この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当・佐々木が、重陽にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
じめじめとした夏の暑さに、あの独特の苦みと芳醇な香りは、ほかにはない清涼感を与えてくれる飲み物です。
毎年夏になると、アイスコーヒーのお世話になることが多くなります。
今日はそんなアイスコーヒーの話題を少々。
かつて関西では「冷コー」と呼ばれ、日本では古くから親しまれてきたアイスコーヒー。
ですが、欧米などでは比較的最近になって飲まれるようになったもののようです。
スターバックスなどの大手コーヒーチェーンの登場で、カフェラテつまり熱いミルクコーヒーを、あえて冷やして提供されるようになり、それに伴っていわゆるアイスコーヒーも徐々に定着していくことになったのではないでしょうか。
とはいえ、いまでもコーヒーを冷やすこと自体に抵抗を感じる欧米人は少なくないようです。
日本では、もともと冷茶を楽しむ文化がありますので、コーヒーを冷やして喫することになんの違和感もなかったと思われます。
こうしたところにも、お国ごとに文化の違いが垣間見えるのが面白いところです。
さて、改めて言うまでもなく、アイスコーヒーとは、要するにホットコーヒーを冷やしたものですので、その味と香りを決定する大きな要素は、豆・焙煎・抽出の3点にほかなりません。
まず豆。どんなに優れた焙煎をして、うまく抽出したとしても、生豆の品質が良くなければ、おいしいアイスコーヒーを作ることはできません。
コーヒー豆にはいろいろな品種があるのですが、現在世界で生産されているもので90%以上を占めるのは、アラビカ種と呼ばれるものです。
もともととても風味豊かな品種なのですが、地域の異なる気候と土壌で栽培されることで、それぞれ個性の違う数多くの銘柄が存在します。たとえばワインで言えば、同じカベルネ・ソーヴィニヨン種でも、フランスで栽培されるのと、南米のチリで栽培されるのとでは大きな違いを生むのと同様です。
アラビカ種の次に多く市場に出回っている品種は、ロブスタ種です。これはアラビカ種と比べ安価であることもあり、日本では缶コーヒーなどに使われることの多い品種です。焙煎後抽出してコーヒーにした状態の香りが、いわゆる“ロブスタ臭さ”と呼ばれる独特の香りがあるため、忌避する向きもありますが、アラビカ種とブレンドした場合、とても馥郁とした香味を際立たせるなど、素晴らしい可能性を持った品種であるといえます。
このほかにも、ほとんど市場に出回らない幻の品種があります。農場でごく少量だけ生産されているものもあれば、ジャングルの密林のなかで自生しているコーヒーの木から採取して手に入れられるようなものまで、さまざまです。後者はとくに本当の意味で幻のコーヒー豆といえるもので、実際にコーヒーとして飲んでみると、“これが本当にコーヒーなのか”と思うような、これまでに味わったことのない、驚くような体験をすることもあります。
こうしたさまざまなコーヒー豆の品種があるわけですが、それぞれがもつ特性をうまく引き出せるかどうかは、ひとえに焙煎の出来にかかっています。どんなに良い生豆であったとしても、焙煎がうまくいかなければおいしいコーヒーにはなりません。食材と調理の関係は、コーヒーにもまったく当てはまるわけです。
その焙煎ですが、とても奥の深い世界で、今回のコラムだけでは語りつくせません。それに抽出についてもいろいろと語りたいことがあります。ですので、これらについてはまた改めて別の機会にお話しできればと思います。
良い豆を使い、絶妙な焙煎と的確な抽出作業をして、万全のホットコーヒーを作ったとしても、目指すアイスコーヒーとはなりません。そうです、最後の工程として「冷やす」ことをしなければならないのです。
実は、冷やすというひと手間においても、いろいろな難しさがあります。普通の水を冷凍庫で凍らし、それをコーヒーに入れる。確かにこれで充分に冷えますが、溶けた氷で薄まってしまいますので、あれほどこだわって作ったコーヒーの味と香りは大きく損なわれてしまいます。
ですので、コーヒー専門店では、あらかじめ別途抽出したコーヒーで作った氷を使ったり、あるいはホットコーヒーを急速に冷やす独自の装置を使うなどして対応するお店もあるのです。
たかがアイスコーヒー、されどアイスコーヒー…。
ぜひご自宅でも、こだわりの一杯をお気に入りのグラスで楽しんでみてはいかがでしょうか。
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