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ベッロの開発者、木村硝子の木村祐太郎さんの言葉を頂きました。 |
私は10年ほど前までお酒全般苦手だった。強くないので飲みすぎると頭は痛くなるし気持ち悪いし戻すし
二日酔いにはなるし良いことはないけれど「コップ屋が飲めないんじゃぁ」ってことで我慢して飲んでいた。
ある日、小伝馬町にあるイタリアンでワインをオーダーしたときのこと、赤のグラスだった。ワインの銘柄は失念しているがビオワインでビオ臭と言われる、ぬか漬けを想い出す香りのシロモノだった。旨い!小さな頃からぬか漬けが当たり前に晩御飯の食卓にあった私にはこれが最高で、まるで出汁やお味噌汁を味わっているかのようにホッとした。そんな私には旨すぎるワインに出会い、それから選んで飲むことを覚え、ワインも美味しく飲めるようになった。後にこのビオ臭はあまり好まれる香りでないことを知った。 |
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ピーボ・オーソドックス シリーズには敢えてゴブレットを制作しなかった。理由は売れなさそうだから。とは言え、私はお酒を飲むときに、ウォーターグラスをいつもテーブルに置く。そしてレストランでウォーターグラスとして目にするのはリーデル・オーやその類似品などで、木村硝子店の商品ではなかった。
なんとなく『他に目的があるウォーターグラスとしても使えるグラス』を構想し始めた。
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以前ウィーン135というキャンティが「旨く呑める」コップを紹介した。このグラスを使ってワインを呑むと美味しいと言うよりも、むしろ旨い。
ある方の紹介でとある茶舗と仕事をする機会が増えた。彼らは茶葉をどう販売していくかを常に考えていて、とても刺激的だ。様々なお茶を幾つもの水筒に入れて木村硝子店のショールームにいらっしゃった。
数々の器を試したが、ここで登場するのは彼ら持参の猪口とタサキシリーズの大吟醸4oz。猪口はお茶の味を確認するために用いられていた。そもそも旨い!タサキグラスの場合、まず澄んだ香りが鼻を通り抜ける。香り渋み苦み、それに甘みの構成がとても良い。喉をつるつると通り抜け、これは美味しい。
『んー、あれ?さっきの旨い!の感じはどこ行った?』
ふと思った。もう一回お願いして猪口でいただくとやっぱり旨い。 あとから余韻のように香る。 |
自分の好みは猪口だった。グラスの形状によって人を望むように動作をさせるリーデルのロジックは、やっぱり凄い。タサキグラスは香りをまず際立たせる。とても刺激的。
ISOワインテイスティンググラスよりも小さいグラスのボディにより自然と顎を上げて結構上を向いて飲むことになる。味は前述の通り。猪口はどちらかと言うと顔を俯けて、一息にススる。旨い。ああいい香り。空だったけれど、もう一度ススった。そう言えばお茶・お汁・お酒も器に対して俯いて啜る。そして大抵旨い。
『ワイン・ウォーターグラス・コップ・旨い・啜る』=『ワインを啜って旨いコップ』
ワインを啜って口に含むことで、そのものを旨いと感じホッとしたい。こうして、だいたいの用途・容量・形状が決まった。薄いのが良い。コップだし、どうせなら世界一の工場で作りたい。結構無茶な仕様にも工場は応えてくれて『ベッロ シリーズ』が出来上がった。
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