イタリアでの珈琲とワイン

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のバイヤー米山が、グラス・ティータイム・重陽にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

秋といえば食欲の秋。季節の食材が色とりどり、食欲も増していきます。食べ物と切ってもきりはなせないもの、それは「飲み物」。食事のときに飲むものは人それぞれですが、今からの季節はコーヒーやワインがさらにおいしくなる季節。この2大飲み物が盛んな国といえば、イタリア。彼らにとってはどちらも日々の生活に密着した飲み物です。

【コーヒー】イタリアの代表的な飲み物のひとつはもちろん「il caffee(コーヒー)」。コーヒーと一口に言ってもその種類はさまざま。日本で通常飲んでいるコーヒーを飲みたくて現地で「コーヒー」と頼むとエスプレッソのようなコーヒーが出てきますので要注意です。日本のコーヒーが飲みたいときには「caffee lungo(直訳すると長いコーヒーなのですが)」と頼むと出てきます。イタリアの人はとにかくコーヒーをよく飲みます。そして必ず行き着けのバール(Bar)を一つもっています。平日の朝、人気のバールは出勤前の人で活気にあふれ、バリスタたちのきびきびとした動きの中、会話が飛び交い騒然としています。

バールは立ち飲み方式。(イタリアへ行かれた方はご存知でしょうが、立ち飲みと座るのとでは値段が異なります)コーヒーとブリオッシュを頼んで、5分ほどで済ませて立ち去る人がほとんど。一般的に「イタリア人はあまり働かない」といわれていますが、バリスタたちの機敏な無駄のない動きを見ているとその通説とはまったく無関係であることがよくわかります。ここ数年イタリアで人気のコーヒーは「Caffe D’orzo」という麦芽を使ったコーヒー。体にもいいことから女性にも人気だそうです。(ちなみに、イタリアではスターバックスなどアメリカ系列のコーヒーチェーン店はありません。これも地元のバールをこよなく愛するイタリアの風土でしょうか)

イタリアの一般家庭に必ず一台あるのが「モカエキスプレス」です。日本ではどちらかというと全自動のコーヒーメーカーやペーパードリップなどが主流なのであまりなじみがないかもしれませんが、2室構造になっていて、下部のフラスコの湯が沸騰して粉を詰めたバスケットを通過し、上部のポットに噴きあがる、という仕組みのものです(メーカーではBialetti社が有名です)。メルカート(市場)で安いものなら2ユーロほどで手に入るため気軽に購入することができます。コーヒーの粉の詰める分量で味は変わっていくのですが、直火にかけるためかできあがったコーヒーの香りはコーヒーメーカーなどとは比べ物にならないほど際立っています。

*余談になってしまいますが10月1日は「コーヒーの日」です。これはブラジルのコーヒー豆の収穫が9月にだいたい終了し、10月から新しい「コーヒー年度」に入ることと、日本でのコーヒーの消費量が秋冬季に増えることから、それに先立つ日として1983年に全日本コーヒー協会が10月1日を「コーヒーの日」として定めました。(おススメのコーヒー関連アイテムは下記のアドレスからごらんいただけます)

【ワイン】「とりあえず生ビール!」日本でお店に入るとだいたいの人がそう言うでしょう。でもイタリアではちょっと違います。イタリアといえばやっぱりワイン。フランスのワインがまだまだ日本では主流ですが、実はイタリアワインは世界の20%のワインを生産している生産量世界一のワイン大国です。(ちなみにイタリアのビールはあまり冷えていないので、日本のようなキンキンに冷えたビールを想像されて頼んだらがっかりするかもしれません)

イタリアでは、昼も夜も関係なく食事の時にはワインを飲みます。毎日飲むので特にいいワインを買っておく必要はありません。うれしいことに、あちらのワインは安くてもおいしいのです。スーパーなどでは週替わりでセール商品がありますが「Sconto(ディスカウント)」と書かれたワインは安い時には2ユーロほどから売られています。たった300円ほどのワインが驚くほどおいしいのです。リストランテで頼む「Vino Della Casa(ハウスワイン)」も、だいたいのところではずれはありません。日本では赤ワインを頼むと、キンキンに冷えたワインが出されることがありますが、イタリアでは冷えたワインを出された覚えがあまりありません。保存にしても、家庭なら2,3日でも常温に置いていました(赤ワインは冷やしてしまうと独特の渋みがより強く感じられる場合があるようです)。

冷やして飲むのは、スプマンテと白ワイン。スプマンテはイタリア版のシャンパンです。細長いフルート型のグラスに立ち上る無数の泡。シュワシュワっという音を立てて生まれる泡には、味わいが大きく影響しています。きめの細かい泡が長く持続するスプマンテは、非常に口当たりが滑らかでクリーミー。大きな泡であれば強い発泡性があるということです。ホームパーティーのスタートは必ずスプマンテ(それも必ずプロセッコ)だったことを思いだしました。

グラスのテイストも、家庭によってさまざまですが、私の知り合いの家では用途に合わせて買い揃えていました。カジュアルに使うものなら特にいいものをそろえる必要はありません。ワイングラスの基本は、無色透明で材質が厚すぎないこと。色を十分に鑑賞するためにガラスの色や装飾というのはかえって邪魔になってしまいます。また材質が厚いと唇の感触があまりよくありません。一つのグラスで兼用するなら、縁が内側にカーブしているチューリップ型のグラスを選ぶのがおススメ。これだと、グラスの中にワインの香りがこもりやすいので香りを十分に楽しむことができます。白ワイン用のチューリップ型グラスは赤ワイン用より小ぶりに作られています。なぜかといいますと、冷やす事のおおい白ワインは飲んでいるうちに温度が上がる可能性があるので、上昇しないように容量を小さくしているのです。シャンパンのグラスは細長い形にできていますが、これは泡がグラスの底から上がっていく様子を楽しむためもあるようです。

【おしまいに】もともと外来文化であったコーヒーやワインは、嗜好の発展とともに私たちにとって日常的な飲み物となり、気軽に楽しめるようになりました。さまざまな種類の飲み物が手に入ります。しかしまだまだ文化としては西欧に比べて若く、知られていないことがたくさんあると思います。食事のシーンで欠かせなかったり、日々の忙しい中でゆったりとした時間を過ごす手助けをしてくれる飲み物。味覚を楽しむだけのものではなく心を癒してくれるものでもあります。イタリアの人たちを見ていると、楽しみ方を本当によく知っていると感じます。自分なりに飲み物を楽しみ、ひと時をすごす、それが飲み物本来の持つ意味合いなのかもしれません。

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。