出合いのひと品

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のル・ノーブル編集部が、ラリック・グラス・サステナブルにまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

先日、本屋に立ち寄り、思わず引き寄せられてしまった本がありました。「47都道府県 女ひとりで行ってみよう」読んでいて、以前ガラスの美術館を見て回ろうと、日帰りや1泊などで出かけて行ったことを思い出しました。

「伊豆ガラスと工芸美術館」へ行ったときは、大好きなラリック・ガレ・ドームの作品を堪能する事が出来ました。旅の記念に初の琉球ガラスを購入。おおらかで表情豊かなデザインの水差しも欲しかったのですが、そのときはシンプルな澄んだ海のようなブルーの器を購入しました。

琉球ガラスの始まりを調べてみたところ、第二次世界大戦後、アメリカの軍用施設から大量に出るコーラやジュースの空き瓶をリサイクルして、色付きグラスやコップなどに作り変えたのが、始まりだそうです。特徴はガラスに入っている泡。これは、原料のガラスに炭化水素ナトリウムを入れ、細かな気泡を生じさせています。独特の鮮やかな色ガラスに、小さな泡が入ることによって表情が変わります。動きのあるデザインのものは、見ていてどきどきします。

余談になりますが、南にはかの有名な薩摩切子があります。現在放映中のNHK大河ドラマでもよく登場する薩摩の切子。まさにあの時代の当主であった島津斉彬の治世に最盛期を迎えたガラスです。

残念ながら、南のグラスは取り扱いが今のところありませんが、ル・ノーブルでは、日本の江戸切子をはじめイタリアのヴェネチアガラスをご覧頂けます。

この道45年の名切子職人 根本幸雄氏。東京伝統工芸士の第一号で、江戸切子のパイオニア的存在です。繊細な技法でガラスに魂を刻み続け、現在は息子さんと数名の弟子と共に日々制作に取り組んでいます。非常に完成度の高いものばかりで、光を浴びると万華鏡のような世界が広がります。

ところ変わってヴェネチア・ムラノ島で、1440年創業以来、伝統的なヴェネチアガラス技法を守り続けている老舗工房「バラリン」。現在15代目マエストロ、ジュリアーノ・バラリン氏率いるこの工房では、色彩豊かなオリジナルのカンナ(レース棒)から、繊細で華麗なレースガラスを作り上げています。規則正しく並んだレース柄は、溜息が出そうなほど美しいです。

そして、ミレフィオーリ技法で作られた、エルコーレモレッティもおすすめです。1911年以来、古いミレフィオーリの技術を研究しながら、流行の変化に合わせた様々なヴェネチアガラスを制作しています。ミレフィオーリ(千の花)とは、断面に星や花の模様が表れているガラスの小片を、組み合わせて作られたもののことです。

どれも「記念の」「出合いの」ひと品にぴったりです。

人と人とのめぐり合わせがあるように、モノとのめぐり合わせを感じたことが誰でも一度はあると思います。一目みた瞬間に、「あっ」と感じて惹きつけられる、そんな感覚を味わったことはないでしょうか。

数年前に買い付けでイタリアに行き、バラリン工房を訪れました。目の前であっという間に生み出される素晴らしい作品の数々、そしてショールームに並ぶ多くのアイテムに感動しました。その中で、これ!と思う作品をみつけたことを覚えています。バラリンの作品は、どれ一つとして同じものは存在しません。ということは、そのショールームで出会ったアイテムとは紛れもなく一期一会で、二度と巡り合うことはないということなのです。モノとのめぐり合わせは、ご縁です。その気持ちを忘れずに大切にしたいと思います。

お客様にとっての「ひと品」のお手伝いができれば、と思います。

※ ご覧の時期によって価格等ご案内の情報が異なる場合がございます。最新の情報は各店舗にてご確認ください。

ABOUTこの記事をかいた人

「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。