や病気との戦いは一層過酷なものになるだけでなく、収穫できる野菜の量もどうしても少なくなってきます。さらにこの頃顕著な異常気象や台風・長雨といった天候不順にあってしまえば、出荷自体ができなくなってしまう可能性もあるわけです。
こうしたさまざまなリスクと不確定要素を回避しながら、生産者が安心安全な野菜作りに日々取り組んでいることを考えると、食卓にあがる野菜の姿もまた違ったものに見えてきます。
先日、大阪南港にあるインテックス大阪で開催された農業関連の展示会を少し覗いたのですが、そこでも安心安全な野菜をいかに安定的に生産できるかということがひとつの大きなコンセプトになっていて、そのための製品や設備が多く出展されていました。
たとえば、環境を完全に制御して野菜を生産する最新型の水耕栽培の設備であったり、土壌を有用な微生物の多いものに変えていく特殊な肥料であったり、あるいは空気中の湿気から人間が飲用可能なレベルの水をつくり、それを農業にも利用するシステムであったり。実にさまざまな興味深い技術が披露されていました。
実は、ル・ノーブル本社のある京都府長岡京からほど近い久世郡久御山町でも、人や環境に配慮した最新鋭の農業がいままさに動き出しています。(京都新聞2019年8月2日付)
この農場「FARMERS HUB KYOTO」では、土耕でも水耕でもない、砂を使った栽培法がおこなわれています。これは天然の砂を専用のベッドの上に15cmほど敷き詰め、そこに細長いチューブを這わせて点滴の要領で、水分と肥料を与えるというものです。極限まで水分と肥料を減らしてスパルタ的に栽培するので、丈夫な野菜が育つようです。果樹以外ならほとんどの野菜をつくることができ、農薬の使用も低く抑えることも可能とされます。
さらに、この農法の大きな特徴として連作障害が起こりにくいという点は、とくに驚きです。従来のように土で同じ野菜を作り続けるとそのうちに病気が増えてくるなどしてうまく生産することができなくなってきます。連作障害は生産者にとって頭の痛い問題ですが、砂を利用するこの農法では培地に余分な養分が蓄積されにくいということもあって連作が可能になっているようです。
また、ハウスのなかに足場を組んで腰の高さに据えたベッドで野菜を作るので、腰をかがめる必要や、大きな農機具を使う必要もなく、車椅子でも作業ができるなど、とても革新的な部分が多くある農法といえます。
いま農業は、全国的に担い手不足が深刻な問題となっています。農業はつらく厳しい重労働というイメージが抜けない限り、この状況はなかなか変わっていかないでしょう。そうこうしているうちに、安心安全なものどころか、国産の野菜自体が口にできなくなる日が来るかもしれません。
そうしたなかで、京都で新しい農業の取り組みが始まっていることは、とても頼もしく感じます。こうした革新的な農法が京都から全国に広がり、そこで作られた美味しく安心安全な野菜が美しい食器に盛られて日々の食卓にのぼるようになれば、とてもうれしいことですね。
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