披露宴のフレンチ

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当松田が、歴史・梅雨にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

小学生の頃からの付き合いで、よくお家にお邪魔させてもらっていたこともあり、ご両親とも仲良くさせていただいています。そんな親しい友人の普段は見ない一面。タキシードに身を包み、ピシッと背筋を伸ばしながら、新婦をエスコートする姿を見ていると、「僕たちも大人になったんだな」と感慨深い気持ちに。

つい先日、20年来の旧友の結婚式に参列してきました。

ポジティブに歳を重ねることを捉えられる機会があるというのは、嬉しいものですね。

ただ、披露宴には個人的な関門がありまして…。それは、披露宴特有のコース料理。大人になった今でも苦手な食べ物が多く、手をつけていない状態で、「これ、下げてもらって大丈夫です」と小声でスタッフさんに伝える技術ばかりが身につきました。

そもそも、日常においてコース料理を食べる機会も少なく、披露宴では定番のフレンチなんてもってのほか。日本料理ならどれほど嬉しいかと思っているうちに、「なぜ、披露宴にはフレンチが定番なのか?」が気になって調べてみました。

世界三大料理であるフレンチの歴史は中世に始まります。王族御用達の料理として誕生した後、イタリアンの影響を受けた時期もあったとか。そこからさらに独自性を育み、長きに渡り宮廷料理として発展してきました。その歴史から、“フォーマルな場面で来賓をおもてなしするに適した料理=フレンチ”という方程式が世界的に出来上がったのです。

“フレンチ”って言葉の響きだけで、格式の高さを感じますよね。私たちが一様にこのイメージを持つのも、歴史が育んできたフレンチの確固たるブランディングがなせる技。さらに、見た目の華やかさだけではなく、フレンチのコース料理はゲストの体にまで気を配って設計されているようで。

始まりは食欲を駆り立てる「オードブル」から。ご存知の通り、オードブルとは前菜のこと。最初に提供されることから、まずは食欲を駆り立てるために、量よりも色彩の豊かさが何より大切とされています。また、実は胃を整える役割も担っており、塩味や酸味の効いた料理が出されるようです。

続いて、口にしやすく体を温める効果もある「スープ」が届き、フレンチで魚料理を意味する「ポワソン」へ。この後に出てくる肉料理と魚料理の両方を食すことで、消化を促進する効果が期待できるとか。特に日本では、腰が曲がるまで長生きすることを願って、縁起の良い海老を使った料理が出てくることが多いです。

そこから、氷菓子「ソルベ」でスッキリとお口直しをして、いよいよコース料理の主役を担う肉料理「ヴィアンド」の登場です。備え付けの野菜も消化のことを考えて添えられているんだとか。

ラストを飾るのは、フランス語で皿や料理を片づけるという意味を持つ「デセール」。専用のテーブルウェアに綺麗に並べられたデザートは、式の終わりを告げながら、豊かな色彩でテーブルを彩ります。甘いものは、体内の食べ物を胃から腸へ押し出す働きを促す効果があるようで、どこまでもゲストの体への配慮を忘れません。

食事は体をつくるもの。味、見た目、健康と三拍子揃ったフレンチが披露宴で採用されることにも納得できたので、これからは今まで以上に宴での食事を楽しめそうです。

もちろん、食事のおもてなしとなれば、テーブルウェアも欠かせない要素のひとつ。例えば、食欲が衰退しがちな夏には、食欲が出る赤・オレンジ・黄色などの器を使ってみたり、ひんやりとした印象でつい手を伸ばしたくなるガラスの器を添えてみたり。食卓をともにする相手への労いの気持ちを、器に込めてみるのも素敵ですよね。

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。