Luxury Selection vol.67 エルメス 馬具工房から最高級ブランドへ
1837年に馬具工房として創業し、発展を遂げていったエルメス。
20世紀初めにファッション分野に進出し、シャネル、ルイヴィトン、カルティエなどと並ぶ最高級ブランドの筆頭格です。
170年以上にわたって人々を魅了し続ける秘密はどこにあるのでしょうか?
Luxury Selection vol.67 エルメス 馬具工房から最高級ブランドへ
1837年に馬具工房として創業し、発展を遂げていったエルメス。
20世紀初めにファッション分野に進出し、シャネル、ルイヴィトン、カルティエなどと並ぶ最高級ブランドの筆頭格です。
170年以上にわたって人々を魅了し続ける秘密はどこにあるのでしょうか?
エルメスの歴史の始まり
エルメスの創業者ティエリ・エルメス(1801~1878)は、ドイツのライン川沿いの街クレーフェルトで生まれ、パリで馬具職人を目指しました。鉄道や自動車が登場する以前の時代、馬が唯一の交通手段として重宝され、現在の相場で超高級車ほどもする馬車は、貴族の間でステイタスシンボルとなっていました。ティエリはパリに工房をかまえ、ここに「エルメス」の歴史が始まります。機能性が高くデザインにも優れた鞍は、徐々に評判を高め、次第に一流店から注文が入るようになりました。最高級の材料で作るという「クオリティ」、伝統職人の手仕事で作る「希少性」、馬具というフランス宮廷文化の高級品という「イメージ」、現在でも高級ブランドが持つ価値の原点がこのころから形作られていったのです。1878年にティエリが逝去したあと、跡を継いだ息子のシャルル・エミール・エルメス(1831~1916)は、現在でも本店があるフォーブル・サントノーレ24番地へと引っ越します。有名なオスマン市長のパリ都市改造により移転を迫られたためでしたが、シャルルは、シャンゼリゼ大通りの裏にあり、大富豪や、エリゼ宮、大使館にも近いこの場所で、鞍の製造、卸に加え小売りも行う「鞍屋」として独立します。静かでエレガントな雰囲気のこの場所は、瞬く間に人々の話題となりました。
最高級のものを生産・販売すること
しかし、19世紀の終わりに自動車が発明されると、馬ほど手入れが面倒で無く、いつでも乗れる自動車が、次第に馬車に代わる移動の手段として普及していきました。エルメスはパリ1番の鞍屋となっていましたが、これ以上の顧客獲得は見込めなくなっていました。シャルルの息子エミール・モーリス・エルメス(1871~1951)は、革を扱う馬具製造の技術を生かし、馬具にこだわらない商品の開発に大胆に方向転換をしていきます。1892年、現在のケリーバッグの原型であるエルメス初のバッグ「オータクロア」が作られます。これは鞍を入れるためのものでしたが、鉄道や車の移動手段の充実に伴い旅行や、ドライブ、スポーツを楽しむ人々の生活の変化に合わせ旅行鞄などとしても使われるようになりました。また第一次世界大戦後に、外で働くようになった女性たちの活動スタイルにあった丈夫でモダンなベルトや財布などの革小物も売り出しました。また、1930年には手ごろな価格の革の手帳、1936年には香水、スカーフを発表します。これらは、1929年から始まった世界恐慌の不況の時代に買える「高級品」でした。本来の馬具の革製品とは、無関係でしたが、エルメスは最高級の物を生産販売するという「クオリティ」を強調することによりブランドのイメージを保つことに成功しました。
スペイン・アンダルシア地方の住宅のバルコニーの美しさにインスパイアされたパターン。
白磁にエルメスを象徴する赤の鉄柵模様が、まるで地中海の昼下がりを切り取ったような優雅な印象を生み出します。
「オリエントの馬」の意味を持つ、エルメスの原点である草原を駆けめぐる古代の馬をイメージしたパターン。
東洋的な織り模様を思わせる多色の幾何学装飾が、皿の中に1つの物語を描き出します。
4代目ロベール・デュマ(1898~1978)の時代になると、マスメディアの発展によりブランドイメージの維持が問題になりました。
1950年代になると、カラー写真入りの雑誌や、テレビ放送が普及し、ハリウッドの映画産業も急成長します。「ライフ」誌の表紙に妊娠中のお腹をエルメスのバッグで隠したモナコ王妃のグレース・ケリーの写真が載ると、その鞄の名前に「ケリー」の名前を使う承諾をモナコ王室に取り付けた話は有名です。
1960年代にはライセンスブームが起こりましたが、エルメスはライセンス生産を行いませんでした。エルメスの商品はエルメスだけが作るという、開発・生産・販売を本社が管理する体制をかたくなに守り続けます。良い材料が無ければ、エルメスは商品を作りません。今でもエルメスは、メディアの露出をおさえたり、人気商品であっても予約を取らない場合もあります。市場に氾濫しないようコントロールすること――「希少価値」こそがブランドのイメージを守るとわかっているのです。
1984年に発表されたテーブルウェアもその精神が息づいています。デザインはスカーフのチームが担当し、エルメス本社が開発を行う体制が維持されています。装飾品のように美しい食器たちは使うのが惜しい気もしますが、最高級の品質とデザイン性は使ってこそ分かるもの。使用するだけで豊かな気分になれることが、エルメスというブランドの秘密ではないでしょうか。
エルメスの本店であるフォーブル・サントノーレ24番地のサロン床に敷き詰められたモザイクタイルをイメージしたパターン。
金彩で表現された幾何学模様の中央に、エルメスの象徴である馬と馬具を運ぶ男のロゴが配されています。
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