ガラスの歴史 ― 5000年をかけて、透きとおるまで ―
ガラスの歴史は、およそ5000年前にまでさかのぼります。生まれたときは宝石のように高価な色ガラスでした。エジプトやメソポタミアのガラス玉から、ローマの吹きガラス、ベネチアの装飾、そして無色透明なクリスタルへ。文化と時代とともに姿を変えてきた、ガラスの歩みをたどります。
まず、5000年をひとことで
― 「ガラスとは」、そして「昔の名前」 ―
ガラスとは
Glass
ガラスとは、珪砂(けいしゃ)などを高温で溶かして冷やし固めた、透明で硬い素材。起源はおよそ5000年前、エジプトやメソポタミアにさかのぼるとされ、最初は宝石と同じくらい高価な不透明の色ガラスでした。透明なガラスが生まれるのは、ずっとあとのことです。うつわとしてのガラスは、吹きガラスの発明で大きく花開きました。
ガラスの、昔の名前
Ruri / Hari
日本では古くガラスを瑠璃(るり)や玻璃(はり)と呼びました。仏教で七宝に数えられた美しい素材で、正倉院に伝わる白瑠璃碗(はくるりのわん)もそのひとつ。江戸時代には、ポルトガル語由来のびいどろ、オランダ語(またはポルトガル語)でダイヤモンドを意味する語に由来するぎやまんとも呼ばれ、南蛮渡来の珍しい品として親しまれました。
ガラス5000年の年表
― 起源から、現代の大量生産まで ―
3千年紀
半ばごろ
ガラスの起源
メソポタミアやエジプト、シリアのあたりで、世界最古のガラスが生まれたとされています。当初はガラス玉など小さな装飾品でした。
16世紀
ガラス器のはじまり
この時代のガラスは不透明な色ガラス。エジプトやメソポタミアで作られ、その技術は珍重され宝石と同じくらい高価に扱われました。
4~3世紀
ごろ
日本への伝来
シルクロードや海路を経て、ガラスは日本へ。弥生時代(中期)の遺跡から見つかったガラス玉が、日本最古とされています。
1世紀ごろ
ガラス生産のはじまり ― 吹きガラス
シリアなど東地中海沿岸で鉄パイプによる吹きガラスが生まれ、この地域を治めていたローマ帝国全域へ広まりました。生産が飛躍的に進み、やや透明なガラスも作られたこの時代のものはローマングラスと呼ばれます。
ごろ
カット技法のはじまり ― ササングラス
ローマングラスの技法を受け継いだのがササングラス。ササン朝ペルシアで作られ、円形模様のカットが特色です。正倉院の白瑠璃碗(6世紀ごろとされる)はその一例です。
世紀ごろ
エナメル彩色 ― イスラムグラス
ササングラスの技法を引き継いだイスラムグラス。加工技法が進歩し、12世紀ごろからエナメル彩色が花開きました。
ガラス装飾の頂点 ― ベネチアンガラス
イスラムグラスの技法を受け継ぎ、イタリアのベネチアンガラスが発展。ベネチアのムラノ島(1291年に工房が集められた)で、色ガラスやエナメル彩色などの高度なガラス工芸が発展。レースグラスのような繊細な技法が確立するのは、のちの16世紀ごろです。
無色透明ガラスと、鉛クリスタル
ボヘミアではカリ分の多い原料で良質の無色透明ガラスに成功。イギリスでは酸化鉛を加えた美しい鉛クリスタルが生まれました。飲み物に合わせた様々な形のグラスが考案されたのも、このころといわれます。
自動成形機械と、大量生産
アメリカで自動成形機械が開発され、吹きガラスと大量生産の両立が可能に。ガラスは、より身近な暮らしの道具になっていきました。
技法は、こうして受け継がれた
― ローマンから、クリスタルへの一本の糸 ―
ローマングラスRoman Glass
吹きガラスの発明で生産が広がった、ローマ時代のガラス。すべての系譜の出発点です。長い年月で表面が虹色に輝く「銀化」も、ローマングラスの魅力として知られます。
ササングラスSasanian Glass
ローマの技法を受け継ぎ、ササン朝ペルシアで発展。円形のカット装飾が特色で、シルクロードを渡り正倉院の白瑠璃碗として日本にも伝わりました。
イスラムグラスIslamic Glass
ササングラスを継ぎ、エナメル彩色などの加工技法を大きく進歩させました。色と装飾の表現が、ここで豊かになります。
ベネチアンガラスVenetian Glass
イスラムの技法を受け継ぎ、ベネチアのムラノ島で工芸として結実。16世紀に確立するレースグラスをはじめ、装飾ガラスの頂点を築きました。今日の西洋ガラスの源流です。
ガラスをめぐる、素朴な疑問
― いつから? どこで? 昔の名前は? ―
ガラスは、いつからあるのですか?
起源はおよそ5000年前までさかのぼるとされます。エジプトやメソポタミアの遺跡から見つかったガラス玉が世界最古とされ、当初は宝石のように高価な色ガラスでした。うつわとしてのガラスは、ローマ時代の吹きガラスの登場から大きく広がります。
世界最古のガラスは、どこで生まれたの?
エジプト・メソポタミアとされています。日本へはシルクロードや海路を経て伝わり、弥生時代の遺跡から見つかったガラス玉が日本最古とされます。
ガラスは昔、何と呼ばれていたのですか?
日本では古く瑠璃(るり)・玻璃(はり)と呼ばれました。仏教で尊ばれた美しい素材で、正倉院の白瑠璃碗が知られます。江戸時代にはびいどろ・ぎやまんとも呼ばれ、南蛮渡来の珍品として親しまれました。
歴史のつづきを、手のなかに
― 5000年の技が、いまのグラスに宿る ―
中欧のクリスタル、フランスの鉛クリスタル、北欧の現代ガラス。長い歴史の先端にある名窯のグラスを、コレクションからお楽しみください。江戸切子のように、日本で花開いたガラス工芸もあります。
よくあるご質問
― ガラスの歴史についての、よくある疑問 ―
ガラスの歴史は、いつから始まりますか?
起源はおよそ5000年前までさかのぼるとされます。エジプトやメソポタミアの遺跡から見つかったガラス玉が世界最古とされ、当初は宝石のように高価な不透明の色ガラスでした。
ガラスの昔の名前は何ですか?
日本では古く瑠璃(るり)・玻璃(はり)と呼ばれました。江戸時代には、ポルトガル語由来のびいどろ、オランダ語(またはポルトガル語)でダイヤモンドを意味する語に由来するぎやまんとも呼ばれています。
ローマングラスとは何ですか?
ローマ時代に作られたガラスの総称です。鉄パイプによる吹きガラス成形が生まれ、生産が飛躍的に広がりました。この技法がササン朝ペルシア、イスラム、ベネチアへと受け継がれていきます。
透明なガラスは、いつできたのですか?
ローマ時代にやや透明なガラスが作られ、無色透明に近づくのは17世紀のこと。ボヘミアの無色ガラスや、イギリスで生まれた鉛クリスタルによって、澄んだガラスが実現しました。
吹きガラスは、いつ生まれましたか?
紀元前後のローマ時代とされます。鉄パイプの先に溶けたガラスをつけて息を吹き込む技法で、これによりガラス器を効率よく作れるようになりました。
この知識を、これからの器選びに
― 今日は調べものだけ、という方も ―

メンバーシップ













