うすはり

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のEC運営スタッフ伊波が、グラス・春にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

うすはりグラス。最近は、テレビなどマスコミに取り上げられることも多いので、ご存知の方が多いと思います。縁から底までほぼ一定の、1ミリ足らずの厚みにつくられた空気のように軽いタンブラーやワイングラス。これ以上にないシンプルさでいて、計算し尽くされたバランスにつややかな表面。

松徳ガラスの工場は、昔ながらの工場が集まる東京墨田区、JR総武線・錦糸町駅から歩いて5分ほどのところにあります。空に向かってすくっと立つ、煙突が目印になります。

中に入ると、外観からは想像も出来ない広さと高い天井に驚きます。火を絶やすことがないという大きな窯を中心に取り囲むように職人さん達が、黙々と作業をされています。

1階には熱源装置、2階にはるつぼ(ガラスを溶かす壺)の納まる窯があります。1300度に保たれた窯で熱せられた壺の中には、水あめのように軟らかくなったガラスが溶けて、オレンジ色に光っています。職人さんはそこへ金属のパイプを挿し、くるっとひねってガラスを巻き取ります。パイプをくわえて息を吹き込み、ガラスが膨らんだら、型に入れてまた吹き、取り出してパイプから切りはずします。巻き取る量や吹くタイミング、加減、形などの作業は決められた数値に基いて行われているわけではなく、天候や気温、原料の状態など、その日、その時の状況に応じて職人さんそれぞれが判断されています。その動きは整然としていて、一切の無駄がなく、振り向く方向や手の角度、踏み出す足の歩幅まで決まっているかのようです。その間約1分。吹く人ばかりではなく、口を切る・磨く・焼いてなめらかにするというそれぞれの工程に、その道一筋の職人さんがいて、各工程で歪みや線がないか、同じ明るさか、重さは?と厳しくチェックがされます。ただ、チェックのための動作がとまることは無く、光り方、持った感触、さわった時の抵抗感などを流れの中で感じ取り、少しでも不安があれば、箱に入れられ、砕いて再び原料となります。極めて高度な職人技に、ただただ魅せられます。

うすはりははじめ、料亭向けの一口ビールとして、小さなサイズのみ作られていました。その後注目をあび、今ではつくってもつくっても、在庫がたまらない状態だそうです。

そんなうすはりグラスとル・ノーブルとの出会いは、4年前。たくさんのアイテムをご紹介させていただいてます。機械では不可能な人間の手によってのみ作り出せる薄いガラスの繊細な美しさ。松徳ガラスさんの良心的な価格設定には驚かされます。

ガラスの器は、薄いからといって割れやすいものではなく、原料の成分や成形・除冷の過程で歪みが出来るか否かで変わってくるので、この薄さでも安心してお使いいただけます。

アメリカのニュースでも取り上げられた松徳硝子の「大吟醸」。

うすはりグラスと並んで、有名なのが「e-glass」。蛍光管をリサイクルしたシリーズで、「第一回伝統的工芸品チャレンジ大賞」で大賞・都知事賞を受賞。グラスとしては、日本発のエコマーク商品に認定されています。

職人と呼ばれる人たちによる手仕事は、年々減り続けているといわれています。生産効率やコスト、技術の継承など問題はたくさんありますが、最近では「しっかりとした物選び」をする人が増えているのも事実。毎日のように使う道具に求められる信頼性、そして美しさがこのグラスにはしっかりと見えるように思います。

※ ご覧の時期によって価格等ご案内の情報が異なる場合がございます。最新の情報は各店舗にてご確認ください。

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。