千利休のお話

この記事はに配信されたメールマガジン「ティータイム通信」コラムの復刻版です。当時のクリエイティブ担当が、和・重陽にまつわるエッセイを綴りました。
※役職は配信当時のもので、現在は変更または退職している場合があります。

茶道の大成者「千利休(1522-1591)」が茶道のあり方について教えた言葉に「和敬清寂」と「利休七則」があります。

■和 敬 清 寂「和敬清寂」とは、「お互い仲良く敬いあい、見た目だけでなく心も清らかに、何事にも動じない心を持ちなさい」という意味だそうです。また別の解説では、「和」「敬」は「主客相互の心得」であり、「清」「寂」は「茶庭や茶室に関連する心得」としているものもあります。

これはある日、利休が「茶の湯とはどのようなものなのですか?」と弟子の一人に尋ねられた時に答えた内容です。

一、茶は服のよきように点(た)て二、炭は湯の沸くように置き三、花は野にあるように四、夏は涼しく冬暖かに五、刻限は早めに六、降らずとも傘の用意七、相客に心せよ

この内容を聞いた弟子は、「その程度のことなら存じております」と言いました。千利休は、「もしそれが十分にできたなら、私はあなたの弟子となりましょう」と答えたと伝えられています。

一、茶は服のよきように点て「服」は飲むことを意味し、「服のよきよう」とは、飲んだ人にとって「調度良い加減」という意味だそうです。時と場所と客の気持ちを察してよく考えて点てるようにということ。

二、炭は湯の沸くように置きここでは、単に湯が早く沸騰するような炭の置き方を言っているのではなく、準備の重要性を説いているとのこと。そこで「準備・段取りは、要となるツボを押さえて。」と解釈される方もおられます。

三、花は野にあるようにここでのポイントは、「あるままに」ではなく「あるように」ということだそうです。決して咲いていた状態を再現することを望んでいるわけではなくその本質を、簡潔に指し示すということ。

四、夏は涼しく冬暖かに夏は涼しさを感ずる物をそろえ、冬は暖かくする。これは相手を思いやり、もてなす心を表わしています。相手を想う心でもてなす、ということでしょうか。

五、刻限は早めにどのような時にでも、常に先を見越しておけば、その分、心に余裕も生れ、より丁寧に人に接することもできます。「ゆとりは自らの心掛けによって。」と解釈される方もおられます。

六、降らずとも傘の用意備えを怠らない心掛けを説いてます。そしてこれは、他の人に「憂い」を持たせないための備えです。

七、相客に心せよ「相客(あいきゃく)」は同席した客の意、「心せよ」とは気を配りなさいということ。亭主と客、または客どうしがお互いに相手を尊重し、理解することを意味します。

以上が、「和敬清寂」と「利休七則」でした。

今回、ティータイム通信のために調べたわけですが、不思議といろいろ調べるにつけ心が落ち着いてきたことを感じました。小学生の頃、無理やり母親に連れられて茶道を習っていたことはあったのですが、また何らかの形で楽しんでみたいとも思いました。

それでは最後に、岡倉天心の「茶の本」から印象的な話を引用させていただきます。

茶人達のいだいていた、「清潔」という考えを、よく説明している利休についての話がある。利休はその子、紹安(じょうあん)が路地を掃除し、水をまくのを見ていた。紹安が掃除を終えた時、利休は「まだ十分ではない。」と言ってもう一度しなおすように命じた。いやいやながら一時間もかかって息子は父に向かって言った。「お父さん、もう何もすることはありません。庭石は三度洗い、石灯籠や庭木にはよく水をまき、苔は生き生きとした緑色に輝いています。地面には小枝一本も木の葉一枚もありません。」「ばか者、路地の掃除はそんな風にするものではない。」と言って茶人はしかった。こう言って利休は庭におり立ち、一樹を揺すって、庭一面に秋の錦を片々と黄金、紅の木の葉を散り敷かせた。利休の求めたものは清潔のみではなくて、美と自然とであった。

お読みいただき誠にありがとうございました。

京都国立博物館(京都市東山区)にて特別展覧会「日本人と茶-その歴史・その美意識-」が開催中です。内容:1200年にわたる日本の喫茶文化を各時代を特徴づける茶道具や絵画・書などによって概観する展示。期間:9月7日(土)~ 10月14日(月)会場:京都国立博物館本館(京都市東山区)

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「器の愉しさを、もっと身近に」という想いを胸に、代々のスタッフがバトンを繋いできた食卓のエッセイ集です。ある時は 古典文学に想いを馳せ、ある時はイースターの食卓を飾り付ける。京都発、器が大好きな私たちの、ちょっとマニアックで愛おしい「器と文化愛」が詰まったコラムたち。数十年にわたり、メールマガジンを通じて数万人の器ファンに届けられたコラムを復刻しています。