No. 01
ボレスワヴィエツ コーヒーカップ&ソーサー 160ml 913/710/D-41
幾何学的に整理されたモダンな花柄パターン「D-41」を施したコーヒーカップ&ソーサー。スタンペルキ技法による文様が、白い素地に映えます。容量160ml。
商品ページへAn Editorial · History of Polish Pottery
14世紀から続く、シレジアの白陶土と手描きスタンプの物語。
ドイツとチェコの国境に近いポーランドの小都市ボレスワヴィエツ。14世紀から続く陶器製造の地で生まれたポーリッシュポタリーは、手描きスタンプ(スタンペルキ)による繊細な文様と、食洗機対応の堅牢さを兼ね備えた唯一無二の食器です。ル・ノーブル編集部が産地史と技法の歩みをたどります。
Chapter I · 14th Century ― Origin
── シレジアの白陶土と川の水が育んだ、700年の陶業の始まり ──
ポーランド南西部、ドイツとチェコの国境に近いボーブル川(Bóbr)とクフィサ川(Kwisa)の合流点に位置するボレスワヴィエツは、古くから陶器製造の地として知られていました。この地では14世紀頃から陶器製造の活動があり、1473年には5つの窯が稼働していた記録が残ります。陶業がこの地に根づいた理由は地下資源にあります。周囲の丘陵地帯は、シレジア(シュレジエン)地方特有の白色粘土層に恵まれており、きめ細かく鉄分の少ないこの陶土は、焼成後に純白に近い素地を生み出します。良質の原料・豊富な薪材・川の水という三条件が揃ったこの地は、中世の陶業にとって理想的な立地でした。
時代が下るにつれ、ドイツ系からポーランド系へと工房の担い手は交代しました。19世紀に入ると産業化の波が押し寄せ、ボレスワヴィエツには複数の陶器工場が整備されます。現在の主要メーカーとして知られるザクラディ・チェラミチネ(Zakłady Ceramiczne)の前身にあたる工房も、この時期に基盤を固めています。製造品は食器から建築タイルまで多岐にわたりましたが、やがて食卓用食器に特化し、手描きスタンプ(スタンペルキ・stempelki)による文様装飾という独自の技法が育まれていきました。スタンペルキとは、海綿や粘土製の小型スタンプに釉薬を含ませ、器の表面に繰り返し押し当てることで、孔雀の眼状・花弁状・幾何学模様を組み合わせた精緻なパターンを作り出す手法です。機械プリントと異なり、スタンプを押すたびに微妙な力加減と位置が変わるため、同じデザインでも一枚一枚に個体差が生まれます。それがボレスワヴィエツの「手仕事感」となっており、大量生産が一般化した現代においても揺るがない差別化要因となっています。
編集部の見方
ボレスワヴィエツが700年にわたって陶器産地として続いてきた根拠は、川・陶土・薪という三条件の地理的優位にあります。それは先天的な好条件だと編集部では見ています。
Chapter II · Technique ― Stempelki
── 孔雀の眼・牡丹・花弁。スタンプ一押しごとに変わる手仕事の痕跡 ──
ボレスワヴィエツ陶器の最大の特徴は、白い素地に鮮やかな藍色・テラコッタ・緑を組み合わせた装飾にあります。この色彩の根拠は素材にあります。コバルト酸化物を用いた藍色は、1200度超の高温焼成でも変色せず、経年でも色が褪せない安定性を持っています。同様に、酸化鉄由来のテラコッタ色も耐熱・耐酸性に優れ、食洗機・電子レンジ・オーブンへの対応が可能という実用性に直結しました。陶器ながら日常使いに耐える堅牢さ、それがポーリッシュポタリーを「飾るための器」ではなく「使い続ける食卓の相棒」にしています。
文様の種類は実に多様です。代表的なパターン「120」は、孔雀の眼(Peacock Eye)と牡丹の組み合わせで、19世紀末から現代まで変わらぬ人気を保つ定番柄です。「D-41」はより幾何学的に整理されたモダンな花柄、「A-166A」はふんだんに花が描き込まれた豪華系パターンと、各コードは個別のデザインに対応しています。ザクラディ・チェラミチネだけで数百種のパターンが管理されており、同じカップでもデザインコードが違えば全く異なる表情を持ちます。コレクターが好きなパターンを揃え、食卓に複数の柄を混在させる「ミックス使い」という文化も、そこから生まれました。手仕事の温もりと、体系的なデザインマネジメントの組み合わせ。それがボレスワヴィエツを、ハンドメイド工芸とインダストリアルな食器の境界線に立たせる、稀有な存在にしています。
編集部の見方
スタンペルキによる個体差は、ボレスワヴィエツ陶器を「選ぶ楽しさ」と「使い続ける愛着」の両方に結びつけていると編集部では見ています。
Chapter III · 1918 ― Independence
── 123年の不在を経て1918年に蘇った国。陶器職人は時代の変転の中でも仕事を続けた ──
ボレスワヴィエツが位置するシレジア地方は、歴史上つねに大国の争奪対象となり続けました。この地は1742年のシレジア戦争でプロイセン領となり、ドイツ語名「ブンツラウ(Bunzlau)」で呼ばれていました。その後、1772年・1793年・1795年の三度にわたるポーランド分割によって、ポーランド王国本土もまた地図上から消滅します。それでもポーランド人陶器職人たちは、この地で仕事を続けました。政治的な国境が変わっても、土の記憶は変わりません。
