ヒト・コト・モノ を遺す

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当松田が、マイセン・皿・歴史にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

関東圏なら、東京2大花火大会のひとつ、1万2000発の花火が東京の夜空を彩る「東日本大震災・熊本地震復興チャリティー 2022神宮外苑花火大会」をはじめ、群馬の「前橋花火大会」や栃木の「足利花火大会」なども開催予定。いずれも、数十年の歴史を持つ花火大会です。

今年は3年ぶりに花火大会が開催されるようですね。

関西に住んでいる私は、大阪の「第34回なにわ淀川花火大会」を観に行こうかと検討中。社会情勢を読みながら、さまざまな壁を乗り越え、開催に至った夏の風物詩…キンキンに冷えたビール片手にぼんやりと夜空を眺めながら風情を味わう、そんな極上の時間を堪能しようと企んでいます。

花火の歴史は、時を遡ること14世紀後半。イタリア・フィレンツェの王侯貴族の間で広がり、結婚式や戴冠式などで打ち上げられるようになったそう。日本では、元々武器として火薬が持ち込まれ、鑑賞用に変わったのは江戸時代。こちらもやはり、将軍や大名の間で流行し、大飢饉を皮切りに慰霊と悪疫退散を祈る水神祭にて、本格的な川開きの花火が打ち上げられるようになったとか。

長い年月を経て、今に残る歴史へ思いを馳せると、1つひとつのコトを遺してくれた先人には頭が上がりません。もちろん、コトだけではなく、ヒトだってそう。特に地方の場合、誰かが遺そうとしなければ、自然に残ることは難しい。6月の中頃に訪れた香川県高松市男木島でその実態が見えてきました。

男木島は瀬戸内海に浮かぶ離島のひとつ。5年ほど前までは人口約100人、平均年齢約70歳でした。そこへ仕事の関係で移住を決意した特定非営利活動法人男木島図書館・代表の額賀さん。ご自身にお子さんがいたことや、今後の島の未来を考えて、小中学校の開校を行政へ掛け合うことに。でも、それだけじゃ足りないと、持続・発展まで見据えて、地域づくりの重要拠点かつ重要機能とされる図書館を立ち上げました。さらに、図書館内には移住相談窓口も設置。

すると、大人気の瀬戸内芸術祭のおかげで、ぶらり島を訪れた人々がその魅力に触れ、移住窓口を起点に緩やかに繋がることで続々と移住者が増えていったそう。今では人口150人、平均年齢もグッと引き下がり、小中学校も開校。子どもたちの笑い声、海沿いでゆったり過ごす島人の姿、外部資本から守られたありのままの自然が印象的な離島です。

「今、目の前にある暮らしが、どれほどありがたいものなのか」。理解させてくれた額賀さんとの出会いや島の光景には感謝しかありません。いつかまた近いうちに再訪したいな…と、その記憶と感情にはひとまず蓋をして。

ヒト・コトとくれば、次に考えたいのは「モノを遺す」ということ。そのためには、“作り手の誕生”と“買い手の創出”、その両方が必要です。

例えば、器の作り手になった方々のストーリーを想像してみましょう。

きっと、私たちと同じように、暮らしの道具をはじめ家具や洋服への関心を持つ中で、偶然に出会った一つの作品に心を動かされたのかも知れません。子どもの頃にはたくさんアニメや雑誌などのカルチャーに触れ、自然と調和した暮らしに喜びを見出す生き方が、幼な心に豊かに見え、人生のなかで縁があって出会ってきたヒト・コト・モノが他の何かと結びつき、「作為を超えたところで自分にしかできないモノづくりがしたい」と思うように至ったのかな・・?などと想像が膨らみます。

何かに魅了されてきた経験と記憶の連続や一つの衝撃的な出会いなど、たくさんの縁のなかで、モノづくりで生きていこうと決心したことには間違いないでしょう。

それでは、買い手の創出はどうすれば良いのでしょうか。

2010年代から時代は「モノ消費」から「コト消費」へ推移。経済産業省の公表している『平成27年度地域経済産業活性化対策調査報告書』でその定義を見てみましょう。

モノ消費とは、個別の製品やサービスの持つ機能的価値を消費すること。価値の客観化(定量化)は原則可能。コト消費とは、製品を購入して使用したり、単品の機能的なサービスを享受するのみでなく、個別の事象が連なった総体である「一連の体験」を対象とした消費活動のこと。

言い換えれば、コト消費は体験に価値を、モノ消費は商品自体のデザインや機能に価値を見出すことといえるでしょう。だからこそ、今の時代のモノづくりは、“用の美”と形容される洗練された印象でシンプルなアイテムのほか、「作り手のストーリー」や「手がけたモノに込めた想い」などへの共感も大切になりました。器そのものだけではなく、その器を知った時の感動や購入する時の誇らしさみたいな体験にお金を払いたくなるものではないでしょうか。

このようにヒト・コト・モノは切っても切り離せない関係。つい1週間ほど前に見返した某人気アニメでも語られている『一は全。全は一』という言葉を思い出しました。

今回は「遺す」「機能・デザイン」「ヒト・コト・モノ」をキーワードに3つの商品をピックアップしました。

言わずもがな、洋食器の歴史を語るに欠かせない西洋白磁ブランド「マイセン」。洗練されたデザインがマイセンの魅力の一つであると同時に、卓越した技で支えてきた熟練の職人の素晴らしさでもあります。西洋と東洋を織り交ぜた独特の風合いで、見る人を楽しませ、和ませてくれるシリーズの中から、「波の戯れ」をご紹介。ヨーロッパ初の白色磁器を生み出した名窯であるという歴史に裏付けられた自信とただよう品格は、人々を引きつけてやみません。マイセンならではの白い食器、ぜひご堪能ください。

機能もデザインも見事に両立。食洗機、電子レンジともに使用OK!と気軽に使えるデイリーユースなアイテムです。使い込まれたラグをモチーフにしたデザインもグッと心を掴む可愛らしさ。時間に追われてあたふた…ササっと手軽に調理を終わらせたい!そんな時には具材を入れてチンするだけで簡単料理の出来上がり。食卓を彩るひと工夫は華やかなお皿に任せて、たまには楽しちゃいませんか?

伝統をモダンに。モーリー・ハッチは、18世紀のヨーロッパ食器にインスピレーションを受け、現代的な発想で「ヘリテージ」コレクションをつくり上げました。このシリーズの特徴は、何と言っても器全体に施されたかわいい絵柄。使う時だけでなく、食器を洗って水切りトレーに置いた時や収納時に、カップやお皿の裏に施された絵柄が見えるのには彼女のこだわりを感じます。まさに、ヒトがいて、コトに触れてきたからこそ、生まれ一つのモノづくりと言えるでしょう。

「実は元々、器づくりに興味があって、陶芸教室に通ってみたい」など密かに想っている方へ。街中をそぞろ歩きしたり、ぼんやりオンラインのECサイトを眺めていたり、家の中のコレクションを見つめているときだってそう。そんな時間があなたの感性を刺激しているなら、「私も作ってみようかな」と気軽に始めてみることで、いつかは陶芸作家に…なんてこともあるかも知れませんね。

※ ご覧の時期によって価格等ご案内の情報が異なる場合がございます。最新の情報は各店舗にてご確認ください。

ABOUTこの記事をかいた人

「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。