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エルコーレ・モレッティ|ムラーノ島の花模様 ヴェネチアンガラス

An Editorial · Millefiori · 2000 Years

千の花 ヴェネチアンガラスの技法史とエルコーレ・モレッティ

紀元前のモザイクガラスが、ムラーノ島で復活しました。

紀元前のエジプトおよび地中海沿岸に始まったモザイクガラスの技法は、中世にいったん途絶え、ムラーノ島の職人たちによって受け継がれていきます。1911年、エルコーレ・モレッティが兄弟3人で工房を開き、ミレフィオーリ(千の花)技法を磨き上げ、現在もムラーノ島で手仕事による製造を続けています。2000年に及ぶ技法史を、4章で辿ります。

エルコーレ・モレッティ ミレフィオーリ プレート 6色集合 ヴェネチアンガラス 千の花 ムラーノ島
Millefiori plates ― Ercole Moretti, Murano / ※画像はイメージです

Chapter 01 · Ancient Rome ― Origin

紀元前のガラス ─ モザイク技術の誕生と中断

── 地中海圏から始まる、モザイクガラスの系譜 ──

ミレフィオーリ小皿3点
※画像はイメージです

モザイクガラスの起源は、紀元前のエジプトおよび地中海沿岸の工房に求められます。色付きガラス棒(ムリーネ / Murrine)を束ね、引き伸ばしてから輪切りにすると、断面に花や星のような模様が現れます。これを「花片」と呼び、型の上に並べて再び加熱して融合させることで、一枚の器の表面に多色の文様を浮かび上がらせる技法が成立しました。当初は宝飾品や香油瓶など小さな容器の装飾に用いられ、地中海交易の動脈に乗って各地に広がっていきます。ローマ帝国の時代には、帝国各地の工房がモザイクガラスの製造を担い、貴族の食卓を彩る器や建築装飾へと用途が拡張されました。紀元1世紀のポンペイをはじめとするローマ時代の遺跡からは、モザイクガラスの破片や容器の断片が出土しており、当時の工芸水準の高さを物語っています。

しかし、ローマ帝国が崩壊した中世に入ると、ガラス製造の中心地はシリアやビザンティウムなど東方へと移動し、ヨーロッパにおけるモザイクガラスの技法は、ほぼ途絶えた状態となります。ヴェネツィアでガラス工房がムラーノ島に集約された13世紀末(1291年の火災防止令)以降も、装飾的な吹きガラスや鏡の製造は発展した一方で、古代モザイクガラスのような「花片を組み合わせて模様をつくる」精緻な技法は、ムラーノ島の職人たちの手仕事のなかで少しずつ受け継がれ、磨かれていくことになります。

ローマ時代のモザイクガラスは、皇帝の宮廷食器や宗教儀礼の道具として高い価値を持ちました。出土した断片を観察すると、極小の花片を緻密に並べたものから、大きな色面を組み合わせた抽象的構成のものまで、表現の幅が広いことが分かります。色ガラスを得るための金属酸化物(銅・コバルト・鉄・マンガン)の調合技術もこの時代に蓄積されており、後にムラーノ島で再構築されるガラス工芸の基礎は、ローマ帝国の工房ですでに準備されていたといえます。出土品の断片を通じて時代を越え、ローマ帝国の遺産はムラーノ島の工房へと静かに受け継がれていきました。

Chapter 02 · 13C-19C ― Murano · Revival

ムラーノ島 ─ ヴェネチアンガラスの産地と技法の蓄積

── 13世紀末(1291年)の集約令から、19世紀の復興まで ──

ミレフィオーリ各柄シリーズ
※画像はイメージです

ヴェネツィアのガラス産業は、10世紀以前から続くと伝えられています。木造の家屋が密集する本島では、ガラス炉から出る高熱と火の粉が常に火災の原因となり得るものでした。1291年、ヴェネツィア共和国は市内のガラス工房をすべてムラーノ島(Murano)へ強制移転させる法令を発布します。表向きの理由は防火でしたが、実際には島という閉じた空間に職人を集めることで、ヴェネツィアが独占する高度な製造技術が外部に流出することを防ぐ意図もありました。ムラーノ島のガラス職人は貴族と結婚することが許され、子女には特別な法的地位が認められた一方で、島を離れて他国で技術を伝えることは死罪に値するほど厳しく禁じられたといいます。

