Luxury Selection vol.93 ヴェネチアンガラス
"水の都"と称されるイタリア北東部ヴェネチアのムラーノ島で作られるガラス工芸品「ヴェネチアンガラス」。
今日まで受け継がれてきた高い技術力、そして繁栄と衰退を繰り返しながらも絶えることなく培われてきた伝統。
700年以上もの歴史を経て、いま新しい時代を踏み出し始めたヴェネチアン・ガラスをご紹介します。
Luxury Selection vol.93 ヴェネチアンガラス
"水の都"と称されるイタリア北東部ヴェネチアのムラーノ島で作られるガラス工芸品「ヴェネチアンガラス」。
今日まで受け継がれてきた高い技術力、そして繁栄と衰退を繰り返しながらも絶えることなく培われてきた伝統。
700年以上もの歴史を経て、いま新しい時代を踏み出し始めたヴェネチアン・ガラスをご紹介します。
本特集 Luxury Selection vol.93 では、千年以上の歴史を持つムラーノ島のヴェネチアン・グラス工房が生み出す芸術品をご紹介します。バラリン(Ballarin)のラスター彩、エルコレ・モレッティ(Ercole Moretti)のミルフィオリ、ナソン・モレッティ(NASONMORETTI)の彩色クリスタル、そしてヴェトロ・フェリーチェ(Vetro Felice)の繊細なフリル装飾──各工房がそれぞれの技法と美意識を磨き続け、世界中のテーブルや室内を彩ってきました。
熟練の手吹き職人による一点ものの芸術品の数々を、ぜひお楽しみください。
ヴェネチアン・ガラスの歴史は、古代ローマ帝国(前1~5世紀)のローマン・ガラスから始まると言われています。
ローマ帝国時代に、ガラス工芸史上もっとも画期的な技術革命である「吹きガラス技法」が発明されました。それまで、メソポタミアやエジプト、シリアなどでは、粘土で型をつくり、溶かしたガラスを押しつけて成型する「型押し法」が主な製造法でしたが、一点ずつ型を造って成型するため大量生産はできず、生活用品というよりはとても高価な"装飾品"でした。
「吹きガラス技法」とは、鉄パイプの先に溶かしたガラスを水飴のように巻き取り、息を吹き込んで風船のように膨らませて成型する方法で、現在もなお世界中で受け継がれている基本的なガラス製造技法です。
吹きガラスの普及に伴い、1世紀末には不透明なガラスより透明なものが好まれるようになり、ガラスの持つ透過性が美しさにおいても実用性においても認められるようになりました。同時にイタリア半島全域に多くのガラス工房が作られました。
ローマ帝国が滅亡するとガラス職人たちは周辺諸国に移住、その土地に根をおろして独特のガラス器を誕生させました。特にビザンチンで生まれたステンドグラスは、東方のイスラム諸国でも一大ブームを巻き起こしました。
その一方で、イタリアのヴェネツィア共和国ではヴェネツィアン・ガラスが生まれ、一世を風靡しました。13世紀に入ると、同業組合の結成や、当時高度なガラス技術を誇っていた最大のガラス産地シリアのアンティオキアからのガラス職人受け入れなど、新たな展開が始まりました。
原材料や燃料を自国で選出できない土地柄であるヴェネツィア共和国は、技術が原材料の豊富な国々に漏れ、類似品が作られるのを恐れ、1291年に「ガラス製造業者および工人・助手・家族等の全てをムラノ島に集中的に移住させ、島外に脱出する者には死罪を課す」という厳罰体制での管理を行いました。その結果ヴェネチアン・ガラスは、ムラノ島を中心として発展していくことになります。
ヴェネチアン・ガラスは13~14世紀に、特にエナメル彩色の技法とデザインなどに、ビザンチンやイスラムなどの影響を強く受けながら発展、16世紀後半には、ダイヤモンドポイント彫り、レース・グラス、マーブル・グラスなどの繊細で華麗な新しい技法が続々と生み出され、ヴェネチアン・グラスは最盛期を迎えます。
15~17世紀に至ってはヨーロッパのガラス市場を独占するほどの繁栄を示し、ヨーロッパ中のガラス工芸に圧倒的な影響を与えました。
しかし17世紀に入ると、イギリスの鉛クリスタル・グラスの発明、神聖ローマ帝国のボヘミアン・グラスの育成などで、危機に直面します。各国は自国産業保護のために輸入品の高率関税化を始め、輸出の激減によりガラス工場は倒産するなど、ムラノ島もその例外ではありませんでした。
消滅の危機にあったムラノ島のガラス産業でしたが、19世紀になり新しい時代を迎えます。
ムラノ島の名工たちは、古代作品の復刻作りに活路を見い出し、他国のガラス産業には真似のできない色ガラスを基本としたガラス・モザイク技術による新商品やインテリア製品などの新しいジャンルを開拓します。
近代的な生産工場の建設、技術者教育機関の設置、ガラス博物館の建設、展覧会の開催などの新しい活動が次々に生まれ、ヴェネチアン・ガラスは再び世界に注目される存在へと甦りました。
「ヴェネツィアのガラス賞」のマエストロが手掛ける、ガラスの中に白や色のレース模様を編み込んだ技法。糸ガラスを束ねて成型することで、繊細で華麗な縞模様や網目模様を表現します。
「千の花」と呼ばれるモザイクガラス技法。色とりどりの花模様の断面を持つガラス棒を束ね、それを輪切りにしたものを溶かし合わせて作り上げます。1点1点が職人の手仕事による唯一無二の作品です。
水晶のように無色透明なガラス。15世紀のヴェネチアで開発された画期的な技術で、他国産のガラスと一線を画す純粋な透明感を実現しました。ヨーロッパのクリスタルガラス全般の起源とも言える存在です。
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