この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のバイヤー・米山が、マイセン・夏にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。
ご存知のように京都は自然に囲まれた街です。季節ごとの行事もたくさんあり、自然は常に京の人と一緒に生きてきました。夏の京都といえば、皆さんは何を想像されますか。
さっそくですが、京都にどれくらいの量の地下水が流れているかご存知でですか?地下に存在する地下水の量は211億トンといわれており、これはなんとあの琵琶湖の貯水量である約275億トンに匹敵する数値だと言われています。
北東に鴨川、東に白川、西に桂川の3つの川と明治時代に建設された琵琶湖から水を引いてくる琵琶湖疏水は最終的には全て淀川へと流れ込むようになっています。今でも京都には無尽蔵に地下水が存し、至る所で名水が湧き出しています。(豊かな水資源を持つ京都で、2003年には重大な水問題を世界規模で討議する「世界水フォーラム第三回」が開催されました。くわしくは京都府のHPからどうぞhttp://www.pref.kyoto.jp/wwf3-kyoto/contents03.html)
京の人は夏をすごすために色々な知恵を持っています。町屋での打ち水などもそうですが、私が想像するに、昔は現代より粋で贅沢な過し方をして、自然とのうまい付き合い方をよく知っていたような気がします。
京都で有名な錦市場。今でも京の台所として様々な店が軒を連ねています。昔の文献によると街の中心部にあたるこの場所に清冷な地下水が湧き出るので貯蔵庫として魚鳥の市場ができたとあります。京都盆地の気候から見ても魚、肉が保存できるわけがなく、ひとえにその地下水のおかげであったといわれています。冷蔵庫のなかった時代に、人々はさまざまな工夫を凝らして生活をしていたのでしょうね。
京都の年中行事のなかの食文化などにも、「水」は浸透しています。豊かな水が京野菜や豆腐、湯葉を作り出し、茶道、華道の家元を生み、歌舞伎をはじめとする芸能を生み出してきました。水というのは私達の生活の糧を豊かにしてくれるだけではなく、芸術や文化の発展にも大きな役割を果たしてきたのですね。
「水」が芸術や伝統工芸の発展に結びついている、というのはなにも日本に限ったことではなく、ヨーロッパなど世界の陶磁器やガラスの世界でも大きく貢献したのではないか、と思えてくるのです。例えばマイセンのあの澄み渡るような美しい白磁は、マイセンの街を流れるエルベ川の豊かな水が、製造の過程においても運搬においても一役買ったでしょう。後に世界最高といわれる名窯を生み出すのに「水」は必要不可欠だったのではないでしょうか。
また「水の都」と呼ばれるイタリアのヴェネツィアでも、ヴェネチアガラスが中世から大きな発展を遂げました。水のような流線美をもつヴェネチアガラスは豊かな水の都市で生み出され、後のヨーロッパのガラス文化の発展に大きな役割を果たしました。きっと「水」の果たした役割は大きかったはずです。
せっかくなのでヴェネチアでも屈指のガラス工房と呼ばれる2つの工房をご紹介したいと思います。この工房は私が心からおススメしたい作品を作り出しています。実際にヴェネチアを訪れ、その職人さんたちの人柄や作品のすばらしさに触れ、皆さんにぜひヴェネチアグラスのすばらしさを知っていただきたいと思います。手間ひまかけて生み出される作品に触れてみてください。↓ ↓ ↓美しいミルフィオーリ(千の花)を咲かせる工房『エルコーレ・モレッティ』
14世紀から続く門外不出のヴェネチアンレースガラスを紡ぎだす『バラリン工房』↓ ↓ ↓
水の美しさはともかくとして、豊かな水資源を持つ街は芸術や伝統産業などが他と比べて発展しているような気がします。
話しがちょっとそれてしまいましたが、京都に戻しましょう。京都には「名水」と呼ばれる水がたくさん存在します。余談にはなりますが、いくつか京都の名水をご紹介しておきましょう。
貴船神社には「神水」と呼ばれる水があります。本宮の社殿前の石垣からはこんこんと水が湧き出ており別名「日本のルルドの泉」と呼ばれています。「ルルドの泉」とはそこの水を飲用し、沐浴すると病気が治ることで知られる、フランス南部の聖なる泉のことです。
また京都御苑の東にある梨の木神社は、1885年(明治18年)創建で、明治維新に功績があった三条実万(さねつむ)、実美(さねとみ)親子が祭神です。萩の名所としても有名で参道や境内に萩が咲き乱れる毎年9月の第三土曜と日曜日に「萩まつり」が催されます。来月になれば
いかがでしょう。(京都府観光丁のHPより名水の場所をチェックすることができますhttp://www.kyoto-kankou.or.jp/ssd_kyoto/frame4.html)
名水というと私達は「おいしい水」「味」を連想しがちですが、名水はおいしいか、まずいかということではなく、「名のある水」、「物語のある水」「謂われ」のことをいうのではないでしょうか。たとえば「深草少将の水」というのがありますが、そこは小野小町に通い続けた貴人が亡くなられた所にある井戸とされています。また、刀鍛冶に使われた吉水(よしみず)という名水もあります。京都に名水が多いというのは、いろいろな水の「使われ方」が存在し、「謂われ」がたくさんあるということの証しなのです。時代、時代に応じて、物語があり、それが名水を生み出す、これはなにも水に限ったことではなく全ての芸術に当てはまることでもあります。陶磁器にもまだまだ知られていないたくさんの「ストーリー(物語)」があります。その物語に耳を傾け、少しでも多くのことを知る、それが本当にものの良さを知る、ということなのではないでしょうか。そしてその物語が人々の心に浸透していき、名窯と呼ばれるようになっていくのだと思います。
夏は暑く冬は寒い、といわれている京都の風土。お世辞にも決して住みやすい土地ではないでしょう。しかし恵まれた地下水をしっかり利用して産業、文化、生活と発展させてきた。悪条件を克服する知恵を持ち、自然をよく知ってうまく利用してきたからこそ、1200年もの間この町が続いているのではないでしょうか。
<おしまいに>本日8月16日は五山の送り火が行われます。一般的には「大文字焼き」の呼び名のほうが知られているかもしれません。お盆に行われる京都の伝統行事で、京都を囲む5つの山にそれぞれ「大文字」「左大文字」「船形」「鳥居形」「妙法」の形に火をともすというものです。五つの山に5種類の送り火を焚くところから「五山の送り火」と呼ばれるようになりました。
(この送り火の見所はこのアドレスからチェックできます。時間のある方はぜひ夏の風物詩に触れてみてはいかがでしょうか。)↓ ↓ ↓http://www.kyoto-np.co.jp/kp/koto/gozan/04.html
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