“考えない”時間が育む創造性

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当松田が、にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

最近、プロボクシングへ転身し、4月7日にはプロデビュー戦が開催。元々はプロキックボクサーであり、総合格闘家の一面も持っています。プロキックボクサーとしての戦績は42戦全勝。そんな人が、プロボクシングに転向するとなれば、格闘技ファンが熱を帯びるのも納得です。

恥ずかしながら、つい先日に那須川天心さんのすごさを知りました。

ふと、遡ること29年前にあった、“バスケの神様”マイケル・ジョーダンが野球界への転身を思い出しました。メジャーリーグ内のマイナーリーグと契約を結んでから、約1年で引退を宣言。野球界で大きな功績を残すことはできませんでしたが、再びNBAに復帰して見事チームを優勝へと導きました。

いずれのケースも、競技自体のルールや制約が異なり、求められる技術も違うなか、“カリスマがどこまで通用するのか”という点で、格闘技ファンではない私も天心さんの転身に注目しています。あと、3月からキックボクシングを始めたので、純粋に体の使い方などを勉強したい気持ちもあります。

最初は、いわゆる一般的なジムを探していました。コロナ前にもジムに通っていたのですが、そのときは半年で行かなくなり、幽霊会員としてジムにお金を落とす毎月でしたが…。その反省を活かし、目的を再設定することに。「最優先は健康増進。あと、持続するモチベーションは、筋肉より強さにありそうだ」と思い、3月頭にキックボクシングジムの体験へ。入会して、今のところ毎週通いながら、1ヶ月が経ちました。

ただ、私がキックボクシングにハマっている1番の理由は、“動きながら瞑想している”ような感覚があるからです。実際にコーチも「キックボクシングを動く瞑想という人もいますね」と教えてくれています。最初は、普段の体の使い方とは異なるパンチやキックをすること自体で精一杯。そして、次は「もっと威力を出したい」「もっと綺麗なフォームにしたい」という意識で感覚的に体を動かせるように。

キックボクシングをしている最中は、意識的に思考することは少なくて、無意識的に、感覚的に、ずっと体を動かしているんです。終わったあとは、格闘技ならではの無の境地みたいな感覚を味わえます。こうした“考えない”時間が生まれる点で、キックボクシングは動く瞑想だと思っています。

これはあくまで想像ですが、例えば、窯元や器作家の創造性も、釜焼きの時間などムダなことを“考えない”時間から生まれているのではないか?と思っています。よくある話に、「何か良いアイデアはないか」と考えてもアイデアは出てこなくて、考えて考えて考えて…考えるのを辞めてからアイデアが降ってくるという話があります。

きっと窯元も、日々色んな器に触れ、色んな事象を見つめ、自分の外にある世界からアイデアのタネを拾い集めていて、釜焼きの時間にタネが花開くといいますか。目の前の作品を仕上げることに集中している釜焼きの時間は、熟練の職人ほど「考えるより感じるものだ」と言いそうなので、きっと無心になっていて、そのときにアイデアを閃いていそうだと思いませんか?

“作品には作家の世界観がある”、この言葉をもう少し紐解くと、作品に作家が見ている景色が反映されている、と言い換えられそうな気がしています。作家名で作品を選ぶのも楽しいですが、もう少しストーリーチックに「どんな人が作っているか」の視点で作品を見つめてみると、また違う発見が出てきそうですね。

ぜひ今回紹介する器を参考にしながら、作家が見ている景色を覗いてみてください。

不動の人気柄「いちご泥棒」をはじめ、ウィリアム・モリスが込めた普遍的な美学と思想をもった様々なパターンが魅力の同ブランド。今回は、ブルーやピンクの可愛い春の花々とエレガントで華やかなユリの花が、野生のいばらや緑に絡み合って咲く、まるで英国風ガーデンで佇んでいるかのようなイメージの「ゴールデン・リリー(Golden Lily)」をピックアップしました。このモチーフからも、作り手がどんな景色を見て生きていたのか、少し想像できそうです。

和食・洋食・中華をはじめ、どんな国の料理においても、見た目の美味しさを引き出してくれるとともに、高級感も与えてくれるナハトマンの「ボサノバ」。本当に合わない食材がないんじゃないかな?と思うくらいのポテンシャルを持っています。ネーミングにあるボサノバは、ブラジルのラテン音楽とアメリカのジャズが融合して生まれた音楽スタイルであり、そのミックスカルチャーなコンセプトが多彩なジャンルの料理に会う秘訣なのかもしれません。

※ ご覧の時期によって価格等ご案内の情報が異なる場合がございます。最新の情報は各店舗にてご確認ください。

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。