アウガルテン磁器工房は1718年、ハプスブルク王朝の栄華の中のウィーンで誕生しました。アウガルテンの始まりです。1744年には、 女帝マリアテレジアによって皇室直属の磁器窯に命じられ、 その証として パプスブル皇室の楯型紋章を授かるという栄光を手にしたのです。
300年という長い年月を経てもなお受け継がれたのは、職人たちの厳しいクラフトマンシップと誇りと繊細な技の数々…。今でも製品の全てが熟練した職人によって手作りされているため、生産量は限られています。しかし優しい輝きを放つ絵柄、雪のように白い生地、しっとりとなじむシェイプは、一途なこだわりがあるからこそ守られている“アウガルテンの命”なのです。
カフェ文化で花開いたアウガルテンのコーヒーカップ
カフェの都ウィーンで最初のカフェが誕生したのは1685年のこと。1700年になると新たに4軒のカフェが誕生し、マリアテレジアの時代には48軒とその数を増やしていきます。当時のカフェは貴族たちの交流や憩いの場所であり音楽家、文士、政治家、画家などそれぞれの目的によるカフェがありました。こうしてウィーンのカフェは「文化工房」としての役割を果たすようになります。
コーヒー飲用習慣はこのカフェ文化とともに発展し、王侯貴族社会にコーヒー文化を定着させることになります。そしてそれがアウガルテンでコーヒー専用の器を作らせることになったのは、歴史の流れからみてごく自然な流れだったと言えます。
アウガルテンの磁器ができるまで
アウガルテンの白磁は、繊細かつ優雅なフォルム、しっとりと手に馴染む艶やかな生地、細部まで精巧を極めた細工などにより世界中で高い評価を得ています。伝統に培われた優れた職人の繊細な技と芸術的なデザインに、近代的な技術支援体制が加わり、アウガルテンの品質が保たれています。
アウガルテン宮殿内の磁器工房を見学に訪れた人々は、一点一点の作品の細部まで注がれた職人たちの深い愛情と、技の数々に強烈な感動を覚えるでしょう。大量生産の工場で作られる磁器とは異なり、各生産工程、即ち、練り土を混ぜることから窯焼き、絵付け、そして仕上げに至るまで全て熟練した職人の手作業でなされているからです。