2012年は辰年 — 竜にまつわる故事と意匠

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のショップスタッフ三宅川が、新春にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

2012年も助走を終えて本格稼働!今年は辰年。年末年始とル・ノーブルでも竜(ドラゴン)特集を繰り広げてまいりましたが、ここでおさらいしておきましょう。

竜(龍、辰)とは

中国神話の生物。十二支の中で唯一空想上の生き物。東洋では威厳ある霊獣で麒麟・鳳凰・霊亀とともに四霊のひとつ。古来より竜は高貴の象徴とされており、皇帝のみが使う事を許された文様とされています。

辰はお目出度い印・吉兆として最高の文様で、権力の象徴でありました。そのことから皇帝の正装・十二章(しょう)の模様となり、以降皇帝のシンボルは竜となったようです。

1297年(大徳元年)、元の朝廷は5爪の竜を天子の象徴とし、一般の使用を禁じていました。これは中華思想が元にあり、皇帝の威厳を保つ役割もあったとされています。

その後唐の時代に入る頃、4本爪は貴族、3本爪は士族、2本爪は臣民にと区別したうえ、竜文様の衣装や食器などを家臣に褒美などとして授けたことからいつしか庶民にも竜文様が浸透したのです。

ただし、日本では竜の爪の数に中国ほど意味を見出しておらず、一般的には3爪で描かれていますが、京都の天龍寺にある天井画の龍や錦絵「通俗水滸伝豪傑百八之内九紋龍史進」の刺青は5本爪で描かれています。

竜は英雄、豪傑の象徴とされ、多く故事、ことわざなどにも現れています。

●画竜点睛(がりょうてんせい)南朝の梁の武帝は、仏教を厚く信仰しており、たくさんの寺を建てて、寺の装飾画は張という画家に描かせていました。しかし張が都の金陵の安楽寺に4匹の龍を描くことを命じられた際、「瞳を描くと龍が生を得て飛び出していく」、とそれらのどの龍にも瞳を書き入れませんでした。

人々は当然その言葉を信用せず、試してみよと攻め立てます。そこで張が2匹の龍だけに瞳を描き入れた途端、外では雷雲立ちこめ、雷鳴響き、雷で寺の壁が壊され、瞳を描き入れた2匹の龍が絵から飛び去っていったのです。

この故事から、「画竜点睛(睛は「ひとみ」という意味)」という四字熟語が生まれました。普段は「画竜点睛を欠く」という形で最後の仕上げがない、最後の詰めを欠くという意味で広く使われますが、わずかなことであるが、それを加えることによって物事が完成、成就することのたとえとして使用されています。

●飛竜乗雲(ひりゅうじょううん)英雄が時に乗じて、勢いを得ること。

●竜驤虎視(りゅうじょうこし)天下に権威をふるうさま。竜のようにのぼり、虎のようににらむこと。

●竜に翼(を得たる如し)もともと強い竜に翼を与えれば無敵となることから、勢いの強い者に更に威力を添えることのたとえ。

●竜の雲を得る如し竜が雲を得て天に昇るように、英雄豪傑などが機に臨んで盛んに活躍するたとえ。

●足元から竜が上がる身近なところで突然意外なことが起こること。また、急に思いついて物事をはじめることにもいう。

●竜虎相搏つ竜と虎が格闘するように、互角の力を持った強者同士が激しく争うこと。

竜の頷(あぎと)の珠を取る大きな危険を冒すことのたとえ。

2012年、吉兆の辰にあやかり、日本の皆さまが竜のようにしなやかに力強く上を向いて昇っていける1年になることを強く願います。

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。