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マイセン アラビアンナイト|ヴェルナーが描いた千夜一夜物語の世界

An Editorial · Arabian Nights

千の夜が明けるとき、磁器に宿る物語

1971年、マイセン工房でハインツ・ヴェルナーは千夜一夜物語の世界を磁器に描き始めました。アラジンの洞窟、空飛ぶ絨毯、王と王妃の宮殿。Motiv No.1からNo.15へ、全15場面に渡る手描き上絵付けの叙事詩です。

マイセン アラビアンナイト 陶板の絵画部 ─ 王と王妃・シャンデリアが描かれた千夜一夜物語の場面

Prologue · The Book of One Thousand and One Nights

千夜一夜物語 ─ 中世イスラム世界から欧州へ

── 1704年、アントワーヌ・ガランの翻訳が物語を欧州へ広めました ──

「アラビアンナイト」という言葉が欧州に届いたのは、1704年のことです。フランスの東洋学者アントワーヌ・ガランが「千一夜物語(Les Mille et une Nuits)」のフランス語訳を刊行し、それまで中東の口承文学として伝わっていた説話集が、印刷物として欧州の読者に広まりました。

千夜一夜物語の成立は複雑です。核となるのは9世紀ごろのバグダードを中心としたアラブ圏の説話集ですが、そこにはペルシャ起源の物語枠組み(シャフリヤール王とシェヘラザードの語りの構造)、インド起源の寓話群が混入しています。アラジンと魔法のランプ、シンドバッドの冒険、アリ・ババと40人の盗賊といった現在最もよく知られる物語の多くについては、それらの起源をめぐって現在も研究が続いています。物語そのものが入り組んだ由来を持つ叢書です。

ガランの翻訳以後、千夜一夜物語は欧州の文学・美術・音楽・工芸に広範な影響を与えました。18世紀から19世紀にかけての欧州では、オリエント(東洋・中東)への憧憬と好奇心が「オリエンタリズム」という文化的潮流を生み出しており、千夜一夜物語はその象徴的なテキストとなりました。ドラクロワの絵画、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェヘラザード」(1888年)、そしてマイセンのデザイナーたちがこの物語の世界に触れたのも、こうした欧州的なオリエンタリズムの文脈の中でのことです。

Chapter 01 · 1710 ― Meissen & Orientalism

マイセン磁器とオリエンタリズム ─ 1710年からの流れ

── ザクセン宮廷が集めた東洋の器、そして独自解釈への道 ──

1710年、アウグスト強王(フリードリヒ・アウグスト1世)の命によりザクセン州マイセン市に設立されたマイセン磁器窯は、その創設当初から東洋磁器への強い関心を背景に持っていました。アウグスト強王は中国・日本の磁器を熱心に収集しており、ドレスデンの「日本宮殿(Japanisches Palais)」には大規模な磁器コレクションが収められていたと伝わります。マイセン磁器の創設そのものが、東洋磁器の模倣から始まっていると言えます。

18世紀前半のマイセンは、東洋磁器の文様を西洋の解釈でアレンジした「シノワズリ(中国趣味)」「インドの華」といったデザインシリーズを次々と生み出しました。これらは東洋への憧憬と西洋磁器技術の融合として、18世紀欧州磁器産業の主要なスタイルとなりました。

19世紀から20世紀にかけて、マイセンのデザインは新古典主義・アール・ヌーヴォー・バウハウスの影響を受けながら変遷しました。1950年代以降、東ドイツ時代のマイセン工房では伝統を守りながら新たなスタイルを模索する動きが生まれ、そこから20世紀後半を代表するデザイナー群が登場します。ハインツ・ヴェルナーはその主要な一人でした。

Chapter 02 · 1935―2019 ― Heinz Werner

ハインツ・ヴェルナー ─ 叙事詩を磁器に変えた絵付師

── 1935年生まれ、マイセン工房で活躍した20世紀後半のデザイナー ──

ハインツ・ヴェルナー(Heinz Werner, 1935年生まれ、2019年没)は、マイセン工房を代表するデザイナー・絵付師のひとりです。1935年にドイツで生まれ、マイセン工房に長年にわたり在籍しました。

ヴェルナーは20世紀後半のマイセン工房を代表するデザイナーのひとりとして、シリーズごとに独自の世界観を構築する叙事詩的なアプローチを得意としました。「現代マイセン五人組」という呼称も一部で流通していますが、公式資料での確認が難しいため、本稿では「20世紀後半のマイセン工房を代表するデザイナーのひとり」という記述で統一しています。

ヴェルナーの特徴は、単一の文様を繰り返すのではなく、一つのテーマに複数の「場面」を与え、それを連作として展開する手法にあります。アラビアンナイトはその代表的な試みとなりました。Motiv No.1からNo.15という番号は、千夜一夜物語の15の異なる場面に対応しており、カップやプレート、陶板それぞれに物語の一幕が宿っています。

Chapter 03 · 1971―1974 ― The Arabian Nights Series

アラビアンナイト ─ 1971年、全15場面の制作

── 24金の金線とポリクロームで描かれた Motiv No.1 から No.15 ──

1971年、ヴェルナーはマイセン工房でアラビアンナイトシリーズの制作を始めました。1974年にかけて制作されたこのシリーズは、千夜一夜物語に登場する王様・王妃・王子・魔法使い・商人といった人物たちの場面を、マイセン磁器の器面に描いたものです。

