最も困難なモデルであるCaprioleは卓越した芸術性と膨大な技術性を必要とし、このモデルによってアウガルテンは世界中に一躍その名を轟かせました
アウガルテンの代表的フィギュリンといえばスペイン乗馬学校シリーズ。皮膚感まで繊細に表現されているからこそ、ダイナミックな躍動感を感じさせます。
Capriole-跳躍-は、馬が垂直に跳んでいて、4本全ての脚が同時に伸びきっています。この跳び方はヤギがぴょんぴょん飛び跳ねているように見えるので、Capriole(ヤギのジャンプ。Capraはラテン語でヤギの意味)と名付けられています。負担のある姿勢(ほとんど空中に浮いている)にもかかわらず、馬は騎手の手綱を持つ左手と右肩に接しているのみです。騎手は右手で柳の乗馬鞭を持っており、その鞭はこのモデルでは金属でできています。Herbert Schwarz教授によってデザインされたこのモデルの製作が陶磁器で可能になったのは、1962年。恐らく最も困難なモデルであるCaprioleは卓越した芸術性と膨大な技術性を必要とし、このモデルによってアウガルテンは世界中に一躍その名を轟かせました。
ハプスブルク王宮内のパーフォーマンスで有名な、世界最古・最高と言われる古典乗馬 、ウィーンのスペイン乗馬学校。スペイン乗馬学校は、世界唯一の施設として、ルネサンス時代に集大成された古典馬術の最高技術を保存し、今日もなおそのオリジナルで優雅な演技を披露しています。1729年から1735年にかけてバロックの巨匠ヨハン・ベルンハルト・フィツンャー・フォン・エルラッハ氏によって建設され、当時は貴族の子弟がここで馬術を学んだため、今も乗馬学校と呼ばれています。騎手の壮観さだけでなく最も優良な馬リピッツァナー(スペイン乗馬学校の高等馬術で用いられている白馬のこと)がいる場所でも有名で、シャンデリア輝く演技場で白馬達がシュトラウス、モーツァルトなどのクラシック音楽に合わせて歩いたり走ったり跳んだりするショーは見る人々に深い感銘を与えます。レバード Levade(前肢を折り曲げて、 低くした後肢の飛節に馬体を載せる体勢で数秒間静止の状態をとる)、クールベット Courbette(後肢で立ち前肢を曲げる)、カプリオール Capriole(跳躍し空中で後肢を蹴って伸ばす)などの最も有名な古典馬術のデザインは、ウィーン陶磁器工場アウガルテンの芸術家が製作した陶磁器の置物によって不朽の名声を与えられました。
スペイン乗馬学校の置き物は、陶磁器の本体から成形されるのではなく、何十もの細かいパーツから成り立っています。仕上げ師によって熟練の職人芸を使って陶磁器から切り取られた手綱、あぶみ、サーベルなどのパーツは、本体に液体の陶磁器土を塗って取り付けられています。