大阪の天満切子切子工房「昌榮」

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鑑賞の美と用の美を併せ持つ

天満切子

切子工房　昌榮

天満切子とは

大阪市北区にある大阪天満宮の正門の西側に「大阪ガラス発祥之地」の碑があります。
その碑によると江戸後期、長崎のガラス職人播磨屋清兵衛が、「大阪ガラス商工業ノ始祖｣だとされています。
かつて、天満は日本屈指のガラス製造地でした。大阪のガラス産業は繁栄しましたが、戦後そのほとんどが姿を消してしまいました。
大阪の大手ガラス商社だった「カメイガラス」が廃業した際、故・宇良武一氏が大阪のガラスの文化を後世に残してゆくため、従来の切子に新しく「映り込み」を重視して独特の輝きを与えた「天満切子」を生み出しました。

天満切子は鑑賞の美と用の美を併せ持っています。
器に飲み物を注いだ時に、U字にカットされた紋様がレンズの役割を担い、底の模様が側面に映り込みます。
側面に移る美しい光の華を楽しめるのが天満切子の魅力です。
また、U字型のカットにより、側面に丸みを帯びることも特徴のひとつです。
この丸みにより、しっとりと手に吸い付きグラスとしての高い機能性も有しています。

切子工房昌榮（しょうえい）のこだわり

大胆かつ繊細なカット

昌栄の天満切子は、真っすぐ伸びるラインと楕円がきほんのシンプルなデザインが継承されています。
シンプルな分、ごまかしのきかない大胆でいて繊細なカットが特徴です。

グラスの中に広がる万華鏡

飲み物を注ぐと光が屈折しグラスの底の厚みを利用したカット模様が側面部分に映り込むことで、一層輝きが増します。
映り込みを楽しんでいただくことや、使い心地にこだわり、制作しています。

やさしさを感じる硝子

従来の切子はV字型の刃を使って削るものが多いのですが、天満切子は側面をかまぼこ型の丸い刃（U字の刃）を使ってかまぼこ彫りを施しています。
丸みを帯びることで、ガラスにあたたかさと柔らかさを表現することができました。
切子工房昌榮では、天然素材を独自で調合した磨き粉を使い、全て手作業で仕上げているため手になじみやすく切子ならではのエッジのなめらかな感覚もお楽しみいただけます。

天満切子ができるまで

- 1.生地（きじ）選び
- 生地（色被せガラス）は１つ１つ手作りしたものを使用。色や厚み・重さなど、天満切子に最適なグラスをオーダーメイドしています。
- 2.生地検品・割出
- 製造段階で生地に細かい傷や気泡が入ることがあります。この傷や気泡が削り取れるように、印をつけていくのが検品の作業です。検品で印をつけた箇所を、デザインに合わせて削りとれるようにラインを引いていきます。デザイン通り器を削るために目印を入れていく作業を割出といいます。
- 3.粗削り
- 粗削りとは、天満切子を完成形に近づけるためにおおまかに生地を削っていく作業です。細かな高さや幅はあまり気にせずラインをいれていきます。
- 4.砥石
- 砥石の作業では、色の残っている部分のバランスを見ながら、デザインの微調整をおこないます。最終的なデザインがここで決まります。粗削りの時点では、まだ生地の表面が白くザラザラ。この粗削りの個所に、砥石をかけて綺麗なすりガラス状にしていきます。
- 5.磨き
- 磨きとは、すりガラス状の半透明な部分を透明にしていく作業です。水で溶いた磨き粉をコルクに塗り、砥石をかけた部分を磨きあげていきます。磨きの工程は薬品は使用せずに、すべて手磨きで仕上げるのも天満切子の特徴のひとつです。磨きは、天満切子の映り込みに影響を与える重要な作業。一点の曇りもなくなるまで磨き上げることで、切子の輝きを引き出します。
- 6.バフ
- バフは、布バフに仕上げの研磨剤を塗布しながら、器を全体的に磨き上げる作業。磨きの工程では磨かなかった部分（色のついた部分）まで、全体を磨きあげます。最後にバフをかけることで、輪郭がすっきりし全体的に艶と輝きが生まれます。
- 7.完成
- 加工前と加工後の比較です。
  カットした部分は、表面のガラスの生地（被せ）が削られ、下の透明な生地が出てきます。

昌榮のロゴに込めた思い

落款に刻まれた「昌榮」という名は、師匠宇良武一氏から襲名した切子師名。「天満切子」と「極」の文字を重ねたロゴは切子工房昌榮の証です。師が追求したシンプルで美しい天満切子。その思いを引き継ぎ、発極の輝きや映りこみを求めつつ、師に与えられた「昌榮」の名に応えたいという思いを重ね、天満切子の美を極めてゆく気構えをロゴに表しました。