ジュエリーが富の象徴であった時代に、日常を豊かにする芸術品として時代を先駆けた新しいスタイルで一世を風靡したスカンジナビアン・ラグジュアリーライフスタイルブランド「ジョージ ジェンセン」をご紹介します。

銀細工師・ジョージ ジェンセンが、1904年にコペンハーゲン市内のブレドゲート36番に小さな工房を開いてから100年余り、「GEORG JENSEN（ジョージ ジェンセン）」は世界的な企業へと成長しました。この間にジョージ ジェンセンが創り出してきた作品は膨大な数にのぼりますが、ジョージ ジェンセンは単に製造業者として事業を展開してきたわけではなく、時代の最先端を行くアーティスト、建築家、デザイナー、美術工芸家などとの長年にわたるコラボレーションを通じ、斬新な造形表現を追求するなど、今日に至るまで時代とともに歩んできました。

デザイナーのアラン・シャーフ(Allan Scharff)は、1967年にジョージ ジェンセンで銀加工の修行を終え、1988年に同工房に参加して以来、数多くの独創的なホロウェア（ホームアイテム）をデザインしてきました。彼の作品は、大自然から得た着想が中心であり、それは次の言葉にも表れています。

自然が最もインスピレーションを与えてくれるということに、創設者ジョージ ジェンセンも異論を唱えることはないでしょう。しかし何よりもアラン・シャーフの関心を惹いたのは“鳥”でした。このことは、1990年に発表されたベースにも見受けられます。この作品は“ジョージ ジェンセン”がこれまで送り出したベースの中でも、群を抜いた美しさで、その清楚で簡潔なラインと装飾の完全なる排除は卓越した作品となり、珠玉の逸品の一つに数えられます。
彼が僅かなラインを用いて、その華麗に伸びた首と長いくちばしによって描かれたものがトキ(Ibis)であることに誰も疑念を抱くことはないでしょう。

デザインを担当したヴィヴィアンナ・トールンは幼少期を振り返り、次のように語っています。

この体験がトールンに、1989年に「マイフェイバリットスプーン」という銀のスプーンをデザインさせるきっかけを与えました。このスプーンはハンドルが途中で後ろに曲げられており、机から取り上げやすいようになっており、彼女が1997年に発表した「ヴィヴィアンナ」は、この「マイフェイバリットスプーン」をさらに発展させた作品と言えます。有機的な形のハンドルは、美しく柔らかな弧を描いて上へと曲がり、テーブルに置くとカトラリーの両端の一点で支えられ、グリップはその端を除くとテーブルに接しないようになっています。
また、もう一つの特徴はナイフにあります。他のナイフと違って、刃に90度のひねりが加えられており、刃を立ててナイフを置くことができます。長年にわたり試作品を作り続けたトールンは、「人々が日々使用し、手の美しい延長とも言えるカトラリーにふさわしいラインやバランスを求めて、試行錯誤を繰り返した。」と語っています。

ジョージ ジェンセンは一部の限られた人ではなく、多くの人々に向けた作品を制作するという考えに基づいて仕事をしてきました。彼は貴族趣味の宝飾芸術を作ることには興味がなく、過度な装飾は用いませんでした。彼の基本的な理念は100年を超えた今も厳密に守られており、それは高度な製作技術と高品質の素材を用いて、実用性と美の融合を作り出すということにほかなりません。
また、「躍動感」もジョージ ジェンセンの作品を特徴づけるものの一つです。ジョージジェンセンは、大自然をフォルム作成の出発点とし、花、動物などにインスピレーションを受け、躍動感が重要な役割を果たす有機的な表現スタイルに辿りつきました。同時に、「簡潔さ」という概念もキーワードになります。この概念は表現形式の一つと言えますが、今や100年以上にわたり高品質の商品を世に送り続けている企業の基本的な価値観をも表しています。

ジョージ ジェンセンの商品を買うということは、単に作品を入手することにとどまらず、創始者ジョージ ジェンセンにまつわる物語や歴史も同時に手にすることを意味しています。そしてその物語の礎となっているのは、これまで創られてきた作品だということです。独創的で時代を超越したこれらの作品は、語られるべき歴史と、受け継がれるべき遺産を持ち合わせており、ジョージ ジェンセンの歴史やその価値を人々に語り伝えています。