こうして集約された職人たちは、世代を越えて技法を磨き続けました。鏡・シャンデリア・吹きガラス・レース文様ガラス(フィリグラーナ)など、ヴェネツィアン・ガラスの代表的技法はこの島で確立されていきます。なかでもムリーネ(花片)を用いた技法は、職人たちの手によって少しずつ精度を上げ、装飾品や小物の素材として継承されました。ヴェネツィアはヨーロッパにおけるガラス製造の中心地としての地位を、数世紀にわたって維持し続けました。

ミレフィオーリ(Millefiori)は、イタリア語で「千の花」を意味します。多色のガラス棒を束ねて加熱・延伸し、輪切りにして得た花片を型の上に並べ、再び熱を加えて一枚の板や器に融合させる ── この一連のプロセスを経て、断面の文様がそのまま器の表面を覆う独特の表情が生まれます。各花片の文様は、束ね方や引き伸ばす際のねじり方、配色の選択によって無限のバリエーションを生み、ひとつとして同じものはありません。ムラーノ島の職人たちの手によって受け継がれてきたこの技法は、装飾品から食器へと用途を広げながら、現代へとつながる工芸の系譜を形づくっていきます。

ムラーノ島の工房は、現代に至るまで小規模な家族経営を中心とした工芸生産の場として続いています。観光客が訪れる吹きガラスの実演や、複数の工房が共同で運営する展示館も存在しますが、製造の中心はあくまで職人の手仕事です。ミレフィオーリ技法はその性質上、機械化が難しく、ひとつひとつの工程に手と目の判断が求められます。色ガラス棒の作り方、束ね方、引き伸ばす速度、輪切りの厚み、型への並べ方、加熱融合時の温度管理 ── これら全てが仕上がりの表情を左右し、世代を越えて伝承されてきました。ムラーノ島が「ガラスの島」として名を保ち続けられたのは、この職人技の継承システムがあったからです。

Chapter 03 · 1911 ― Ercole Moretti

1911年 ─ 兄弟3人が開いた、ミレフィオーリ専業工房

── ヴェネチアン・ビーズからプレートへ ──

ムリーネ 花片の集合
※画像はイメージです

1911年、エルコーレ・モレッティ(Ercole Moretti)は兄弟3人(Ercole / Norberto / Iginio)でムラーノ島に独自の工房を構えました。創業当初の中心は、ヴェネチアン・ビーズの製造です。ガラス棒をランプの炎で加熱・成形して作るビーズは、当時ヨーロッパ各地への重要な輸出品となっており、ミレフィオーリ技法を活かす絶好の素材にもなりました。なかでもロゼッタ(Rosetta)やミルフィオリ(Millefiori)のビーズは、複雑な花片構成によって他に類のない表情を生み、工房の代名詞となっていきます。兄弟は花片の配色・束ね方・サイズに改良を重ね、ビーズひとつひとつに「千の花」の名にふさわしい複雑な文様を凝縮させていきました。

やがて工房は、ビーズで培った技法を平面のプレートやボウルへと応用していきます。ガラス棒から花片を切り出し、型の上に隙間なく並べ、加熱して一枚の器に融合させる ── 立体的なビーズ製造で磨かれた花片の精度が、平面食器の絵画的表現を支えました。同じ型・同じ色構成で製造しても、花片の並び方と熱による微妙な変形によって、仕上がりは一点ごとに必ず異なります。この「量産品にして一点ものの表情を帯びる」という性格こそが、エルコーレ・モレッティの食器を他のガラス器と分かつ独自の魅力となっています。