1918年11月、第一次世界大戦の終結と同時にポーランドは独立を宣言しました。ドイツ革命・ロシア革命によって両列強が領有権を手放した歴史的な隙間に、ユゼフ・ピウスツキが国家元首としてポーランド共和国を再建したのです。123年ぶりの独立でした。この年から100年目にあたる2018年は、ポーランド独立宣言100周年として国を挙げて記念されました。独立100周年を記念した限定シリーズが製造され、陶器が国の記念品として選ばれたことは、ボレスワヴィエツが単なる工業製品を超え、ポーランドの文化的アイデンティティに深く結びついていることを示しています。第二次世界大戦後、共産主義体制(1945-1989年)下においても工房は稼働し続け、1989年の民主化後は世界輸出が加速しました。土着の技法と人々の誇りが、政治的激変の中でも途絶えなかった証です。
編集部の見方
700年以上の陶業の歴史において、ボレスワヴィエツの職人が複数の国籍・国家体制の下でも仕事を続けた事実は、「技術の継続性」が政治的変容を超えることを示していると編集部では見ています。
Chapter IV · Present ― Tradition & Innovation
── 民主化後の世界輸出・多様なデザインの展開・変わらないスタンペルキの手仕事 ──
現在のボレスワヴィエツでは、複数のメーカーが競いながら伝統を継承しています。共通点は手仕事のスタンペルキ工程です。相違点はデザインの方向性で、古典的な孔雀眼文様を守るラインと、よりカラフル・モダンな配色を打ち出すラインが並立しています。いずれも高温焼成の磁器素地に無鉛釉薬を使用し、食洗機・電子レンジ・冷凍庫に対応するという実用性は共通の前提です。
ル・ノーブルでは、こうしたボレスワヴィエツの食器を複数のデザインパターンで取り揃えています。ティーカップ&ソーサーからティーポット、マグカップまで、日々の食卓をともにできる器が揃います。どのパターンを選ぶかは、ボレスワヴィエツの多様な歴史の中から、どのページを開くかに似ています。600年の時を経て今日の食卓に届く陶器。その静かな佇まいの奥に、職人の指跡と、幾度も書き換えられた地図の上を生き抜いた街の記憶が重なっています。
編集部の見方
ボレスワヴィエツ陶器の実用性(食洗機・オーブン対応)と美的価値(スタンペルキの個体差)の両立は、日々使い込むことで愛着が深まる食器としての理想形に近いと編集部では見ています。
The Selection
── 600年の技を受け継ぐボレスワヴィエツの食器を、ル・ノーブルでお選びいただけます ──
Brand · Boleslawiec
ポーランド南西部、700年の陶業の地が生んだ唯一無二の食器。
No. 01
幾何学的に整理されたモダンな花柄パターン「D-41」を施したコーヒーカップ&ソーサー。スタンペルキ技法による文様が、白い素地に映えます。容量160ml。
商品ページへNo. 02
現代的な配色を打ち出すアートコレクションのマグカップ。たっぷり350mlの容量で、日々の食卓に。スタンペルキの手仕事感が一杯ごとに伝わります。
商品ページへNo. 03
パターン「226A」を纏った420mlのティーポット。高温焼成の堅牢な素地で、日常のティータイムを支えます。スタンペルキ文様が注ぐたびに表情を見せます。
商品ページへNo. 04
花柄を豊かに描き込んだパターン「A-1073A」のティーポット。容量420ml。手描きスタンプによる花の文様が、食卓に華やかさを添えます。
商品ページへNo. 05
定番サイズ220mlのティーカップ&ソーサー。パターン「955」のスタンペルキ文様が、白い素地に藍色で映えます。毎日のお茶の時間にちょうどよい一客。
商品ページへNo. 06
パターン「A-1155A」を施した220mlのティーカップ&ソーサー。スタンペルキによる花弁の文様が繊細に重なり、一枚ごとに微妙な個体差が生まれます。
商品ページへポーランド南西部、ドイツ・チェコ国境近くに位置する都市で、14世紀頃から陶器製造が行われてきた歴史ある産地です。シレジア地方の良質な白陶土を活かした食器が有名で、「ポーリッシュポタリー」の代名詞的な産地です。
海綿や粘土で作った小型スタンプに釉薬を含ませ、素焼きの器に繰り返し押し当てて文様を作る技法です。押すたびに力加減が微妙に変わるため、同じデザインでも一枚一枚に個体差が生まれ、手仕事ならではの温もりを持ちます。
コバルト酸化物による藍色釉薬と高温焼成(1200度超)のおかげで、釉薬が食器に強固に定着しているためです。無鉛釉薬・食洗機対応・電子レンジ・オーブン対応が標準的で、日常使いに適した堅牢さを持ちます。
ボレスワヴィエツは1742年のシレジア戦争でプロイセン(ドイツ)領となり、「ブンツラウ(Bunzlau)」と呼ばれていました。その後の三度のポーランド分割(1772・1793・1795年)でポーランド王国本土も消滅しましたが、陶器製造は途絶えず、1918年の独立回復後、陶器はポーランドの文化的シンボルの一つとなりました。
各デザインにコード番号(D-41、A-166A、226Aなど)が付与され、同じアイテムでもコードごとに異なる文様が描かれます。孔雀眼・花弁・幾何学モチーフなどポーランドの自然からインスピレーションを得たパターンが代々受け継がれ、現在も数百種が管理されています。
ボレスワヴィエツの食器を和食の食卓とともに楽しむ視点は、関連特集「ポーリッシュポタリー×和食の食卓」でご紹介しています。あわせてご覧ください。
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