この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のショップスタッフ・高松が、マイセン・鍋・夏にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
先日、藍染めの浴衣を着ている人を見かけました。最近では、色彩豊かなだけではなく、斬新なデザインも多い中、藍染めの浴衣は新鮮で「粋」でした!!洋食器でもやっぱり青は不動の人気色です。そこで、今日は日本の伝統色でもある「藍=ブルー」についてお話してみたいと思います。
≪中国が生んだブルー≫
窯(かま)の中に空気を十分に送り込む方法を酸化焼成といい、空気の供給を制限する方法を還元焼成といいます。青磁は還元焼成によって発色させたものですが、一定の青色を保つのは難しく、酸化焼成の場合は黄褐色に変じます。青磁は幽玄な色合いが魅力ですが、絵模様がないので単調です。カラフルな唐三彩(とうさんさい)もつくられましたが、これも複数の色の釉薬をかけただけです。
半透明のガラス質の磁器に、細密な青色の絵付(えつけ)をほどこす画期的な技法は、14世紀中国で確立されました。これを青花(せいか。日本では染付[そめつけ])といいます。
素焼きした作品に呉須(ごす)と呼ばれる顔料で下絵付(したえつけ)をして、透明な釉薬をかけ焼き上げると、鮮やかな青色の絵模様となって現れます。当時、このような磁器は中国でしか生産できず、ヨーロッパに輸出されるや熱狂的なチャイナ(磁器)ブームが巻き起こりました。
中国陶磁器の中でも貴重な伝統芸術である青花磁器は、景徳鎮の先がけとも言える染付け磁器です。
≪日本が広めたブルー≫
豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、多くの藩が陶工を日本へと連れ帰りました。肥前国鍋島藩主・鍋島直茂が連れ帰った、その中の一人が李参平(りさんぺい)。彼は1616年(1604年説あり)に有田の泉山で白磁鉱を発見し、そこに天狗谷窯を開き日本初の白磁を焼いた有田焼の祖と言われていますが、一説には、1610年代前半から、西部の天神森、小溝窯で磁器製造が始まっていたことが明かになっています。この頃の有田では当時日本に輸入されていた、中国・景徳鎮の磁器の作風に影響を受けた染付磁器(藍九谷)を作っていました。「染付」は中国の「青花」と同義で、白地に藍色一色で図柄を表わした磁器です。
17世紀後半に初代酒井田柿右衛門が発明した、いわゆる柿右衛門様式の磁器は、濁手(にごしで)と呼ばれる乳白色の生地に、上品な赤を主調とし、余白を生かした絵画的な文様を描いたものです。
1656年、海禁令が出され中国では明から清への交替期の、磁器の輸出が停止となります。このような情勢を背景に日本製の磁器が注目され、1647年には中国商人によってカンボジアに伊万里磁器が輸出され、その後、1659年より大量に中東やヨーロッパへ輸出されるようになりました。
≪マイセンブルーの人気≫
呉須(ごす)による青色の発色がコバルトに起因することは、16世紀半ばに発見されました。ドイツ東部でコバルト鉱石が掘り出され、これをガラス製造職人が、試しにガラスに混ぜてみたところ、みごとな青色ガラスになったことがきっかけです。こうして謎の顔料であった呉須は、コバルト鉱石から化学的に製造できるようになりました。また、磁器の製法も粒々辛苦の末、18世紀初頭にドイツの「マイセン」で開発され、以後、ヨーロッパ各国にも広がりました。
ザクセン候とポーランド国王を兼ねていたアウグスト1世(1670-1733)が、東洋の磁器を好み収集していました。1709年ドイツ人べドガーが、3年かけて白い磁器を完成。
1720年にウイーンから画家のヘロルトが招かれ、鮮やかで深い色調の赤、紫、茶、緑、黄、青を用いた色絵付けが始まりました。ヘロルトは中国風の建物や人物を中心としたシノワズリ調(ヨーロッパから見た東洋。それにロココ、バロック、ゴシックというヨーロッパの様式を混ぜ合わせたもの)の図柄に金彩を加えた豪華な作品を作りました。 1725年頃からは形も文様も忠実に日本の柿右衛門を写し作ります。1730年代には銅版画を写した草花や昆虫などを丁寧に描くようになります。
コバルトで絵付けをする技法が完成し、中国の青花磁器を真似、1730年には「ブルーオニオン」が発表。中国・景徳鎮窯の青花の皿に描かれていたザクロの文様を、ザクロを見たことがない絵付師が間違えて玉ねぎを描いた)が大量に生産されました。現在でも不動のロングセラーです。
*ちなみに絵具や印刷インクなどに使われるプルシアンブルー(紺青[こんじょう])も、同じころドイツで発明されました。青色顔料は陶磁器ばかりでなく、近代化学の発達にも貢献したのです。
「特別展 西洋の青」-プルシアンブルーをめぐって-
場所:神戸市立博物館開催期間:7月21日~9月2日
江戸時代に日本にもたらされた「西洋の青」である、「プルシアンブルー」を使った日本の作品と日本の伝統的な「青色」を使った作品を比べ、「西洋の青」が、どのように受け入れられたのかを見ていくとともに、関連するさまざまな作品を展示します。
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