工房は現在もムラーノ島での製造を継続しており、ソーダガラスを素材としたプレート・ボウル・箸置きなど、食卓で使える日用の器を中心に展開しています。創業以来一貫してミレフィオーリ専業を貫いていることが、技法の純度を保ち続ける大きな理由といえるでしょう。職人の手から手へ、花片のひとつひとつが配置され、千の花が皿の上に咲きます。それは100年を超える時間を経て、現代の食卓へと届けられる工芸の手仕事です。

エルコーレ・モレッティの製品は、ヴェネツィアン・ビーズで蓄えた精密な花片を、食器という新しい器のかたちに展開した点に大きな特徴があります。ビーズが装身具として身近な存在となっていた19世紀末から20世紀初頭の空気の中で、その技法を食卓の道具へ移し替えるという発想は、当時としても新しい試みでした。皿という平面に花片を敷きつめれば、絵画的な表現が可能になります。プレートの縁を花片で囲い、中央に余白を残せば、皿そのものが額装された絵のように見えてきます。100年を超える歴史を経て、ミレフィオーリ食器は工芸品としての顔と実用品としての顔を併せ持つ、独特の位置を保ち続けています。

Chapter 04 · Today ― Contemporary Tableware

現代の食器 ─ 古代ローマモザイクシリーズへの継承

── ミルフィオリ食器の現代的展開 ──

ミレフィオーリ食器イメージ
※画像はイメージです

エルコーレ・モレッティの食器は、ミレフィオーリの花片を「絵の具」のように扱う、絵画的な構成を特徴としています。皿の表面に何百もの花片が並び、光が当たるたびに色彩がわずかに変化する様子は、まさに「絵画的なガラス」と呼ぶにふさわしいものです。皿の縁から中心まで花片を敷きつめる構成もあれば、いくつかの花片を主役として配置し、周囲に余白を残すことで一輪一輪の花を浮かび上がらせる構図もあります。同じ技法でも、「敷きつめ」と「配置」という二つの方向性が、ミレフィオーリ食器の表現の幅をつくり出しています。

花片を敷きつめる構成は、皿の表面全体が一枚の絵のように立ち上がる迫力を持ちます。対して、余白を活かす構成は、花片そのものの繊細さと、ガラスの透明感をより際立たせる効果を生みます。どちらの構成も、職人がひとつひとつの花片を手で選び、型の上に配置していく工程によって成り立っています。同じ型・同じ色構成で製造しても、花片の並び方と熱による微妙な変形によって、仕上がりは一点ごとに必ず異なります。「絵の具」として花片を扱うこの絵画的アプローチが、ミレフィオーリ食器を他のガラス器と分かつ独自の表現となっています。

現代のエルコーレ・モレッティの製品ラインには、古代ローマのモザイク文様を直径8cmの小皿サイズで再現した「古代ローマモザイク」シリーズが含まれます。これは敷きつめの構成を、日常の食卓で扱える豆皿サイズに凝縮した一枚です。レッド・オレンジ・ピンク・グリーンの4色展開は、古代ローマモザイクの多彩な色彩世界を反映しています。ソーダガラス製の小皿は、お茶請けやチョコレート、薬味皿としての実用性に加えて、装飾皿としてコレクションする楽しみも備えています。直径13cmのフラットプレートは、パステル多彩の花片が皿全体に咲く一枚で、食卓の中心に置けば、まるで一枚の絵画のような存在感を放ちます。

紀元前の地中海から、ムラーノ島の工房を経て、現代の食卓へ ── 2000年を超えるガラス工芸の旅は、いまも続いています。古代の職人が研究した色ガラスの調合、ローマ時代の工房で完成した花片の組み合わせ方、13世紀末にムラーノ島に集約された職人ギルドの秘密保持、1911年の兄弟3人による工房開設、そして現代の古代ローマモザイクシリーズ。一枚の小皿の上に並ぶ花片には、これらの歴史の積み重ねが凝縮されています。食卓に置かれた直径8cmの皿は、単なる食器ではなく、2000年の技法史を手のひらに収める小さな美術品でもあるのです。