技法的な特徴は24金の金線装飾と多色上絵付け(ポリクロームエナメル)です。磁器素地に描かれた人物図は、中東・オリエントの衣装・建築・自然を背景に、鮮明な色彩で描き込まれています。素地にはマイセンの硬質磁器が用いられています。

展開された器形はカップ類・プレート・陶板・ポット等、幅広い食器カテゴリにわたります。陶板(18×15cm)はMotiv No.3~No.15まで展開され、それぞれ独自の場面(空飛ぶ絨毯・宮殿の謁見・魔法使いと洞窟等)が描かれています。コーヒーカップ&ソーサー 150ml(23582型)はMotiv No.1~No.12、ティーカップ&ソーサー 150ml(23633型)はMotiv No.1~No.6、プレート 18cm(23501型)はMotiv No.1~No.10、コーヒーポット 1.0L(23693型)は単一のデザインで制作されました。

各Motiv番号の絵柄は異なるため、複数のMotivを組み合わせて揃えることで、千夜一夜物語の世界を食卓や飾り棚に並べることができます。物語のどの場面を選ぶかで、器面が伝える情景も変わってゆきます。

Chapter 04 · Now ― Legacy & Rarity

希少な陶芸史の証言者 ─ 現代に残るアラビアンナイト

── 物語を纏った磁器が持つ、文化史的な意義 ──

1974年以降、アラビアンナイトシリーズは連続生産されることなく希少な存在となっています。手描き上絵付けを基本とするマイセン磁器は量産に向かない工芸品ですので、特にヴェルナーの叙事詩的シリーズは制作に多くの時間と技術を要します。

千夜一夜物語の各場面を磁器に定着させたアラビアンナイトシリーズは、東洋の説話と西洋の磁器技法が交差した文化史的な証拠物でもあります。オリエンタリズムという思想的潮流の中で欧州磁器産業がどのようにオリエントのモチーフを取り込んできたか、その一つの到達点として評価できる作品群だと、編集部では見ています。

ル・ノーブルでは、アラビアンナイト シリーズを取り扱っています。在庫状況は限られており、下記のシリーズページで最新の在庫をご確認ください。

いま、ル・ノーブルで出会える一客

マイセン アラビアンナイト コーヒーカップ&ソーサー 150ml Motiv No.6 手描き上絵付け磁器

マイセン アラビアンナイト
コーヒーカップ&ソーサー 150ml Motiv No.6

全15場面のうちMotiv No.6を描いたコーヒーカップ&ソーサーです。24金の金線装飾と多色上絵付けによる手描き作品として、現行在庫では希少な一客となっています。

商品詳細を見る アラビアンナイト シリーズ一覧

よくあるご質問

Q. マイセン アラビアンナイトはどのようなシリーズですか?

ハインツ・ヴェルナー(1935-2019年)がマイセン工房に在籍中の1971年から1974年にかけて制作したシリーズです。千夜一夜物語に登場する王様・王妃・王子・魔法使い等の場面を、マイセン磁器に24金の金線装飾と上絵付けで描いています。Motiv No.1からNo.15の全15図柄が展開されています。

Q. ヴェルナーとはどのような絵付師ですか?

ハインツ・ヴェルナー(Heinz Werner, 1935-2019年)はドイツのマイセン工房を代表するデザイナー・絵付師のひとりで、20世紀後半のマイセン工房を代表するデザイナーのひとりです。シリーズごとの世界観構築を得意とし、アラビアンナイトのほかにも複数の叙事詩的シリーズを手がけました。

Q. 千夜一夜物語とはどのような物語ですか?

中世イスラム世界で成立した説話集です。日本では「千一夜物語」「千夜一夜物語」として知られます。ペルシャ・アラビア・インド起源の説話が混合して成立しており、18世紀にアントワーヌ・ガランによるフランス語訳(1704年~)が出て以降、欧州に広く伝播しました。アラジン・シンドバッド・アリ・ババ等の物語はこの説話集に含まれます。

Q. アラビアンナイトの陶板と食器(カップ・プレート)の違いは?

陶板(15×10cm / 18×15cm)は壁掛けや飾り棚向けの観賞用磁器です。食器(コーヒーカップ&ソーサー・ティーカップ&ソーサー・プレート18cm)は実際の使用を前提とした実用器として制作されていますが、手描き上絵付けのため観賞目的でお求めになる方も多いシリーズです。

Q. Motiv番号(No.1~No.15)とは何ですか?

各Motiv番号は千夜一夜物語の異なる場面に対応しています。陶板(18×15cm)はMotiv No.3~No.15として展開され、それぞれ独自の場面が描かれています。各番号で描かれる物語の場面が異なるため、複数点を組み合わせてコレクションとして楽しまれる方もいます。

Q. アラビアンナイトはギフトとして贈れますか?

特別な記念日や美術品収集を趣味とする方への贈り物に向いています。希少な手描き磁器のため、長く手元に残るものをお探しの方に向いていると編集部では見ています。ギフトラッピング・熨斗のご用意については、公式案内ページをご確認ください。

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