究極美 ~モン・サン・ミッシェル

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のル・ノーブル編集部が、歴史・晩秋にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

私の「いつかは行きたい場所ベスト10」の中に、フランスの有名観光地・モン・サン・ミッシェルがあります。モン・サン・ミッシェルは 「天空の神の国」とも言われる、フランスのもっとも有名な巡礼地。

フランス北西部に位置するサン・マロ湾はヨーロッパでも潮の干満の差が最も激しい所として知られています。そこへセー川・セリューヌ川・クエノン川の3つの小さな沿岸河川が流れ込み、引き潮のときは海岸線が約20キロも後退をします。このサン・マロ湾の南東、モン・サン・ミッシェル湾の奥にモン・サン・ミッシェルがあります。

かつてこの修道院は満ち潮の時には海に浮かび、引き潮の時には自然に現れる陸橋で陸と繋がっていました。島の大きさは周囲約900メートル、最高峰は砂浜の平均高度からさらに80メートルも高くなっているのです。

この修道院の建築には面白いエピソードがあります。西暦708年、アヴェランシュという町に、ややずぼらなオヴェールという司教が住んでいました。ある晩、彼は大天使ミカエルの夢を見ます。オヴェール司教の夢枕に立った聖ミカエルは、モン・トンブ(墓の山)と呼ばれていた岩山の上に、己を祭る聖堂を立てるように彼に命じます。しかしオヴェール司教は夢のお告げを疑った為に、聖ミカエルは3度も彼の夢に現れ、ついには彼の頭蓋骨に穴をあけて、そのメッセージを理解させたとも言われています。

オヴェール司教はお告げのとおり、モントンブに、南イタリアのモンテ=ガルガーノ教会堂を複製した礼拝堂を建てます。また、彼はモンテ=カルガーノ教会堂より、聖ミカエルが置いていったとされる朱色の布の断片と聖ミカエルが現れたという大理石を持ち帰り岩の上に円形の礼拝堂を作ります。これが後にキリスト教の聖地となるモン・サン・ミッシェルの起源です。そしてこの時期に周囲の海に異変がおき、それまで陸続きであった岩山が海の中の小島となりました。しかしながら、1877年に対岸へ地続きの道路が建設されたため、潮の干満に関係なく、島へ渡れるようになってしまいます。便利になった反面、島へ潮流が流れ込むことが減少し、砂の堆積が進行したため、フランス政府では道路を取り壊し、新たに橋を架ける計画がなされています。

モン・サン・ミッシェルは時代により、修道院・要塞・監獄として多岐にわたり使用されていきます。その足跡が現在でも残されているほか、ロマネスク・ゴシック・ルネサンスなど、あるいはその過渡期的な建築様式を一度に目にすることができます。限られた面積の中に建築物が立てられた為、古い建物の上にさらに建物がのり、何層にも建築が重なっています。初期の歴史的な礼拝堂はロマネスク様式で建てられていますが、その上部に建築がなされ、現在では地下にもぐった状態になっています。礼拝堂の上には、現代でいう人工地盤が作られ、岩の上に張り出して面積を広げ、ゴシック風の修道院が作られています。

ロマネスク様式は戦乱の時代に救いを求めた巡礼者たちのための建築で、分厚い石壁に小さな窓、禁欲的なつくりとなっています。ゴシック様式は「ゴート族の」という意味を持ち、ゴート族がヨーロッパにある建物に似せて作った建築物を当時の人が呼んだことが始まりとなります。ロマネスク様式とは対照的に壁などにはさまざまな彫刻が施され、アーチ型の天井を作り、窓の面積を多くし、少しでも神のいる場所、天に近づけるような祈りをこめた様式ともいえます。

また、上にくる建物は重量面や構造面で柱を細くしたり、壁などはできるだけ軽量になっていたりと数々の工夫がなされています。ガラスにはステンドグラスが用いられこの世とは思えない異空間を作り出しています。内部には湿気対策として台所には大きな暖炉があり、煙突にも工夫がなされおり、機能美にも目が奪われます。

モン・サン・ミッシェルは長い時間をかけ、無駄のない、ぎりぎりのラインで建築がなされています。それぞれが違った時代に作られたにもかかわらず、カーブ・角度・大きさが少しでも違えば成り立たないほどの緻密な計算の上に作られています。しかしあまりにも見事すぎる為、私にはまるで、神の力が加えられているのではないかと感じるのです。

そんなモン・サン・ミッシェルはルパンⅢ世の「カリオストロの城」、天空の城ラピュタのラピュタ城のモデルでもあります。

これほどに憧れるフランス、モン・サン・ミッシェルへ私の思いは高まるばかり。私の憧れはモン・サン・ミッシェルだけにはとどまりません。フランスの歴史やモードはもちろん、デザインの美しいもの・・・

ほんの一部ではありますが、ル・ノーブルで取り扱いのある、これぞフランス!を集めてみました。

香り高いフランスをテーブルに~フランス企画へ~

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。