この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当・松田が、歴史・梅雨にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
私は数年前から日記をつけています。3年前にツバメノートで綴り始めて、2年前くらいにはアプリへ移行。週末はたまに日記を遡っているのですが、ふとさっきのメモを発見しました。
メモ帳で見つけた「伊根に行きたい」という殴り書き。
紙のノートに記されているので、少なくとも書いたのは2年以上も前のこと。「2年もあったのに、小旅行に行くこともできなかったのか…」と落胆すると同時にゴールデンウィークの予定に目を向ける。
長期連休には半分予定を入れて、半分は何も予定を入れないスタイルの私。今年は仕事のスケジュールも落ち着いていたので、まだ時間にゆとりがある。その場で友人に連絡して、急ぎ伊根旅行をセッティングすることに。
メモを書いた当時の記憶では、特に雑誌で「日本で最も美しい村」「歴史ある舟屋の町」など特集記事が組まれていた京都の伊根。“舟屋”と呼ばれ、漁業に用いる小規模船を収納した倉庫の上に、住居を構えた伊根地区特有の伝統的建築物がずらりと並んでいます。“日本で最も海に近い暮らし”とも称され、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されており、舟屋の数はなんと約230軒。何とも不思議な構造で、家屋の土台となる部分は海の中。よく見ると、形状は台形になっており、耐震性も高いのだとか。ぶり・たい・かにも有名らしく、特に冬のぶりしゃぶやかにしゃぶが絶品で、足を運ぶ前から次回の旅先が決まりそうな予感。
しかし、4月末に旅行計画を立て始めたために、ゴールデンウィーク中はほとんどの宿が空いておらず、観光サイトで片っ端から電話した7軒目でようやく空き部屋を発見。そこから道中にある綾部市のうどん屋と蕎麦屋をピックアップしてルートも決定。伊根散策のほか、旅館近くの森の中にある滝も見に行きたい!と具体的な計画を立てました。
ただ、旅にはやはり余白が欲しい。私は計画を立てるとき、いつも3〜5割ほど時間にゆとりを持たせるようにしています。観光名所や絶景も素敵ですが、私は“その街にあって、自分にしかない景色”を見つけることが好きだから。あえて目的地を決めずに、今その瞬間に五感を使って手に入る情報をもとに、左右に曲がったり階段を登ったりしながら、余白の時間でぶらりと散歩するようにしています。
その時間のなかで、舟屋と舟屋の間のベンチで海風に揺られながら話し込むご近所さん達、いかにも地元民だけが集まる釣りスポット、大勢の猫が集まるエサやりスポットなど、少し温かい気持ちになれる記憶が刻み込まれているような気がして。町の生活や文化が垣間見える情景を目の当たりにすることに、旅の醍醐味を感じるのは私だけでしょうか。
伊根の名産品には伊根焼きもあるそうで、器やマグカップなどが町の飲食店や宿で使われていることも。今回は出会いませんでしたが、次回はぜひ出会いたいものです。こうした自分の興味をきっかけに店主と話がはずみ、仲良くなったりして、ほっこりと嬉しい気持ちになれるのも旅の醍醐味のひとつですね。
自然豊かな伊根には街灯もほとんどなく、18時〜19時には町全体が漆黒の闇に包まれます。17時過ぎには観光客も一斉に帰り支度を始め、町はいつもの姿に元通り。そのため、自分たちも早めに奥伊根にある宿に向かって17時過ぎ頃にチェックイン。1棟丸ごと貸し切りの宿だったので、心ゆくまで露天風呂を満喫し18時頃には夕食へ。
当日の献立は、伊根で獲った鯛の刺身に鹿のジビエとあって、豪勢な食卓に。特に女将が盛り付ける器の余白の使い方がお見事でした。前菜をはじめ小ぶりな料理は、余白をたっぷり。一方で、私たちが男性4人のゲストということもあって、大量の刺身やジビエの肉は大皿にこれでもか!と盛り付け、余白をなくすことでボリュームを演出。
料理は味だけではなく、見た目もとても大事ですよね。 手間をかけて作ったものでも、盛り付け次第でより美味しそうに見えるもの。どれくらいの大きさの器を使って、どれくらいの量を盛り付けるのか。それだけでも見た目の印象が大きく変わります。余白をとって器の美しさを見せるのも、余白をなくして料理を豪快に見せるのも、どちらもおもてなしの心があってこそ。
一般的な目安としては、器の3割程度の余白を残すとちょうど良い。余白を多くとって、控えめに料理を盛り付けることで、ご家庭でも上品で洗礼された雰囲気が演出できます。さらに、ドレッシングやソースはただ上からかけるのではなく、余白を利用してアートのように描いてみると、さながら高級レストラン顔負けの装いにドレスアップ!
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