The Selection

いま、ル・ノーブルで出会えるエルコーレ・モレッティ

── ミレフィオーリ 古代ローマモザイクシリーズ ──

Series 01 · Ancient Roman Mosaic

古代ローマモザイクシリーズ ─ 4色展開

古代ローマのモザイク文様をミレフィオーリ技法で再現した、直径8cmの小皿4色です。

No. 01

ミレフィオーリ プレート 8cm 古代ローマモザイク レッド系

直径8cm 深さ1.5cm / ソーダガラス

エルコーレモレッティ ミレフィオーリ プレート 8cm 古代ローマモザイク レッド系

古代ローマのモザイク文様を、赤系の花片で再現した直径8cmの小皿です。豆皿としても装飾皿としてもお使いいただけます。

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No. 02

ミレフィオーリ プレート 8cm 古代ローマモザイク オレンジ系

直径8cm 深さ1.5cm / ソーダガラス

エルコーレモレッティ ミレフィオーリ プレート 8cm 古代ローマモザイク オレンジ系

同シリーズのオレンジ系。古代モザイクが持つ多彩な色彩のなかでも、暖色の華やかさを担う一枚です。

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No. 03

ミレフィオーリ プレート 8cm 古代ローマモザイク ピンク系

直径8cm 深さ1.5cm / ソーダガラス

エルコーレモレッティ ミレフィオーリ プレート 8cm 古代ローマモザイク ピンク系

同シリーズのピンク系。やわらかな色合いと小ぶりのサイズが、ギフトとしても好まれる一枚です。

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No. 04

ミレフィオーリ プレート 8cm 古代ローマモザイク グリーン系

直径8cm 深さ1.5cm / ソーダガラス

エルコーレモレッティ ミレフィオーリ プレート 8cm 古代ローマモザイク グリーン系

同シリーズのグリーン系。4色を揃えてコレクションとして食卓に並べることもできる、シリーズの仕上げ役です。

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Series 02 · Flat Plate · Flower

フラットプレート 13cm ─ 千の花の絵画

ミレフィオーリ技法による絵画的構成の、代表シリーズの一枚です。

No. 05

ミレフィオーリ フラットプレート 13cm パステル多彩(200)

直径13cm / ソーダガラス

エルコーレモレッティ ミレフィオーリ フラットプレート 13cm パステル多彩

直径13cmのフラットプレートに、パステル多彩の花片が咲く一枚です。皿全体を絵画のように仕立てています。

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よくあるご質問

Q1: エルコーレ・モレッティとはどのようなブランドですか?

イタリア・ヴェネツィアのムラーノ島で1911年に設立されたガラス工房です。ミレフィオーリ(千の花)技法によるプレートや小皿などの食器を、創業以来一貫して製造しています。現在もムラーノ島で家族経営による手仕事の製造が続いています。

Q2: ミレフィオーリとはどのような技法ですか?

イタリア語で「千の花」を意味します。多色のガラス棒を束ねて加熱・延伸し、輪切りにした花片(ムリーネ)を型に並べ、再び加熱して融合させる技法です。起源は紀元前のエジプト・地中海圏にまでさかのぼります。

Q3: 古代ローマモザイクシリーズはどのような商品ですか?

古代ローマのモザイク文様を、現代のミレフィオーリ技法で直径8cmの小皿に再現したシリーズです。ソーダガラス製で、レッド・オレンジ・ピンク・グリーンの4色展開となっています。豆皿としても装飾皿としてもお使いいただけます。

Q4: ヴェネチアンガラスはどの地域で作られていますか?

イタリア・ヴェネツィア市のムラーノ島が中心産地です。13世紀末(1291年)のヴェネツィア共和国による火災防止令で、市内のガラス工房がムラーノ島に集約され、それ以来独自の技術体系がこの島で発展してきました。

Q5: ミレフィオーリ食器のお手入れ方法は?

ソーダガラス製のため、手洗いを推奨いたします。食洗機・電子レンジへの対応については、各商品ページの仕様欄をご確認ください。金彩を含む商品は特に手洗いをお勧めします。

Q6: ギフトに贈る場合のラッピングや熨斗は対応していますか?

ラッピング・熨斗のご用意が可能です。詳細はル・ノーブルのギフトサービス案内ページをご確認ください。

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