この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のル・ノーブル編集部が、歴史・夏にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
今年の梅雨明けは記録的な遅れになるとのことで、天気予報が気になります。このメルマガが流れる頃には、全国的に梅雨明け宣言がなされているでしょうか。
本格的な「暑~い夏」の到来を待ちわびる今日この頃・・・。日本の夏の風物詩と言えば、皆さんは何を思い浮かべますか?
夏には欠かす事の出来ない、食べて美味しい「かき氷」のお話しを。大阪の家庭には「たこ焼き器」が常備されている!という話がありますが、私が子供の頃には、くまさんの「かき氷器」の常備率もかなりのものだったと記憶しています。
器に降り注ぐキラキラの氷の削り節を、固唾をのんで見つめていた記憶がよみがえってきます。一体いつから、こんなに美味しい物を口にしていたのでしょうね・・・。
削り氷に甘葛入れて、新しき金鋺に入れたる
時代はさかのぼり平安時代。清少納言の有名な「枕草子」の40段「あてなるもの」には、すでにこのようなくだりが謳われています。
また、紫式部の「源氏物語」にも氷をふるまうシーンや、夏の夕暮れに氷で涼をとる貴族達の様子が描かれています。
かき氷と言えば、好みのシロップで味付けして味わうのが一般的ですが、「枕草子」の唄にも「甘葛(あまづら)」とあるように、私達と同じく甘味料で味付けをしていたのだと思われます。
また当時は当然の事ながら製氷する術はないでしょうから、冬場に出来た天然氷を保冷して、夏まで保存していたという事になります。この頃から氷は、夏の贅沢な楽しみとされていた事が伺いしれます。
平安時代からさらにさかのぼり奈良時代には、冬の間に氷を納めて夏まで貯蔵する施設(氷室)がすでに存在していました。この頃の氷室は、約3m程の鉢状の坑に茅や草で覆ったものであるとされています。
夏までに氷を貯蔵する文化は古く中国にあり、王の身の回りを司る天管の役割の一つとして、冬に氷を作り氷室で蓄え、夏に蔵から取りだし利用する「蔵氷」と「賜氷」という仕事があったそうです。
やがて朝鮮大陸を通じ、奈良時代の頃には日本にも律令として定められました。
古代の施行細則を集大成した重要文献である「延喜式(えんぎしき)」によれば、元日の節会に、氷室に蓄えていた氷の厚さや形状で、新年の作柄を占う重要な行事にも利用されている事がわかります。
その後、この賜氷制度の実態はなくなりますが、江戸時代の頃になると民間信仰と一体となり歳時として「氷室御祝儀」という行事に姿を変えていきます。「氷室御祝儀」とは、旧暦の6月1日に北越の加賀の氷室から切り出した雪氷を、江戸の将軍家に献上するというものです。
加州候御屋敷に氷室ありて、今日氷献上あり。町衆にても旧年寒氷をもって製したる餅を食してこれに比らふ。
旧暦の6月1日といえば現在の7月1日、氷室から雪氷を切り出して笹や葉などで包んで二重の長持ちに納め、8名の飛脚により昼夜問わず江戸の加賀屋敷を目指すというまさに想像するだけでも大変だと分かる内容です。
これは十四代将軍、徳川家茂の時代まで続いたとされており、加賀藩の飛脚達にとっては一世一代の大仕事だったのです。当時、金沢から江戸までは、飛脚の足で10日はかかると言われていますが、この時ばかりは半分の5日での強行軍である必要がありました。
これらのように、献納品として扱われる事が多かった夏の氷は、朝廷や将軍など一部の上流階級のみしか利用できない貴重なものでした。明治維新以降には庶民も手に入る身近なものになっていきました。
日本で初めての氷水屋は、横浜の馬車道に登場したとされています。幕末の頃、外国人医師が医療用の氷として用いた天然氷(ボストン氷)がありましたが、遠く喜望峰経由で輸入されていた事から大変高級であり、食用にはとても普及しないものでした。
しかし、中川嘉兵衛が試行錯誤の末、五稜郭で天然氷の商品化に成功したのをきっかけに、全国的に天然氷が普及する事になります。その後、季節により左右される天然氷に代わり、製氷機の導入などに後押しされ、数年後には大衆的な飲食物として「かき氷」が定着しました。
私達がイメージする氷削機の登場は明治20年。氷商であった村上半三郎により発明されましたが、少し高価であったため、一般に普及を始めたのは昭和初期の頃であった様です。
今では当たり前のように手に入る氷とかき氷器ですが、ここまで来るには大変な道のりがあったのです。
現在の氷室「冷凍庫」製氷器の氷はなぜ白い
家庭で氷を作る場合、多くは冷凍庫の製氷器が殆どだと思います。家庭の冷凍庫で作った氷は、白い結晶のようなものがあり白濁してしまいますが、この白濁はミネラル・空気・塩素ガスをはじめとする、水の成分に含まれる不純物が要因です。
家庭では氷屋さんで見るような、見た目にも透き通った味も美味しい氷を作るには、やはり一手間必要です。水の不純物を出来るだけ取り除き、ゆっくり固める。これが、美味しい氷を作る条件になります。
家庭用の冷凍庫は、多くの場合-20℃ ~ -18℃の温度設定によって一気に製氷をしてしまう物が殆どです。当然、冷凍庫は温かくては意味のないものですが、いざ澄んだ氷を作るとなると、良い条件ではありません。
水は冷やされて徐々に外側から固まるのですが、この時、純粋な水分から凝結し、残った不純物が最後に固まります。一気に凍らせると、この不純物も取り込んだまま凍ってしまいますが、氷ができるまでの時間を長くする事で、水は不純物を押しのけながら凍ります。
結果、氷の中心に不純物を閉じこめる事ができるようになり、綺麗な氷が出来るという訳です(どうしても若干は残りますが・・・)。
具体的には、-10℃前後でじわじわと時間を掛けて凍らせるのが理想ですが、家庭用の冷凍室ではそうもいきません。ある番組の実験では、ポリ袋に製氷皿を入れ、さらにタオルで包み込む事で、ゆっくりと凍らせる工夫を行っていました。
とはいえ、氷屋さんが作るものや、天然氷にはかないませんよね。最近では、天然水を用いた氷の通販も出来るようです。天然氷の結晶は大きく溶けにくいと評判でキャンプ等のアウトドアにもオススメです。キャンプのイベントでかき氷というのも、良いですね。
さて、ル・ノーブルでは現在スイーツにピッタリの器特集を掲載中です。
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