Luxury Selection vol.63
ハプスブルク家の食卓
700年にわたりヨーロッパの政治と文化の中心であり続けたハプスブルク家。
女帝マリア・テレジア、フランツ・ヨーゼフ皇帝、皇妃エリザベート…
宮廷を彩った磁器の物語をご紹介します。
Luxury Selection vol.63
ハプスブルク家の食卓
700年にわたりヨーロッパの政治と文化の中心であり続けたハプスブルク家。
女帝マリア・テレジア、フランツ・ヨーゼフ皇帝、皇妃エリザベート…
宮廷を彩った磁器の物語をご紹介します。
磁器が初めてヨーロッパにもたらされたのは13世紀末のこと、イタリアの商人マルコ・ポーロが中国より持ち帰ったとされています。良質のカオリンを産する中国の景徳鎮で作られる高級磁器の存在は、すでに14世紀のヨーロッパでも良く知られていました。
17世紀になると、王侯貴族の磁器に対する関心はますます強くなり、海洋国イギリスが真っ先に「東インド会社」を設立すると、オランダ、フランス、オーストリアも続いてアジアとの交易に乗り出します。
東洋磁器への強い憧れをもっていたザクセン選帝侯アウグスト2世は、宮廷専属の錬金術師ベドガーに白磁の研究を命じ、遂に1708年ドイツのマイセンにおいて、ヨーロッパ初の白磁が誕生。技術が他国に持ち出されることを危惧してベドガーを幽閉しますが、自由を奪われた彼は酒におぼれ、37歳にして生涯を閉じました。しかし絵付け師ヘロルト、成型師ケンドラーなどによりマイセンはヨーロッパ有数の名窯として発展をとげたのでした。
同時期、ウィーンからザクセン公国に派遣された一人の宮廷武官クラウディウス・イノセンティウス・デュ・パキエーは、オーストリアにもマイセンのような磁器工房を作りたいと考えます。
マイセン工房の主任と絵付け師ヘロルトをウィーンへと連れ出し、1718年、ヨーロッパで2番目に古いウィーン磁器工房(現在のアウガルテン窯)を創設しました。
マリア・テレジアの父カール6世から25年間にわたる磁器製造の許可を取り付け、食器だけでなく燭台、花瓶、時計などの装飾品、日本の柿右衛門を模した作品など高度な磁器を創り続けました。
18世紀初めにウィーン磁器工房の熱心な支援者の一人が、対トルコ戦で活躍し、ハンガリーからトルコを完全に駆逐した"オイゲン公"。彼を記念して造られたシリーズ「プリンス・オイゲン」は、現在でもアウガルテンの代表作となっています。
ウィーン磁器工房は経営困難に追い込まれます。1744年、女帝マリア・テレジアによって工房は買い上げられ、国営化。この時よりハプスブルク家の紋章をウィーン磁器工房の商標として使うことが許可され、数々の変遷を重ねながら現在でも使われています。
今日アウガルテンを代表する図柄の一つ「マリア・テレジア」も、女帝マリア・テレジアに感謝の意を表すために謹呈されました。
女帝は他のヨーロッパ王侯貴族と同様に東洋磁器への強い関心を持ち、特に日本の「伊万里」の愛好家でもありました。ハプスブルク家には、17~18世紀の「古伊万里」が多くみられますが、これはスペイン・ハプスブルク家を通じて、オーストリア・ハプスブルク家にもたらされた物でした。
女帝の死後、ウィーン磁器工房は1784年にゾルゲンタール男爵の手にゆだねられました。有名な「コバルト・ブルー」が発見されたり、金彩の高度な技術が完成されるなど、ウィーン磁器工房の成長はめざましく製品の種類もかなり多くなりました。
フランス革命と、ナポレオン戦勝終結後の1814年「ウィーン会議」の宴席でもウィーン磁器工房の食器が使われ、出席のために訪れた欧州各国の代表団は競って磁器を買い求めました。
「ウィーン会議」終了後は機能性を最優先した「ビーダーマイアー様式」と呼ばれる新たな芸術様式が流行。簡素で実用的な絵柄が人気となり、ブルジョワ市民階級までもが宮廷生活にあこがれ磁器を買うようになりました。
しかしフランツ・ヨーゼフが即位したころには陰りが見え始めます。ボヘミアの磁器産業やハンガリーのヘレンドが頭角を現し、ウィーン磁器工房は外国産業に押され気味になり、1864年閉鎖へと追い込まれます。オーストリア帝国の滅亡とともに、ウィーン磁器工房も帝国の浮沈の歴史とともに消えていきました。
1923年、マリア・テレジアの狩猟館「アウガルテン宮殿」を改造してウィーン磁器工房は「アウガルテン」として復活します。
この「アウガルテン宮殿」はハプスブルク家が華やかなりしころ、モーツァルト、ベートーベン、ヨハン・シュトラウスなどの音楽家たちを招いて一族のためにコンサートを開いた場所でもあり、現在では500年以上の長い歴史を持つ「ウィーン少年合唱団」の宿舎ともなっています。
女帝マリア・テレジアが作らせた卓上芸術とでもいうべきアウガルテンは、洗練された高度な技術を持ち、ハプスブルク家が愛用していた食器として世界中の愛好家から今なお高い支持を受けています。
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