この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当・松田が、マイセン・バカラ・エルメスにまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
とにかく水辺が好きな私。フランスに行くなら、一生に一度は『モン・サン=ミシェル』を生でみたい。四方を海で囲まれ、街全体が要塞のように君臨する幻想的な街並み。その中に紛れてみたいのです。海に浮かぶ世界遺産という点では、広島の厳島神社が素敵ですよね。
先月はドイツへ。今月はフランスに脳内旅行へ。
そんなフランスの洋食器の歴史は、1700年代から1800年代にかけて、「セーブル」「ジアン」「リモージュ」といった3つの地方で紡がれてきました。中でも、古い歴史を持つのがセーブル地方で生まれたブランド・セーブル。
ドイツのマイセンに対抗し、前身となる窯元が設立されたのは1738年。当時、ヴァンセンヌにあった窯を、ルイ15世の寵愛を受けていたポンパドール夫人がセーブルへと移転させ、1757年にはフランス王立セーブル磁器製作所へと転身しました。芸術で栄えたフランスの一流画家をはじめ、技師や化学者も集め、最高品質の磁器を製作していました。
「王の青」や「ロゼ・ポンパドール」と呼ばれる独特のピンク色を生み出したり、ロココ風の田園風景や花鳥図を取り入れたり、独自の様式を確立しました。しかし、1789年のフランス革命により工場が破壊され閉窯。ナポレオン統治下で国立セーブル磁器製作所となり、現在も生産を続けています。
ただ、生産数が限られており、そのほとんどが外交の献上品に用いられることから、一般に出回ることはほとんどありません…まさに、セーブルは幻の陶磁器といえるでしょう。
その他、最初にご紹介したジアン地方のジアンや、リモージュ地方のアビランド、レイノー、ジャンルイ・コケ、ベルナルドなどがフランスの洋食器としては有名でしょう。また、一流ブランドとして人気を誇るエルメスやバカラをはじめ、お洒落で洗練されたテーブルウェアが多い印象ですよね。
洋食器の歴史に負けず劣らず気になるのは、世界三大料理のひとつであるフランス料理の歴史。何となく、格式が高いイメージを持たれがちですが、実はそうでもないようで。
16世紀、イタリア料理の影響を受けてフランス料理の原型が誕生。それと同時にナイフやフォークを用いるテーブルマナーがフランス料理でも取り入れられました。元は宮廷内で振る舞われていましたが、こちらもフランス革命の影響で王宮シェフたちが職を失うことに。そんなシェフたちが街でフレンチレストランを経営するようになり、民衆の間へと広がるムーブメントが起こりました。
そこから19世紀に、源流であった宮廷料理と街へ広がったフランス料理が融合・体系化され、家庭でも作れるレシピが開発されていくなか、庶民が日常的に食す郷土料理として根付くようになりました。
コースメニューのイメージが強いフランス料理ですが、それはあくまで近年になってから。料理が冷めないように1品ずつ運んだことをきっかけに、そのアイデアが定着化し、コースメニューの概念が生まれたのです。
そんなフランス料理の魅力は、多彩な調理技法と調味料。シンプルな食材を、クリエイティビティ溢れる発想で、風味・色彩・形・味を芸術レベルまで引き上げる独自性こそ、フレンチならでは。
“ソースで味が決まる”なんて思われがちですが、フランスは大西洋と地中海に面している温暖な気候のため、実は農産物・畜産物・海産物など食材にも恵まれた土地なのですよ。
食事のあらゆるタイミングでチーズを楽しむのもフランス独自の食文化。前菜からメインディッシュ、デザートの間に、何種類ものチーズを味わうこともあり、食後にワイン片手にチーズを嗜むイメージが強いですよね。
洋食器から料理まで、芸術性の高さで私たちを魅了するフランスの格式高い文化。今回は、その歴史を感じられるアイテムから、世界的高級ブランドまで、幅広くセレクトしてみました。
1980年作。丸みを帯びたこのグラスを持つと、まるで小さな地球を手にしているかのようです。ナポレオンに「勝利の女神の申し子」と呼ばれた陸軍元帥マッセナの名を冠したこのシリーズは、1980年の発表。丸みを帯びたシェイプに、太陽光のように鮮やかに刻まれたカット。手のひらにぴったりとおさまる、小さな栄光です。
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