アール・デコとは、1925年にパリで開かれた万国博覧会の正式名「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(Exposition Internationale des Arts Decoratifs et Industriels modernes)」の略称にちなんでつけられたスタイルであり、1920年代に確立した電気照明、自動車、高層ビルといった機械技術文明、映画、ラジオといった新しい娯楽などのモダン都市のライフ・スタイルの感性をを表現していました。
アール・デコは、はじめはフランス的な趣味のスタイルでした。フランスに憧れていたアメリカはフランスから絵画、家具などの芸術品を輸入しており、アール・デコ陶磁の収集もブームでした。
このアール・デコデザインに目をつけたノリタケ・ジャパンは英国人のアート・ディレクターを雇い、最新のアール・デコデザインを作り上げました。ニューヨークで考案されたデザインは日本に送られ、日本の職人が絵付けをしてそれから、アメリカに輸入されました。ノリタケの陶磁器は比較的安価でありながら、高品質であり、多様なデザインを広範囲なアメリカの大衆に届けることができたのです。
その後1929年の世界恐慌によって不況の1930年代に入ると、華やかな時代は過ぎ去り、ノリタケもこのアール・デコの大量生産のラインを諦め、ディナーセットが中心の高級なラインに転換していきました。優秀な技術を持っていた日本は、安くて美しく丈夫で安い磁器を作ることができ、アメリカの市場に流れ込みました。ノリタケの影響により、モダンな焼きものの魅力に目覚めさせられたアメリカは、1930年代にオリジナルのアール・デコを作り出すまでに成長していくこととなりました。
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