18世紀になって初めて東洋のものを模倣してつくられるようになったヨーロッパの陶磁器。ドイツ・ドレスデンの「マイセン」、オーストリア・ウィーンの「アウガルテン」に続き、ヨーロッパで3番目の陶磁器として、1735年にフィレンツェのカルロ・ジノリ公爵によって生み出されました。当時、フィレンツェの実質的な支配者であったメディチ家に献上されたジノリの陶器には、フィレンツェを代表するドゥオーモで有名なサンタ・マリア・デルフィオーレ教会の刻印がされていたことからも、ジノリがいかに権力者から珍重されていたかを伺うことが出来ます。
1735年から1757年のジノリ第一期には創始者の指揮のもと、あの有名な「グランデューカ」や「レッドコック」などがデザインされました。この時期、陶器は食器というよりむしろ装飾品として使用されており、メディチ家最後の直系アンナ・マリア・ルイーザに献上されたゴブレットもこの頃の代表的なものです。
実用的な食器への移行時期であったジノリ第二・第三期は、ジノリ公爵が確立した伝統的な職人芸と独特の色を忠実に継承し、ナポレオンの妻マリー・ルイーズや、神聖ローマ皇帝フランツ2世、エジプト総督などをはじめとする多くの皇族たちに愛好されました。
ナポレオン戦争後の1861年にはイタリア新君主制が制定され、ジノリは皇室御用達業者として芸術的で華麗な食器を数多く製造しました。1896年、事業拡張のためジュリオ・リチャードのミラノ工場と合併し、現在のブランド名「リチャード・ジノリ」が誕生しました。
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